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【C97】「味をしめた幽霊兄弟の憑依録」サンプル

スピリットインサーターさんの掲載作品冒頭になります。
幼稚園のころ、墓参りに行った両親に「お兄ちゃんはそこにいるよ」と言ったことがある。
お父さんには悪い冗談を言うなと、たいそう怒られた。
お母さんは泣き出してしまった。
誰にも信じてもらえなかった。
その日の夜に止まったお爺ちゃんの家で、僕は誰にも顔を見られないようにベッドにしっかりと包んで、お兄ちゃんは部屋の隅っこで膝を抱えていた。

『……僕、やっぱり、ここにいちゃいけないのかな』

1人、部屋でお兄ちゃんが、悲しそうに呟いたその言葉は、いまでも忘れられない。
薄っすらと身体が透けていて、足もなくなっている。
最初からそうだったわけではない。
僕をかばって交通事故に遭ったあと、その部分は煙のようなものに変わっていた。お兄ちゃんは幽霊になってしまっていた。
あの日から、僕だけがその姿を見える。
でもお兄ちゃんは僕にしか気付いてもらえなくなっていた。
だから、もういないといわれて、怒られて、とうとう耐えられなくなったのだ。お兄ちゃんは泣いていた。
ひょっとすると、このまま消えてしまうんじゃないか……
このときの姿を見ていた僕は、そんな不安に襲われた。
だから、僕は布団から這い出して、叫んだ。

「そんなこと、ないよっ!」

お兄ちゃんの顔に、自分の顔をずいと寄せた。

『コウくん……?』
「兄ちゃんには僕がついているから! だから、ね。二人で一緒に生きていこうよっ!!」
「…………うんっ!」

 泣きはらした目を拭って、やっと笑顔を見せてくれた。
僕はお兄ちゃんと、しっかりと手を繋ぎあわせた。その半透明な身体に触わることはできなかったけど、何となく暖かい感じが伝わってくるみたいだ。
 この日から、僕達は、二人で一人になったのだ。


『おーい、コウくん。次は国語の時間だろー。変わってくれよー』
(……うぅん。眠いんだけど)
『バカ、寝るな。先生に怒られるぞ。おーい、起きろってばー!』

半透明で浮かんでいた兄貴が、耳元で煩い。
今は眠いんだから放っておいてほしいのに……何せ、相手が霊体だから、追い払うこともできない。
もちろん兄貴の声は教室には届かない。だから聞こえるのも俺だけだ。他にも、誰も起こしてくれるやつなんていない。
そんな様子にあきれ返ったらしい。
ずぶり。
まどろっこしそうに、俺の背中に霊の手を入れてくる。

『怒られる前に、身体は勝手に使うぞ!』

文句も言わせずに、兄貴は俺の身体に“入って”きた。
違和感が、身体に広がっていく。
すぐに、自分が自分ではなくなった。
まるで身体が、棒のようになってしまうような感覚だ。
そして、動こうとしていないのに、机に伏せていた身体が勝手に動き出した。でも、そうなっても慌てない。

「よっ……と。はぁ、教科書どこしまったんだよ、アイツ……」

自分の意思ではないのに、勝手に起き上がった俺は、いそいそと教科書とノートを鞄から出し始めた。
そう、いま身体を動かしているのは兄貴だ。
あの事故の日から、俺たちは協力して生きている。そしてある日、兄貴にこの身体を貸せることに気がついたのだ。
もともと兄弟だからか、違和感はほとんどないし、恐くもなんともない。兄貴が変なことするはずないしなあ。

(さっきの体育のせいで、体は疲れてるだろ。兄貴も眠いはずなのに、よくやるよなぁ……教科書、机の中にしまっといたよ)
『お、入れといてくれたのか。サンキュー』
(ああ……んじゃ、おやすみ)
『あとやっとくから任せとけ。んー、生身の肉体はいいなぁ』
心で語りかければ、何も言わなくても声は伝わった。
これが誰にも気付かれない、俺達だけの秘密だ。
兄貴が授業を受けている間、俺は寝た。

こんな風に普通に生活できるようになったのも、全て最近のことだ。
幽霊が気味悪がられることは、子供の頃の出来事でいやと言うほど知っていた。あの頃を知っている人は、いまは子供の妄想ということで片付けてくれている。
だから、兄貴のことは、俺のほかは誰も知らない。
そして、学校でもそんな風に兄貴とばかり話しているせいで、友達はなかなかできなかった。

『なあ。ちょっと考えてたことがあるんだけどさ』
(なんだよ、兄貴)

放課後も、帰り支度を整えて廊下を歩く俺。そして、その隣をふよふよと浮かぶ兄貴。
俺達はいつも一緒だ。しかし声だけは他の人にも聞こえてしまって怪しまれるので、頭の中だけで会話するように気をつけなければならない。
念じるだけで思いは伝わるというのは便利だが、かわりに、心の声はすべて筒抜けになってしまうので、隠し事はできない。
 そんな風だから、ここまで仲良くなれたし、仲良くなれる友達ができないのかもしれない、と思った。

『……友達なんていらないだろ。てか無理だろ、今更』
(まあ確かに、いらないけど……ほら。憧れって、あるだろ)
 また心を読まれてしまった。でも兄貴だから、仕方ない。

『それよりさ、俺、やっぱ……物足りないんだよ』
(ん?)
『今までさ。授業のときと、どうしても我慢できなくなったときは、お前の身体を借りてきたよな』
(まあ……それがどうかした?)

何か、嫌な予感がする。
話の流れもそうだが、悪巧みトーンの口調のときの兄貴は、いつだってろくなことを言わないから。

『俺、生身の身体が欲しい』
(……生身の身体って。そりゃ死んでるから無理だろ。俺の体で満足しとけって。ろくなことにならないぞ)

 以外に真面目な話で、どう返していいか分からなくなった。
 確かに、生身の体が欲しいという気持はわからなくもない。
 でも、兄貴は存在してはいけない人間だ。
 いや幽霊か。
 そんな幽霊が、肉体を欲しいと言い出すなんて、絶対ろくなことにならない。アニメの悪役が言いそうな台詞だ。
しかし、無下にすることもできない。困ったな。
生まれてこのかた、霊になって過ごしてきた兄貴の辛さは、よく知っている。なんて言ってやるべきだろう。
しかし、俺の表情とは真逆に。
兄貴はふふふ、と悪どい笑みを浮かべてみせた。

(兄貴、なんか悪いこと考えているだろ。それも分かるんだぞ)
『……ふふふっ、俺は考えたんだ』
(ろくでもない考えが伝わってきた)
『生身の身体がほしいときは、他人の身体を使えばいいんじゃないかってさ!』
「え」

 思ったよりろくでもなかった。

『なあ、いいアイデアだと思わないか!?』
「えっ」
『お前の身体が借りられないときは、他の誰かの身体を使うってことだよ!』
「い、いやいや。そ、それはまずいって!」

自分が声を口から出してしまっていることに、はたと気がついて、慌てて周囲を見回す。
何人かが怪訝そうに俺を見ていて、慌てて俯いて顔を逸らし、ヴェホッ、と咳払いして誤魔化した。

『お、おいおい。しっかりしてくれよ。俺もその身体で授業とか受けるんだから!』
(い、いまのは兄貴のせいだろ! だいたい、他人の身体って、そんなことできんのかよ……!?)
『だってお前の身体が動かせるんだから、できるだろ!』
 た、確かに。そんな考え方はしたことがなかった。
兄貴は自信満々そうで、それが悪いアイデアだとは全く思っていないみたいだった。本当に悪役のようなことを言い始めたことに、本人は果たして気付いているのだろうか。

(い、いや。でも、他の人の身体を使うっていうのは……)

……確かに思いつきすらしなかったけど。
でもそれって、なんかまずくないか?

(そもそも、できるのかよ……? 俺以外の身体に入ったことなんてないだろ。危ないんじゃ……)
『ふっ……まあ見てろって』

兄貴は、そう言って窓のそばに置かれた小さなプランターの前に立っていた男子をビシッと指差した。
きっと、お世話当番というやつだろう。気弱そうだ。

『あの、そばかすの男子。あいつの身体に入ってみるぞ!』
(え。いや、そんな急に試さなくっても……それに、ほら。入るときに抵抗されたら痛いんだろ?)
『お前と喧嘩したときはそうだったけど。弱そうなやつなら問題ないって!』

前に、お菓子をどっちが食べるかで喧嘩して、無理やり身体を乗っ取ろうとしてきた兄貴に、抵抗したことがある。
兄貴が死ぬほど痛がって、はじき出されたっけ。
くだらない理由で、消えかけたものだから、俺は慌てた。もちろん医者に見せることはできなかったが、俺が身体を貸してやると、けろっと元に戻って事なきを得たんだ。

強く抵抗する相手には入れない、という経験がある。
だから、俺はやめて欲しかったが、しかし兄貴は、よほど身体が欲しいのか、まったく聞き入れない。

『いいや、もう我慢できないね! あいつならいける。ぜってー今試す! ダッシュでいくぞ、そらっ!』
(あ、おい!?)

兄貴は自前の速さでひゅんと飛び去った。
俺の周囲しか漂えないが、本気をだせばめちゃくちゃ早く動くことができる。その速度で、小さなプランターに水をやっていたそばかすの男子に一直線で向かっていった。
遮るものはなにもない。
俺は、一体どうなるのかと、その瞬間に活目した。

「あっ、飛び散っちゃった。拭かないと」
『えっ?』
(あっ)

水の入ったペットボトルを傾けている最中、こぼして床に散らばらせてしまった。そして、屈む。
兄貴は、かすりもせずに、壁をすり抜けて、消えた。

(あ、兄貴―――っ!?)

何てことだ。兄貴がいなくなってしまった。
ハラハラと、心配したが、そういえば霊だから怪我もしないんだっけ。そばかすの男子は雑巾で床を拭いて、何事も無かったかのように教室に戻っていった。

(……おーい、兄貴―……?)

……おかしいな、戻ってこないぞ?
呼びかけても、返事さえしない。どこに行ったんだ?
すると、その男子と入れ替わりに、緑色のスカートを履いた女子が出てくる。
教室の中で目でも回しているのだろうか。ちょうど開いた扉から、中の様子を伺おうとすると、その女子は、つかつかと俺の前にやってきて、俺を見上げた。

「……おい」
「えっ! ははは、は、はい。俺、ですか?!」

ヘアバンドで髪をまとめた、出てきた緑色のスカートの、真面目そうな顔立ちの女子。なぜか、ぷんぷんと怒ったように頬を膨らませていた。
え、な、なんだこいつ……!?
俺を見上げるような形で、ぎんと睨んでくる。
心当たりは何もない。しかし、教室をこっそり覗こうとした手前、口笛を吹いて誤魔化そうとする。
しかし、どうやらそういうわけにもいかないらしい。
がしっと手を掴まれ、俺は、えっ、と慌てた。
「えっ、ちょ、ちょっと!」
「いいから来い!」
「いや何で?! ……えっ。え? ちょっと待って。も、もしかして君……!」

女子は何も言わずに進んでいく。
そして体育館の隣の、たくさんの道具を入れた倉庫。
今日は薄暗くて静かだ。人の気配は全く感じない……扉を閉めた少女は、やっと域を吐いて、そしてなんとも言えない表情を浮かべながら、俺の目を見つめた。

「君、もしかして……兄貴、なのか?」
「……ああ。そうだよっ。お前の兄貴だよ!」
「す、すげえ……成功したのか! やばっ、すっげえ。やったじゃん!」
「いいことあるかよ!?」

 兄貴は、女子の体で、涙目になってヒステリーに叫んだ。
[ 2019/12/22 15:32 ] 同人活動 | TB(-) | CM(0)
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