1. 失望と欲望
「ずっと前から好きでした!僕と付き合ってください!」
誰もいない大学のキャンパスビルディングの屋上テラスで、1人の男が勢いよく頭を下げて意中の相手に募り募った想いをぶつけた。
突然呼び出され、恋情を打ち明けられた相手は目をまん丸と広げ、驚いた様子を見せたが、やがて口を小さく噤んで申し訳なさそうに俯いた。
しばらくの沈黙の後、彼女の口が開く。
「……ごめんなさい。あなたの気持ち、すごく嬉しい。だけど私にはもうお付き合いしてる人がいるの。だからその……あなたの気持ちには応えられないの……本当にごめんなさい。」
長い黒髪を垂れ下げながら同じように深々と頭を下げる目の前の女性──朝倉鈴華(あさくらすずか)。ゆっくりとその端正な顔を上げると彼女なりのケジメなのか、まっすぐとこちらの瞳を見つめてバツの悪そうな笑みを浮かべた。
「その、彼女にはなってあげることはできないけど、これからもお友達として仲良くさせてくれる?あなたさえよければだけど……」
突きつけられる完璧な"NO"。
真正面から気持ちを受け止めた上での真摯だが残酷な"拒絶"。それだけに引き下がることしかできない。
初めから土俵に立ててすらいなかったという現実を突きつけられた。
「分かった。これからも……よろしく。」
「ええこちらこそ、これからもいい友達でいましょ!」
当然この言葉がトドメとなり、米原博人(よねはらひろと)という男の、一世一代のつもりで挑んだ告白は大惨敗という無残な結果に終わった。
「やっぱりダメだった……!くそっ、くそぉ!」
悔しさから枕に拳を叩きつけ、顔を埋める。
真っ暗な自室で博人は己の不甲斐なさを嘆くことしかできなかった。
初めから鈴華には高校以来付き合っている彼氏がいることは分かっていた。
だがそれでもなお、僅かでもチャンスがあるのではないかと一縷の望みにかけたものの、蓋を開けてみれば結果は火を見るよりも明らかだった。
少しでも楽観的だった自分を殴りたいとさえ博人は思った。
入学からの3年間、ずっと溜め込んできた想いをぶつければ、彼女は応えてくれるのではないかと──
「馬鹿か俺は!そんなことあるわけないだろ!高校からずっと付き合ってる2人が、他の誰かに告白されたからって別れるわけないじゃないか!」
玉砕するまで考えないようにしていた事実が、今になって博人を執拗に責め立てる。
諦めなければ報われる。
そんな綺麗事が例外なく通じるのは漫画やアニメの世界だけなのだ。
「あぁ、いっそのこと消えてしまいたい。」
明日からどんな顔をして彼女会えばいいのか。いい友達のまま?そんなことできるはずもない。秘めたる想いをぶつけた相手と、これまで通り接することなどできるわけがない。だからこその賭けだったのだ。
敗色濃厚だと分かった上で挑んだ分の悪い賭け。それに負けるべくして負けたのだ。
「……はあ~」
鬱屈とした感情がのしかかったまま、半ば習慣的にスマートホンへと手を伸ばす。
SNSを眺めて何も目新しい通知がないことを確認すると、目的もなくブラウザを開く。
「……ん?」
適当にネットを検索しているととある広告に目が止まった。
普段なら無視するようなバナー型の迷惑広告。しかしそこに書かれた一文に博人は目を引かれた。
"あの子の人生──自分のモノにしませんか?"
「なんだこれ、どこかのアダルトサイトにでも繋がってるのか?」
変なところに飛ばされたらすぐに閉じればいいと思った博人は試しにバナーをタップしてみた。
すると、予想に反してアプリストアが立ち上がり、画面には見たことのないアプリケーションが表示された。
最近登録されたばかりなのか評価もレビューもなく、無料だというのにダウンロード数はまさかのゼロという胡散臭さ満載のものだ。
「うっわ、これはさすがやめておいた方が良さそうだな。」
一旦はストアを閉じようと指をスライドさせた博人だったがすんでのところで動きが止まる。「誰も使ったことのないアプリ」に却って心が惹かれていることに気付いたのだ。
「……どうせジョークアプリだろ。乗ってやろうじゃないか。」
自暴自棄な気分になっていた博人はそう自分を説得してスマホにインストールを始める。それは数秒で完了すると、画面が突如真っ黒に暗転した。
「え!?嘘だろ!ウイルスだったのか?くそっ、やっぱり入れるんじゃなかったか!」
電源ボタンを押しても全く反応を示さなくなったこと狼狽えていると、今度は画面が真っ白に光り、フェードインするようによく見知った女性の写真が浮かび上がる。
「え……?これって……」
他でもない、朝倉鈴華だった。
だが彼のスマホに彼女の写真は一枚も入ってはいないはず。それにこれは彼女のSNS上でも見たことのない、証明写真で撮るような彼女のバストアップ画像だった。
それもただのバストアップではない。
鎖骨から下は見切れてしまっているが服を着ておらず、どうやら裸で撮影されたもののようだった。一体どのようなシチュエーションでこんなものが撮れるのだろうか。
「なんで……」
そもそもどうやってこのアプリは意中の女性を理解したのか。その理由が分からず言い様のない恐怖を感じていると、画面の上部にポップアップが表示された。
"あなたが欲しいモノで間違いないですか?
──YES──NO──
(NOを選んだ場合、アプリは終了し端末から削除されます。なお、アプリの再インストールはできませんのでご了承ください。)"
「なんだよこれ、冗談にしてはヤバすぎるだろ……でも、ほ、本当に冗談なのか?」
普通ならありえない──怪奇とも言える現象に目の前にして、博人は恐怖の中にも小さな期待を抱き始めていた。
「本当に、何かが起こるのか?鈴華さんを僕のモノにできる何かが……」
YESを選んだ場合の説明は一切書かれていない。進んでしまったらどうなるのかが分からない。しかし押してみたいと思えるほどの魔力を、このアプリは持ち始めていた。
「ど、どっちにしろもう望みがないならいっそ……」
とことん開き直ってやろう。
そう決意した博人は震える指でYESのボタンをタッチした。
「……ごくり」
生唾を飲み込むと「ピコン!」と思いの外軽快な効果音が鳴ると、アプリがスタート画面らしきものを表示させた。
試しに説明ボタンを押してみる。
"ようこそ米原博人様。
本アプリをダウンロード頂きありがとうございます。まだ名前もありませんが、本アプリはあなたのように"欲しても手に入らないモノ"がある方の望みを叶えるために生まれたものです。"欲しいモノ"は人によって様々ですが、あなたの場合は手の届かぬ女性(ひと)が登録されました。それを手に入れるお手伝いをさせて頂きます。
早速ですが、本アプリは使用者の望みに沿って"機能が最適化"されます。
下記にて仕様をご確認ください。
「──!マジかよ……!」
そこには想像以上の内容が書かれていた。
簡単にまとめるとポイントは大きく4つ。
①このアプリを使って鈴華の身体を乗っ取ることができる。
②鈴華の身体を乗っ取っている間の行動は、彼女自身の思考による行動として脳に刻み込まれる。
③鈴華の身体は過去に遡って乗っ取ることができる。ただし同じ過去の日付に遡れるのは一度だけ。
④過去の鈴華を乗っ取った状態で本来の彼女と異なる行動を取った場合、それが新たな過去として現在に影響を及ぼす。
要するに、このアプリを使えば鈴華の人生を作り変えることができると書かれていたのだ。
あまり現実離れした内容だが、気が付けば博人は早まる鼓動抑えることができなくなっていた。
「う、嘘だろ……こんなの……でも、マジなら……はぁ、はぁ……」
逸る気持ちを抑えられなくなった博人は説明画面を閉じ、すぐさま操作画面を開いた。
先程の鈴華のバストアップ写真を中心にUIが展開されており、試しにプロフィール画面を開いてみると朝倉鈴華という女子大生の個人情報が赤裸々と綴られていた。誕生日、血液型から座右の銘まで本人しか知らないようなことが事細かに記載されていたが表示する情報をオンオフできるようで、博人は気になる情報だけピックアップして表示させた。
名前:朝倉鈴華
年齢:22
スリーサイズ:B84,W60,H86(Eカップ)
自慰頻度:2週間に1度程度
初体験:高校2年の春
性交経験:137
交際ステータス:交際中(交際相手:藤崎圭吾)
「……こんなところか。へー、清楚な顔して鈴華さんもやっぱりオナニーするんだな。というか彼氏と137回もヤッてるのか。高校から付き合ってればそれくらいにはなるか?」
多いのか少ないのかは判断できなかったが、鈴華の生々しい性事情が丸わかりになり、博人はえも言われぬ興奮に襲われた。なぜこのようなことまで分かるのか、理由はどうでもいいとさえ思えるほどに心は黒い欲望に飲まれ始めていた。
「へへっ、鈴華さんのアッチ事情も分かったことだし、そろそろコイツが本物かどうか試してみるか。」
すでに確信に近いものは抱いていたが、いざその時となるとやはり不安というのは生まれるもので、少し躊躇いがちに博人は指を「憑依メニュー」ボタンの上に下ろした。
開かれた選択画面を見てみると、基本的には今すぐ憑依するか、過去の日付を指定して憑依するかの二択になっているようだ。
博人は少し考えて、ひとまず現在の鈴華に憑依することにした。
「まずは本当にそんなことができるのか、確認しなきゃな。お、なるほど、現在の鈴華さんに憑依するなら、今何をしてるのかを確認できるのか。こりゃ便利だ。」
鈴華のステータスが「自室で課題に取り組み中」になっていることを確認すると、覚悟を決めるように大きく深呼吸をし、画面下に表示された「憑依実行」ボタンを押した。
その瞬間、全身に電流が走った思うと、博人の視界はバツン!とブレーカーが落ちるかのようにブラックアウトした。
「…………」
その頃、朝倉鈴華は机に向かいながら明日提出予定の課題に取り組んでいた。
学力の高い彼女は特に詰まることなく、スラスラと提出用紙を書き進めていく。
(やっぱり、悪いことしちゃったかな……)
ふと、今日あったことを思い出す。
仕方のないことだとはいえ、好きだと言ってくれた男子の告白を断るのはやはりいい気分ではなかった。
彼氏がいなかったとしてもおそらく受け入れることのない相手ではあったが、彼の悲しそうな表情がなかなか脳裏から離れないのもまた事実だ。
(明日、もう一回ちゃんと謝ろう。)
そう決めて再びボールペンを握りなおした直後だった。
『対象捕捉。神経回路の解析完了。』
突然、脳内で無機質なアナウンスが流れた。
「え……?」
初めは外から聞こえたテレビか何かの音かと思った。しかし窓は閉まっているし部屋のテレビは当然電源が入っていない。
(どこから……?)
それ以上考える前に、脳内のアナウンスは淡白に、かつ無慈悲に宣言した。
『対象の脳を──掌握します。』
「何?しょう……あ──ひぐぅっ!?」
言葉を飲み込もうとした矢先だった。
頭が何者かに鷲掴みにされたかのようなおぞましい感覚に襲われ、思わず声を上げてしまう。
ビクン!と全身が跳ねて硬直し、手からポールペンが転げ落ちてしまう。
「あっ!ああっ!なに、これ……あたまが、かき回され……あ、あひっ!」
『マスターユーザーの意識転送完了。対象:朝倉鈴華の意識から肉体の支配権を──強制譲渡します。』
ガクガクと震える鈴華はその意味を本能的に理解し、恐怖に目を見開いた。
「や、やだっ!やめて!勝手にそんなことッ──あがッ!!」
断末魔とも取れる悲鳴が聞こえた瞬間、ガタン!と椅子が激しい音を立てた。
するとそれまでの痙攣が嘘のように収まり、硬直していた腕はだらんと落ちた。
全身は椅子にもたれかかり、頭は虚空を見上げたまま僅かな間だけ沈黙が生まれた。
「────ぁ」
だが程なくして鈴華の口から小さな声が漏れた。脳が再起動するかのうにゆっくりと動き出すと連動するかのように鈴華から漏れ出す声も大きくなっていく。
「ぁ、あっあ……あー、あー……あ……?ハッ!!」
呆けたような声が意志のこもったものへと変化したと思うと、意識を取り戻した彼女が慌てて身体を起こす。
「ここは……はっ!声……!この声!はっ!!」
驚きを隠せないといった表情で喉を押さえた鈴華は自分の身体を見下ろす。
ちゃんと手入れのされた長い黒髪、部屋着に包まれ大きく膨らんだ胸、すらりとした長い脚、きめ細やかな肌。
その視覚情報の全てが、ひとつの答えに繋がっていた。
「乗っ取れた……本当に乗っ取れた……!鈴華さんのカラダを……!ふひっ、すげえよ女の身体だぁ……!」
喜びのあまり身体を抱きしめ撫で回す。
元の肉体と比べ全身が軽くなったというのに胸だけはやたらと重く、その心地いいとさえ思える重量感が博人の心を躍らせた。
「へへっ、中身はどうなってるのかなぁ?」
ワクワクを抑えきれずにぐいっと首元の襟を引っ張って覗き込むと、そこにはブラジャーによってしっかりと支えられ豊かな胸と綺麗な線を描く谷間があった。
それを目にした瞬間、鈴華の胸が高鳴ったのを感じた。
「うわ、やっぱりでけえ……確かEカップって書いたあったよな。おっぱいで下の視界が塞がれてらぁ。よく自分で興奮しないよな。こんな絶景毎日見せられたら俺は我慢できる気がしないぜ。」
試しに下から掬い上げてみると、手の上にずっしりとした感覚が伝わる。同時に肩が軽くなるのを感じてしっかりと脂肪が詰まっていることを改めて実感する。
「おっほ、すげえなこれ。こんなのが俺の胸に付いてるのか。揺らすとぷるぷる波打って面白え……でもそれ以上に、めちゃくちゃ柔らけえ、このおっぱい……指がどんどんめり込んでいく……」
指先に力を入れて押し込むと、適度に反発しながら胸が形を変える。指が入り込んだ分だけその周りの肉が盛り上がり、谷間が少し深くなる。
「お、おお……これがおっぱいを揉まれる感覚……揉むのすら初めてなのに揉まれるのも同時に体験するなんて……しかもどっちもめちゃくちゃ気持ちいい……こんな脂肪の塊にもちゃんと神経が通ってるんだ。何時間でもやってられそうだ。はぁ〜、幸せだぁ……」
ふにゅっ、ふにゅっ、と手に収まりきらないその感触をゆっくりと堪能していると胸の先端に違和感を覚え始める。その正体をすぐに理解した博人は鈴華の顔を使ってニヤリと好色を含んだ笑みを浮かべた。
「あれー?鈴華さんの身体、俺の精神につられて乳首が勃つくらいに興奮しちゃってるよ。でもそりゃそうか、今は俺の身体なんだから、な……んっ!」
服の上から引っ搔くように爪で円を描くと、僅かだが確かな刺激が神経を伝う。
気持ちいいというよりはこそばゆいと言った方がまだ適切だが、この快感一歩手前の刺激で鈴華の身体を焦らすのが何とも楽しかった。
「は、ぅ……んっ……ふふっ、そんなに焦らしたら、刺激を期待して乳首がどんどん固くなっちゃうでしょ。せっかく私に憑依したんだからもっと楽しまないと……あぁ、身体がだんだん切なくなってきた……そろそろちゃんと身体を眺められる場所に……」
鈴華の口調を真似ながら椅子から立ち上がりすぐ横のベッドに腰掛ける。ちょうど座った位置の正面には身だしなみチェック用の姿見があり、肉体鑑賞にはもってこいのポジションだ。
「ふふっ、それじゃあスイッチ入りかかってるし、そろそろ上はもう脱いじゃおうかな。んっ……」
裾に手を掛け一気に持ち上げる。
すると胸が引っかかったのか「ぶるんっ!」と勢いよく双丘が揺れた。
その瞬間をしっかりと目に焼き付けた博人は自分が鈴華の身体を支配し動かしていることを更に実感し喜びに打ち震える。
「さすが巨乳。脱ぐ時のエロさも段違いだな、うひひっ。」
鏡に映るのは水色のブラジャーをした半裸の鈴華の姿。ニンマリと下品な笑みを浮かべながら胸の上に手を添えると、目の前の鈴華も全く同じ行動を取ってくれる。
「というかさっきよりもデカく見える気がするな。もしかして鈴華さんは着痩せするタイプか。いいね、服の下には隠しきれないほどのエロボディがあるってのが最高だ。どーれ、一枚脱いだ揉み心地は……うおっ、おおっ!やっば、柔らかさが全然違うっ!この手に吸い付く感じが堪らねえ!」
押し込んだり持ち上げたり撫で回してみたり、思いつく限りのやり方で胸をこねくり回すと身体が熱を持ち始め、息も徐々に乱れていく。
「はぁ……はぁ……んっ!見なくても感覚で分かる……もう乳首ビンビンだわ……さっきからブラが擦れてる……んっ!ブラ、取っちゃうか。」
メインディッシュは最後まで取っておこうと思いギリギリまで粘ってはみたものの、鈴華の身体と博人の精神はとうとう我慢の限界を迎えてしまった。
バクバクと心臓が激しく脈打つのを感じながら、ブラジャーのフロントホックに指を掛ける。するとパチンという音と共に、胸を隠していた最後の布がはらりとベッドの上に落ちた。
「あ……」
眼前に広がった光景に鈴華は息を飲んでしまった。真っ白で大きな膨らみ。その頂きにそびえるぷっくりと膨らんだ桜色の乳首。
「綺麗だ……」
思わず呟いてしまう。
これほど素晴らしいものを隠し持っていたなんて。彼氏への嫉妬と同時にこれが自分のものになったのだという征服感がゾクゾクと鈴華の全身を襲う。
「あぁ……!あっ!あふっ!んっ……!んん……」
興奮だけで達したと理解したのはその数秒後だった。快感ですくめた肩をゆっくり下ろし、改めて胸を眺める。鈴華の長い髪が隠すように膨らみに掛かっていてなんともいやらしい。
「ふふっ、私のおっぱい、好きでもない人に見られちゃった……圭吾ごめんね。あなた以外にも見せるつもりなかったのに。でも身体を乗っ取られちゃったらどうしようもないよね……ん?」
ここで博人は気付く。
自分がすんなりと鈴華の口調を引き出せていることに。意識せずとも彼女としての思考を再現できるようになっていた。
「もしかして、今軽くイッたから?」
そういえば説明に書いてあった気がする。
「対象を乗っ取っている時間が長ければ長いほど、そして経験を得れば得るほど支配した脳との同調率が上がる」と。
「読んだ時は深く考えなかったけどこういうことだったのね。ふふ〜ん、これはこれで面白いわね。ちょっとずつ私の脳が博人君の意識を受け入れてるんだ。なら、どんどん同調させないとね!」
思わぬ事実に気を良くした博人は焦らしに焦らした鈴華の肉体を貪るように胸を鷲掴みにした。直に触れる肌の温もりとコリっと固い部分を手のひらで転がして楽しみながら、その双丘を蹂躙する。
「んっ……くあっ!あ、ああっ!今日の私やっぱりおかしいわ……オナニーする時にいつも触ってるはずなのに、なんだかすごく新鮮で……んんあうっ!ち、乳首、弱いんだ……知ってたけど知らなかった……ふふっ、"私"の生乳を揉めるなんて夢にも思ってなかったなぁ……あっ、あん!ああん!へ、へへ、鈴華さんの喘ぎ声エロ過ぎ……」
鈴華に自分の気持ちを代弁させては時折博人の素に戻る。こうすることで鈴華の人格を自由に操っている実感が湧いて更に興奮を高まるのだ。
「はぁんっ、ふあっ!あっあっ、あんんっ!!あはあ〜んっ♪ほんといい声で鳴くなぁ……」
自分の口から漏れる嬌声をオカズにしばらく手に収まりきらない胸を弄んでいると、鈴華の乳首が構って欲しそうにぷっくりと膨らんで主張を強める。まるで彼女の肉体が自分におねだりしているように感じた博人は、鈴華には似つかわしくないSっ気たっぷりの笑みを浮かべてそのいやらしい突起を摘んで引っ張り上げた。
「んんぃいい〜〜っ♪♪おっ、お゛っ、やばっ、はっあっ、本当に私乳首が敏感っ♪気持ちよくて下品な声が勝手に出ちゃう♪なんだ、私って清純派かと思ったらカラダはスケベなエロ女じゃない。あっ、なるほど、彼氏がおっぱい星人で開発されちゃったんだ。4年かけてドスケベおっぱいにされちゃったおかげで、乳首を弄りながらアソコを触られるとすぐにイッちゃうと……へぇ。」
じっくりと胸を愛撫したことで鈴華の秘部はとうにぐしょぐしょになっている。下着が愛液を吸いきれなくなったのか部屋着のズボンにすら染みを作っていた。
それを見てニンマリと笑った鈴華は左手でコリコリと乳首を弄ったまま、すっかり濡れそぼったパンツの中へと手を滑らせた。
「んっ、んっ!はぁ、んっ、最初は違和感もあったけど……こののっぺりとした感覚が最高だな……」
うっすらと生えた陰毛をかき分けてその先に手を伸ばす。そこに固い豆のようなものを見つけ、深く考えずに触れた瞬間──
「ひあ゛っ!!?」
腰が勝手浮き上がった。
一瞬頭の中がピンク色に染まり、さらに数刻遅れてお腹の奥がキュンと高鳴る。
「はっ……あっ、こんなの強制発情スイッチじゃないか……アソコから愛液が漏れたの分かったぞ……ひうっ!ああ、これ、いい……」
言いながらくりくりと豆を転がす。
その度に強烈な快感が全身を駆け巡り鈴華の表情が蕩けていく。
「はうっ、あっ、あっ、ひあっ!私、気持ちいいときはこんな顔するんだ……だめ、こんなの人に見せちゃだめなやつ……でも彼氏とエッチする時はこんな顔を……」
鈴華の記憶を辿ってみると浮かび上がるのは好いた男に抱かれ、与えられる快楽に打ちのめされる自分のイメージ。
彼の名前を呼び、力いっぱい抱きしめ返す鈴華の姿がそこにはあった。
「くそっ、探るんじゃなかった……確かにこれじゃあ俺にチャンスなんて初めからなかったよ……記憶を読むだけで分かる。鈴華さんは藤崎、あいつのことが大好きだ。くくっ、でもよぉ……」
だからこそ、奪いがいがある。
ダメ押しの絶望を受けた博人の心は黒い感情に支配されつつあった。罪悪感などは消え失せ頭の中にあるのは鈴華という賞品を手に入れることのみ。
気が付けば博人は彼女の顔で似合わぬ卑屈な笑みを浮かべた。
「鈴華、お前は俺のものだ。」
鏡に映る姿に向かって言い放った博人は、もう彼女の意思など尊重する必要を感じなかった。
この奇跡のような力を使って鈴華の全てを手に入れる。そう決心が付いた瞬間だった。
「そうと決まればまずは一発、このカラダで派手にイッておきましょうか、ねっ!ひああっ!!」
ここで自分(博人)自身のことを想わせながら絶頂すれば鈴華は好きになってくれるのだろうか。そんなことを一瞬考えるもすぐに棄却した。
それではいつか彼女自身の気が変わってしまうかもしれない。愛想をつかされてしまうかもしれない。付き合うことができたからといってそれがずっと続くとは限らないのだ。
大学生の恋愛など特にそうであろう。
よっぽど深い関係でもない限りは。
「んあああああっ!!」
鈴華のカラダでの初めての絶頂。
それを受け止めながら全身をベッドに投げ出した。
「俺が君を作り変えてあげる。」
そう妖しくつぶやくと博人は憑依を解除した。
2. 改竄と解消
目を覚ますと、ベッドの上で横になっていた。寝ぼけているのか一瞬課題をやっていたはずの自分がいつのまにか移動して寝ていたことを不思議に思っていたがすぐに"思い出す"。
そうだ、私はオナニーをしていたのだ。
何故かは分からないが急に"そういう気分になって"自分を慰めてしまったのだ。脱力感からか重くなった身体を起こしながら肌蹴て胸が丸見えになってしまっている部屋着を着直す。
「私、なんでしちゃったんだろ……」
人並みに性欲はあるが数日前に発散したばかりのはず。こんなに短い期間で再び昂ってしまうのはめずらしいことだった。
そもそも初めて自慰をしたのも高校に入ったばかりの頃で────
──ザザッ──
「あれ……?」
一瞬脳内にノイズが走った気がした。
でもおかげで何故か記憶が先程よりも鮮明に蘇る。
そう、私が最初にオナニーしたのは"中学生2年生"の頃──
「すごい、本当に過去の鈴華さんにも憑依できた……!」
中学校の女子トイレで鏡に向かいながら中学2年生の鈴華さんになった俺は頬をペチペチと叩いていた。
明らかに小さくなった身長に幼い顔。髪は大学生の頃とは違い肩にかかるくらいのミディアムヘアーだったようだ。
「成長した鈴華さんは美人なオトナの女性だけどこの頃の鈴華さんはまさしく美少女って感じだな。声まで可愛いし絶対男子にモテただろこれ。」
試しに鏡に向かって小さくウィンクすると思わず胸を打たれてしまう。
そういえばと、試しにブレザーに包まれた胸に手を当ててみると慎ましいながらもしっかりと肉の反発が返ってくる。これがあの豊かなバストへと成長するのだからまさに未来の約束されたおっぱいといえるだろう。
「ふふっ、この頃から既にカラダは将来超有望だったんだ。でも「私」はまだそういうのがよく分からなくて……ふーん、そうなんだ。」
鈴華の記憶を読み取りながらふにふにと手のひらに収まる胸を押し続ける。
確かにこそばゆさこそは感じるものの快感を覚えているとは言い難い。
身体そのものがまだその感覚を理解していないかのようだった。
「クラスメイトの中にはもうセックスしてる子もいるみたいだし、私ももうオナニーくらいは覚えないとね!」
勝手に決めた博人は鈴華の幼さの残った顔でニヤリと笑みを浮かべるとスカートを翻し個室トイレへと入る。
スカートをゆっくりと下ろし、桜色のパンツを脱ぐとそのぷりんとしたお尻を便座に下ろした。
「この眺めだけで3日分のオカズにはなりそうだ。」
陰毛が生え始めたばかりの下半身丸出しの光景に思わず背中にゾクゾクと鳥肌が立つ。
興奮が高まるなか、ブレザーに手を入れワイシャツの上から胸を揉んでみる。
先程よりも直に感触が伝わって手のひら全体にその柔らかさが広がった。
「はぁ……っ、幸せ……中学生のおっぱいってこんな感触なんだ。奥に少し芯がある感じ……でもすごくしっとりしてる……んっ、ふぁ……」
多幸感に包まれながら少し身体が熱を持ち始めたのを感じた。
高校まで得ることのなかったはずの感覚を、博人は己が欲望のために前倒しで鈴華に植え付けているのだ。
「んっ……うっ、ぁっ……これだよ、この感覚……もっと強く、もっと甘い感覚を覚えこませないと……私がえっちなことを好きになるように……今度は乳首……ん、ひゃんっ!」
シャツのボタンを外し、ブラの上からぷっくりと膨らんでいたそれを摘んだ瞬間、博人は知っているが鈴華には全く未知の感覚が駆け巡った。
「はぅっ、あっ……乳首が、ぴりぴりする……なに、これ……気持ちいい……咲ちゃんもこんなことしてるのかな……ずるい、こんなに気持ちいいなら早く教えて欲しかった……んうっ!」
咲とは鈴華のこの頃のクラスメイトの一人で、最近オナニーに目覚めて毎日のようにシているそうだ。チクニーが特に病みつきになっているようで鈴華の記憶によると何度か試すように言われていたようだ。
「ふ、ふふ……ありがとう咲ちゃん。君の言う通りこんなに気持ちいいならすんなり"書き込めそう"だよ。──そう、"私はオナニーが好きなえっちな女の子なの……っ!"」
経験を得れば脳の同調率が上がり、乗っ取っている間の行動が本人のものとして記憶されるなら、それはすなわち思考すら書き換えられるということではないか。
そう思った博人はまさにそれを実践しようとしていた。
鈴華の脳内回路を使い、鈴華自身の思考として博人の欲望を流し込み、快楽と共に走らせる。
「はーっ、はーっ、うっあっ、あっ♪乳首、コリって固くなってる……指で転がすと、ふああっ!あ、あ……気持ちいいよぉ……」
気が付けば鈴華の身体は興奮しきっていた。
博人の邪な感情に当てられ"性"に目覚めたのだ。
アソコからは尿とは別の透明な液体が分泌されぽたぽたと便器へと滴り落ちる。
「人生で初めてえっちなスイッチが入っちゃった……♪無理矢理入れられちゃった♪乳首触って気持ちよくなってえっちなお汁出しちゃって、今度は……ひぃいあっ!!♪お豆ぇ……♪」
いつのまにか股の間に伸びた手は薄い毛を掻き分け、その先にある膨らんだ小豆に指を滑らせた。
乳首と同等かそれ以上の快感が走り鈴華の顔がますます蕩けていく。
「ひゃっ、あっ、ああっ!指が、とまらな、ああっ!頭、まっしろになっちゃう♪何も分からなくなっちゃうッ♪」
くちゅりくちゅりといやらしい水音立てながら、身体はその溢れ出る快楽に翻弄されていく。
同時に脳内では一人の男の姿を思い浮かべていた。鈴華は顔を見てもそれが誰なのか分からない。知らないはずの誰かを脳内に焼き付けられながら甘い声を漏らしていく。
この男の人が愛おしい。何故かそう思った。
夢の産物としか思えないこの人に会うことができたなら、それはまさしく運命的な出会いと言うべきではないだろうか。
「ああぁ、ああっ、ふぁああっ!♪豆、クリトリス、いい……イイんっ♪好き、これ好き、あっ、あっ!イクっ!好きッ!イクゥッ……ンンッ!!♡」
太ももを内股に閉じキュッと目をつぶって全身を震わせる。
鈴華は生まれて初めて絶頂へと登りつめたのだ。
「んふぁあ……はぁ〜……はぁ〜、んっ♪気持ち良かったぁ……こんなのクセになっちゃう……♪女の子のオナニーさいこぉ♡」
最後の言葉は博人の思考が漏れたもの。
最初の目的を果たし、中学生としての鈴華を堪能した彼は全身を脱力させながら天井を見つめた。
「もっとえっちな女の子になるからね、私。」
中学生のものとは思えないほど妖艶な笑みを浮かべながら、鈴華は自分に言い聞かせるように誓いを立てた。
自分の過去を思い出していただけなのに長い長い回想を見せられた気分だ。
そう思った鈴華は気怠そうにベッドから立ち上がる。
そうだ、自分はオナニーが好きだったのだ。
ならば急にムラッときて自分を慰めてしまうことも当然あるだろう。
鏡に映る自分の姿を見ながら考える。
よく見るとまだ余韻からか顔が赤い。
「……もう一回しちゃおうかな。」
学校での背徳的初オナニーを"思い出した"鈴華はじんわりとアソコに広がる疼き感じながら小さく呟いた。
「中学生の鈴華さん可愛かったなあ。可憐な感じが今と違って新鮮だった。ちゃんとエッチが好きな女の子になってくれただろうか。」
憑依を一度解除した博人はアプリ画面を眺めながら嬉しそうに呟いた。
試しにステースを確認すると自慰頻度が2週間に一度から1週間に一度程度に更新されていた。
「なるほどこうして今の鈴華さんが変わっていくのか。自分好みにカスタマイズしてるみたいで楽しいな。」
1人の人生を捻じ曲げていることにも関わらず、博人からは罪悪感のかけらすら感じられない。それどころか変わっていく様を面白がってすらいた。
「よし、効果があることも分かったし、いよいよ本命だな。」
画面を操作し今度は先程の時間から3年後を指定する。ここがまさに彼女にとってのターニングポイントになったであろう過去だ。
「全部俺が変えてやる。」
変えるべき日の調べは付いている。野望を胸に博人は憑依実行ボタンを押した。
「ひっ!」
視界が暗転した直後、自分の喉から発せられた小さな悲鳴に驚いて目を開くと周りの景色が様変わりしていた。
座っていたはずのデスクが木材とスチールでできた机になっており、自分の部屋だったはずの場所はよくある高校の教室に置き換わっていた。
3度目の憑依体験とはいえ突然世界が変わるこの感覚には未だに慣れない。
「鈴華、どうかした?」
周囲を見回していると隣の席に座っている女子生徒から声をかけられた。
どうやら悲鳴が彼女にも聞こえたらしい。
「ううん、なんでもない。ちょっと虫がいただけ。」
「そっか。そういえばさ、明日の藤崎くんの呼び出し。鈴華は行くの?」
その質問に手間が省けた、と博人は思った。
自分から聞くまでもなく狙った日に来ることができた確認が取れたからである。
今日は鈴華が後の彼氏となる男に告白される「運命の日」の前日。
「行くよ。無視するのも可哀想だし。」
「でもやっぱりあれって告白するつもりだよね。鈴華は藤崎くんのこと好きなの?」
「・・・今の私ならまんざらでもない、かな。」
「なんだか煮え切らない言い方だね。自分でも分からないの?」
「ううん、分かるよ。私は藤崎君のことが好き。でもそんなの、いつ気が変わってもおかしくないでしょ?」
「???」
女子生徒は意味が分からないと言いたげに首を傾げている。
それも当然か。鈴華の本心と肉体に潜み操っている精神が別物だなんて夢にも思うまい。
「ふふ、大丈夫だよ。明日はちゃんと"心に決めた答え"を出すから。」
悪戯っぽい笑みを浮かべた博人はあろうことか翌日まで鈴華の身体に憑依したまま過ごした。
目的に向けて念入りに準備するために。