早朝、太陽は徐々に上っていき薄暗かった大地を眩しい陽射しが照らし始める。しかしあまりの気温の低さにその恩恵をまったく得ることができない。一面真っ白に染まった道を多くの高校生が白い息を吐きながら急ぎつつもバランスを崩さないように、足を踏みしめながら歩いている。
何せ今日はセンター試験。多くの若者にとって人生の分岐点となる日だ。それなのに天は何を思ったか60年ぶりの大寒波によって日本全国に大量の雪を降らせ、ほとんどの交通機関を麻痺させた。おかげで試験開始に間に合わない生徒が続出する始末だ。
こうなるのであれば試験を行う時期をずらしてもいいのではないかと“上空から“道行く高校生たちを眺める俺は思った。だが別にヘリコプターに乗っているわけではない。幽体離脱ができる俺は今となっては昔の出来事のように感じる「センター試験」という一大イベントが懐かしくなり、この能力を使って様子を覗いて来ようと思っただけの暇人なのだ。
「今年の高校生は大変だなぁ。たださえ緊張するだろうに雪まで降っちゃって……あ、あそこの女子高生が転んだ。しかもパンツ見えちゃってるし。あー、顔真っ赤だ。この後試験に集中できないなこりゃ」
他人事のように呟いた俺は外の様子をしばらく眺めた後、試験開始の時間を見計らって会場内に入った。
「お、英語か。自慢じゃないけどセンター英語は満点だったんだよな。それにしてもみんな真剣に解いてるなあ。そりゃどこの大学に行けるかが掛かってるもんな、当たり前か」
一人ひとり見ていくと、ちゃんと勉強してきたのかサクサクと問題を解く者。自信がないのか問題文と選択肢を行ったり来たりする者。開き直って数字の書かれた鉛筆を転がす者と、人によって試験の解き方が違ってなかなか面白かった。鉛筆はさすがにやめた方がいいと思ったが。
そうやって高校生たちを観察していくうちに30分が過ぎ、問題を解き終えた生徒も出始めた。だがそんななかで先ほどから同じページとずっとにらめっこをしている女子高生が目に付いた。黒髪ストレートで一見真面目そうだが、後ろに回り込んでみると試験時間の半分以上が経過したにも関わらずマークシートは3割ほどしか埋まっていなかった。本人も焦りを感じているのか鉛筆を握った右手を震わせながら選択肢を見つめているが正しい回答を見付ける兆しはない。
「英語、苦手なのか」
試しに正面に回り込み耳を彼女の制服に包まれた胸に近づけてみる。すると年相応に膨らみ上下する柔らそうな双丘の奥からバクバクと早いペースで脈打つ心臓の鼓動が聞こえてきた。鉛筆に持った指先が動く気配がないことからおそらく頭のなかは完全に真っ白なのだろう。それでも平静を装おうとする遠目からは気づかなかった彼女のぱっちりとした二重瞼の可愛い顔を覗き込んでみると瞳が薄っすらと潤んできているように見えた。ぎゅっと唇を噛みしめる彼女を俺は思わず不憫に思ってしまった。
「……しょうがねえな」
俺は少し考えた末に俺は再び彼女の後ろに回り込むと背中に霊体を染み込ませるように沈めていった。
「あっ…...」
周りに聞こえるか聞こえないかくらいに小さな声をあげ肩を震わせた彼女は虚空を見上げた。同時に手から力が抜け鉛筆が机の上に転げ落ちる。だがすぐに姿勢を直し鉛筆を拾い、手の調子を確認するように何回かペン回しをすると不敵な笑みを浮かべて先ほどまでまったく進まなかった問題をスラスラと解き始めた。
「ふぅ……んー!」
試験時間が残り5分になったところで全問題のマークを終え軽く伸びをする。
「隅々までは読んでないけどこれで8割は固いと思うぞ。感謝しろよ?」
周りに聞こえないくらいの小さな声でつぶやくと思った以上に可愛いらしい声が骨伝導を通して聞こえてきた。ここまで来れば説明は不要だと思うが俺が彼女に乗り移って代わりに問題を解いてあげたのだ。俺の記憶を使って解くことができたのだ。別人が乗り移っているのだから当然なのかもしれない。だが本来は存在しない英語の知識が彼女の脳内で処理され、正解を導き出したということの意味をよくよく考えると、一種の刷り込みをしているようでとても興奮した。彼女の脳内で行われる思考を俺が支配していることを実感できたからだ。先ほどまで問題を解こうとオーバーヒートしていた脳が今は邪な思考に満たされている。俺に憑依されなければまず生まれなかったものだ。
「あぁだめだ……ムラムラしてきた」
エロい気持ちでいっぱいになれば当然肉体もつられて昂ってくる。さっきとは別の理由で心臓は激しく脈打ち瞳は潤み、艶やかな唇から漏れる吐息はどこか甘ったるいものになっていた。
「ごめんね文那(あやな)ちゃん。ただの親切心で乗り移ったつもりだけど、君のなかにいたら“お礼”が欲しくなっちゃった……はぁ……はぁ……」
机の端に置いてある受験票で名前を確認して形ばかりの謝罪を済ませた頃には両手で太ももを擦っていた。膝の上までを覆うハイソックスとスカートの間に絶対領域ができておりふたつの生地に挟まれて僅かに顔を出す白い肌はむしゃぶりつきたくなるほど眩しく輝いていた。彼女の細長い指先がきめ細やかな柔肌をくすぐったい感触とともに伝う度に胸が高鳴った。
「んっ……うはぁ……これ、クセになる……男のごつい脚と全然違う」
これだけで数時間は楽しめそうだがもうすぐ試験が終了するのでさっさと本題にはいることした。前かがみになって机に胸を押し付けるとバレないようにブレザーのなかに右手を入れブラウスのボタンをふたつほど外す。できた隙間に手をさらに差し入れブラジャーの上から胸と机で挟むと手のひらいっぱいに柔らかい感触が広がり思わず少女のものとは思えない吐息が漏れた。
「んっふぅ……」
堪らない。本当に堪らない。
今の自分はこの娘にとんでもなくエロい表情をさせているに違いない。ここは自室のようなプライバシーが確保された場所ではない。誰かに気づかれるかもしれない。にも関わらず自分の身体を慰み物にして淫らになっていく女子高生がここにいることがどうしようもなく非現実的でどうしようもなく官能的だった。こんなシチュエーションはAV以外で見たことない。それを自分がこの娘にさせているのだ。
「はぁぁっ♪はぁーーっ、はぁーーっ、んっ」
呼吸を荒げながら手に押し付けられたおっぱいを揉みほぐす。ふにふにと程よい弾力とぴりりと心地の良い快感が神経を伝って脳に届く。服のなかは暖房のかかった室内以上に熱がこもっており、ひんやりとした手で揉まれる感覚を一層尖らせた。
「んっ、んっ……!くふっ……」
一心不乱に揉んでいるとブラの上からでも乳首が固くなっていることが分かった。このカラダはもう完全にその気になっている。いや、俺がその気にさせたのだ。
「す・け・べ ♡ くふふっ」
声には出さず一文字ずつゆっくり口ずさむとそれだけで背中がゾクゾクした。ブラのなかに手を入れすっかりビンビンになってしまった乳首をいじめる。それと同時に右手はスカートを伸び、とっくに湿っていたパンツの上を擦り始めた。
「ぁ、ぁ、ぁっ」
思わず目を瞑ってしまうほどの強い快感が背中を走る。ブラの上から左胸を刺激していたときよりも明らかに気持ちいい。声を抑えるのに精いっぱいだ。
「ん、んぅっ、んんっ!」
目を瞑っている分残りの五感が鋭くなり僅かに漏れる喘ぎ声と全身にじわぁっと広がっていく快楽で頭がいっぱいになる。声を抑えていると逃げ場を失くした快感が身体のなかにどんどん溜まっていくようで爆発してしまいそうになる。
イキたい。イキたいっ。イキたいっ!!
「んんっ、ん、んっ、んんんっ!」
アソコがぐしゅっといやらしい音をたてた。その瞬間閉じていたはずの視界が真っ白になった。
「んんんーーーーーーっ!!♡♡」
何も考えられない。今はただこの快感に身を任せたい。俺はここが試験会場だということを忘れて全身で彼女の絶頂を受け止めた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……んっ♡」
長い長い吐息。全身には力が入らず俺は机に身体を預けた。
すると試験官の「止め」の合図がかかった。試験が終了したのだ。
(あ……早くこのカラダから抜けないと……)
「うっ……」
小さなうめき声とともに彼女の背中から慌てた俺の霊体が出てくる。
程なくして目覚めた彼女は全身の脱力感といつの間にか試験終了時刻を指していた時計を見て驚き焦るもしっかりと埋められた自分の解答用紙を見て目を点にした。
「え……?えっ!?」
状況を掴めないまま解答用紙が回収されていく。彼女は呆気にとられたまま遠ざかった行くその紙を眺める事しかできなかった。
「なんで……?」
「ごめんなさい。犯人は俺です。でも代わりにテストは受けといたからおあいこってことで」
聞こえないと分かっているのに俺は言い訳がましく彼女の隣で言った。
他の科目はそこそこできるらしく彼女はすべての教科の問題をどうにか解くことができたようだ。これなら志望校に合格できるだろう。俺も良い思いができたしお互いwin-winだな。
「大学でも頑張れよ」
試験から会場から出て行く彼女の背中を見送ると俺も自分の肉体のある自宅へと帰っていった。
-数年後-
「んあっ!ん、んふぅ……」
女子大生が自室で全裸になって自分を慰めていた。
「文那ちゃんも大学に入ってからこんなに垢ぬけちゃって……俺なんだか悲しいなぁ。でもカラダはこんなに成長してくれたからイーブンかな……あんっ!あの時より感覚が鋭くなってる……おっぱいも二回りくらい大きくなって……あはんっ♪お兄さん感慨深いぞぉ、んぅん……くぅうんっ!」
無事希望の大学に進学した文那ちゃんは充実した大学生活を送っていた。あの時手伝った甲斐があったってもんだ。まっすぐだった黒髪は茶髪に染めてパーマをかけており、まさしく今時の女子大生という風貌になったが今の彼女も結構好きなので気にしない。
「ひあっ……あっ……あれ以来君のことが忘れられないから、これからも時々このスケベなカラダを貸してね……ああっ……んっ、ああっ……困ったときはまた力になるからさ……ギブアンドテイクってやつだ。ふふっ、あっ……んあんっ!」
こうして勝手に彼女の相棒になった俺は定期的楽しませてもらいつつその幸せな日々を見守った。それが彼女が母親になるまで続くことをこの時の俺は夢にも思っていなかった。
終