ファンタのコーラ味さんの掲載作品冒頭になります。
私立帝英女子大学附属高等学校の1年生、滝川(たきがわ)環(たまき)。
弓道部に所属し研鑽の日々を送りながら、ゆくゆくはお父様やお母様の手助けになることを目標に過ごす私。
私には最近、ひとつ悩み事があった。
……親友の坂本(さかもと)麻(ま)里奈(りな)の様子が、少しおかしい。
麻里奈とは幼稚園の頃からの幼馴染で現在はテニス部所属の、ショートヘアの栗色の髪(日焼けして色落ちしたらしい)とクリッとした目元が印象的な、誰にでも明るく接する女の子で、落ち着いたとか、冷たい印象を与えやすい私とは真逆の子だった。そんな真逆の私たちだったが、共にいた時間が長かったのもあってか自然と息は合っていた。
始まりは1週間前。その日、以前からずっと感じていた、ねちっこく粘つく、監視するような、はっきり言うと気味の悪い視線を感じなくなった。視線を感じなくなった日、麻里奈はやけに胸を気にしたり、スカートの裾を触っていたり、ソワソワと落ち着かない様子だった。
どうしても気になって「麻里奈、どうかしたの?」と尋ねてみたものの、挙動不審気味に「う、ううん、なんでも、ないの」と私に教えてくれる様子はなく、直後の「くふ、おれ、ううん、あたし、が、麻里奈、なんだ。くふふふっ」という呟きも、横を通ったトラックの騒音に遮られ、私の耳に届くことはなかった。
次の日の麻里奈から落ち着きのなさは無くなっていたが、何故か彼女から以前感じていた視線に似たようなものを感じるようになった。
また、やけに手を繋いだり、腕を組んだりしてくるようになって、そのたび麻里奈から何かが私の中に流れてきてるような変な感覚もあった。しかし少しテンション高めな様子で私以外の子達にも同じような接し方をしていたし、それ以外に特にいつもの麻里奈と違うわけでもなかったうえ、そもそも麻里奈が自分をそんな視線で見る理由も思いつかなかったので、気のせいだと判断した。
3日目、昨日と同じく麻里奈が私に触れてくることには変わりなかったけれど、話し方も、仕草も、雰囲気も、全ていつもの麻里奈の調子みたいで少し安心していた。のだが……
それが起こったのは授業中のこと。ふと、何故かはわからないが麻里奈の事が気になって彼女の方をチラリと見て、目を疑った