乗り換えモノを書こうとしたらなぜかこうなっていた。
後悔はしていない。
大学。
それは多くの人にとって学業の最終段階であり、輝かしい青春を最大限に謳歌できる場所。
精神はともかくとして、肉体の方は大人として成熟した若者が敷地内の建物を行き交い学び、サークル活動に勤しみ、恋愛を育んでいく、彼らのためだけの場所。
だがそれは同時に、心に悪意を抱えた存在にとって獲物を狩るための格好の箱庭であった。
「ねえ、今日の講義が終わったらカラオケに行かない?」
「おう、いいよ。そのあと適当に飯でも食いに行くか」
昼休み。
昼食を済ませた若い大学生カップルが天気も良いことからキャンパス内にある中庭を散策していた。肩がぶつかるかぶつからないかくらいの距離で並んで歩くその様子から、交際歴の長い親密なカップルであることが窺えた。
「私、イタリアンが食べたい!タカシの奢りで!」
ふてぶてしい笑みを浮かべて彼氏の顔を覗き込む。
タカシと呼ばれた男の方もやれやれと呆れた表情を浮かべつつもまんざらでもないようだ。
「は~…分かったよ。それで、さ…今、親が旅行でうちにいないんだけどさ…明日講義ないし、泊まりに来ないか?その、せっかくだから…」
男が少しバツの悪そうな顔をする。それを見た彼女もその意味を理解したのか顔を赤らめ目線を下へ向けた。だが決して嫌ではないことが照れる表情から分かった。
甘酸っぱい関係のふたり。だがそんなふたりだからこそ、目を付けられてしまった。
目には見えない真っ黒な悪意に。
「あ……………うん…いいよ…その、お母さんには友達の家に泊まるって伝え…ひうっ!」
突然しゃっくり声を上げた彼女は白目をむいて身体を震わせた。
肩がすくみ、両手を引き攣った状態でふらつき倒れそうになるも、すんでの所でカツンッ!とヒールの履いた左足で地面を踏みつけた。
「お、おい…大丈夫か」
「……ふひっ」
心配そうにする男は無視してスキニーパンツに包まれた足を開いたまま両手を大きくふくらんだ胸の前に持ってくると、確信を持ったような邪悪な笑みを浮かべてぐっと握りしめた。
「すげえやこのカラダ、あっという間に馴染んじゃったぜ…」
「史佳…?」
「わりーな彼氏さん、この女のカラダは俺がもらったぜ。こんないい女食わずにはいられねえんでな…ってうっわ、やわらけ!やっぱり結構でけえなコイツ…手にずっしりくるぜ…」
服を着たまま胸を上下にゆさゆさと揺らし、ボールのように弾むふたつのふくらみに釘付けになる。
「なっ!おい史佳っ、いきなり何をしだすんだ。周りが見てるぞ…!」
「別に、恥をかくのはこのカラダであって俺じゃねえし。どれどれ、中身の方は…っと、うっはぁ!すっげえ谷間!やっぱ女子大生って最高だな!カラダはもうとっくに大人になってるからエロいぜ…くひひ、それにしても黒かあ…なあ彼氏さんよ、この女って結構スケベだったりする?カラダといい下着といいクッソエロいんだけど」
カットソーの襟をぐいっと引っ張って胸を覗き込むと、女性の甘い香りとともに、その谷間を強調するかのようにレースのブラに包まれたたわわな胸が視界を覆う。上半身を軽く左右に揺らすと、欲情を誘うかのようにぷるると震えた。
波打つ真っ白な肌と黒いブラジャーのコントラストが実に美しい。
「どうしちゃったんだよ史佳!さっき何を言ってるか全然分かんねえよ!」
「はーっ…だーかーらー!私は乗っ取られたの!えっろいカラダしてあんたみたいな男とほっつき歩いてるから悪霊に狙われてぜーんぶ奪われちゃったの!分かる?気づいてるか分からないけど今の私、自分のエロボディにどうしようもないほど興奮してアソコから愛液が溢れ出しちゃってるのよ?ほら!」
史佳は視線を落とすと、ベージュのパンツの股の部分が薄っすら湿って変色していた。
「う、嘘だろ…?」
「ごめんねタカシぃ…私のカラダ、知らない男の人に取られちゃったの…でもこのカラダすごいの。乗っ取った瞬間にあっという間に魂が溶け込んじゃって全然違和感がないの。こんな従順なカラダ初めてで…もしかしたら私たち、相性いいのかも…きゃはは!」
豹変した彼女を見て、男は納得せざるを得なかったようだ。
肩を掴んで鋭い剣幕で詰め寄る。
「ふざけるな!さっさと出て行けよ!」
「いいぜ、元々ここでいろんなオンナを食っていくつもりだったしな。でもその前に…」
史佳は男をいきなり押し倒すと、公衆の面前で服を脱いで下着姿になった。
「“私”を堪能させてもらうわ♪」
「お、おい…!まさかここで…!」
「別にいいじゃない。今夜私とヤるつもりだったんでしょ?予定を繰り上げるだけよ!」
「馬鹿なこと言うな!そんなことをしたらふたりとも…」
「あーもうめんどくせえ…『動くな』」
「っ…!っ!?」
男の身体がまったく動かなくなる。まるで金縛りにあったかのように全身に力が入らないのだ。声を出そうとしても息が詰まり発声ができなくなっていた。
あっという間にズボンを脱がされると怒張した男性器が顔を出す。
「んふふ、ディルドーは黙って固くなってればいいのよ」
魅惑的な笑みを浮かべるとずぶぬれになってしまった下着を男のペニスに擦りつけながら自分の胸を鷲掴みにした。
「あうっ!すっげえ気持ちいい…これがこの女の感覚か…快感が鋭くて腰が震え…あんっ!?あ?あはっ、今また大きくしたでしょ?分かるわ、おまんこで直接感じたんだもの♪不意打ちだったからえっちな声が出ちゃった。私ってこんな色っぽい声で喘ぐのね。ねえ、もっと聞きたい…もっと私を喘がせて!」
腰を前後に動かして、びしょ濡れの下着がへばりついた股間で竿を刺激する。
その硬度が高くなるにつれて史佳に背中を走る快感が強くなる。
「はっ、はっ、はっ!あんっ!んはあっ!いい…イイ!背中がぞくぞくするっ!この女の声…艶があって最高だ…この女を俺が征服してるんだ…あっ、んんっ!もっと征服してやる…ああんっ!ど、どうしよタカシっ、私のカラダどんどん征服されていっちゃってる…♪男の人の欲望で埋め尽くされていっちゃってる…♡ このままだと、私、わたしぃ…♪」
ますます激しく悶えていく女の声で史佳は興奮する。
そしてその声を自分が出している事実にさらに興奮し、肉体を倒錯的な悦楽の海の奥深くへ沈め込んでいく。
ブラジャーを下に捲り隆起しきった薄ピンク色の乳首を両手の指で挟みこむように摘まんだ。
「あはぁ!アァあ!だ…めぇ!あっ!乳首っ、きもち…ああぁあ!はああぁあっ!」
乳房の先端にある小さな突起から発せられる快感に背中がくの字に曲がった。
男に跨った女が両手で乳首を摘まみ上げえび反りになっている姿はどうしよもないほどに情けなく、堪らないほど艶美だった。
ふと周りに目をやるとすっかり人だかりができていた。
真昼間のキャンパス内でセックスを始めたのだから当然のことであった。
人だかりの中にいる女子大生と目が合う。
困惑と軽蔑の感情が入り混じった表情を浮かべている。
無意識のうちに肉体が羞恥心を覚えたのか全身がぷるぷると震える。
恥ずかしい。
その視線が恥ずかしい…!
でもそれ以上に…
「えへぇ…♡」
彼女の身体は芯から湧き上がるような昂りを感じていた。
男の精神は恥ずかしいと思う気持ちさえ快楽のスパイスに変えた。
口の端から涎がこぼれ、蕩け切った表情に理性など残ってはいない。
あるのは快感と今この肉体を完全に支配する黒い欲望のみ。
そしてそのすべてをこの肉体は余すところなく受け止めていた。
極上の肉体、極上の快楽。
「ふ、ふふ…あはは!だめだ、こりゃもうだめだ…悪いな彼氏さん。俺はこのカラダを『気に入っちまった』…」
生きた性玩具と化した彼氏に向かって邪悪な笑みを浮かべる。
彼はその意味を理解できなかったがなぜか彼女が遠くに行ってしまうような感覚を覚えた。
そして本能と呼ぶべきそれは、悲しいことに的のど真ん中を的中していた。
史佳が腰を持ち上げてペニスをあてがう。
そして、一気に腰を落とした。
「んえあああああああ~♡ 」
圧倒的な快感が史佳の脳を貫く。股間から愛液が溢れて彼氏を伝い、地面を濡らしていく。
「ぁあっあっあっ……ふわっんあっぁ……タカシぃ、これが私とあんたの最後のセックスだからちゃんと味わってねえ♪あっ!あっ!」
激しく腰を上下させるたびに大きな胸がぶるんぶるんと揺れ、肌が熱を帯びていく。
やがてリズムは早くなっていき、史佳の身体が限界まで淫らに染め上げる。
「あぁあっあっ!俺はな、大抵の女のカラダを楽しませてもらったら…はぁんっ!そのまま出て行くことが多いぃん♪だ、けどっ…『私』みたいに…んんっ!…イイ女に当たると、自分用に欲しくなっちまうんだ…ああぁんっ!」
喘ぎで中断されてもなお、話し続ける。
より深い絶望に陥れるために。
「だからね…ぁ…んっ…。気に入った女は心を作り変えて自分専用のせいどれいにしちゃう…んっ…!だって。私の場合は…はぁ、はぁ…タカシへの愛情をぜんっ…ぶ!…ぜーんっ…ぶ!悪霊へのものに書き換えちゃうだって…は、ははっ…」
喘ぎながら幸せそうに笑みを浮かべるが、彼氏の方は顔面蒼白になりながら涙を流していた。
「私とタカシ…ああっ……んっ…多分退学になっちゃうし人生ぶち壊しになるけど…んっ!…私は悪霊...うう…んっ…!…ちがう…ご主人様に愛してもらって幸せになるね…ぁ…んっ…。だから…だからぁ…♪タカシはひとりでっ、人生のどん底を味わってね…♪んあっ!あ、ああっ!く、くるっ。くるぅうううう!バイバイ、タカシぃ♡」
びくんっと腰が跳ねた。
「あっっ、ああッ! あっあっ、あっッ、ああっ!
全身が痙攣し、背中が勝手にピンと伸びる。
その瞬間、史佳の脳内が真っ黒に染め上げられた。
魂を穢しつくすほどに。
「あッあッあアァアアアッ!!♡♡」
膣内に白濁液が大量に流し込まれる。
だがそれを覆いつくすほどに史佳の心は真っ黒に塗り潰された。
絶頂によって意識を失っていたようすの彼女だったがしばらく目を覚ましたのかいやらしい笑みを浮かべた。
「ふ、ふふふふ…ご主人様ぁ♡」
そこにいたのは従順な雌奴隷だった。
しばらくして警備員と警察が駆け付け、ふたり連行されていった。
あれほどの騒動を起こしたのだ。退学は避けられないだろう。
心身喪失状態のタカシに対し、史佳は最後まで艶笑を浮かべていた。
その笑みは、まさしく彼女の未来を象徴していた。
「ねえ美鈴、もう行こう?次の授業始まっちゃうよ」
人だかりの中にいたふたりの女子大生。そのうちのひとりが友人に声をかける。
興味本位で見に来たものの繰り広げられた光景は女性の彼女にとっては決して愉快なものではなかった。
早くこの場から立ち去りたい一心だった。
「うん…そうだ、んひっ!?」
友人が突然声を上げて肩を震わせた。
「ちょっと!?どうしたの!?」
「あぅ…ん…ふぅ…ううん、何でもない。ちょっと蜂がいたと思ったから…」
「本当?それにしては大げさだったけど…」
「あはは、気にしないで!さっ、早く行こ亜里沙!まだまだこれからなんだから!」
「…?う、うん…」
美鈴は亜里沙の腕を引っ張って次の教室の場所へ向かう。
だが前を歩く彼女が受かべるのは、いつもの彼女の明るい笑みではなく、先ほどまで史佳が浮かべていた邪悪なものと瓜二つであった。
これなら相手が屈強な男だろうと確実に屈服させて強奪欲・征服欲を存分に味わうことができます。
また今回のように衆人環視の状況も作り出せるので、自分が快感を享受すると同時に相手を絶望に突き落とすことができて二重に美味しい! 大変興奮させていただきました。
こういう憑依作品がもっと出回ると嬉しいですね。