ラストをどうするかいろいろ悩みましたがこれで完結です!
読んで頂きありがとうございました。
秋山詩織と西森果歩のみならず、相川裕樹という個人に関わる大半の人間を支配下に置いた矢田和也は相川の最後の拠り所を潰すべく、とうとう幼馴染の山吹瞳を毒牙にかけた。矢田と西森の情事が行われている間も彼女は部屋の隅で人形のように立ち尽くすだけで意志を持ったような反応を見せることはなかったが、特に乱暴をされた様子ではなかった。しかし相川がその場に現れたことで遂に彼女が本当の意味で堕ちる舞台が整ってしまった。
「こっちに来い」
「はい……」
学校から直接連れて来られたせいか制服姿のままだった彼女は矢田の命令に力なく答え、おぼつかない足取りでふらふらと歩いて彼の横に立つ。依然として彼女の目に光は宿っていない。
「相川、おまえにとって良いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」
矢田は虚空を見つめる瞳を抱き寄せながらに問う。身体が密着しているにも関わらず彼女が嫌がる様子はない。それをいいことに矢田は肩に回した手で瞳の胸をぐにぐにと揉み、不敵な笑みを浮かべながらその感触を楽しんでいる。
「瞳に触るな!彼女に傷ひとつでも付けてみろ。俺はお前を殺すぞ」
「おお、怖い怖い。そういえばコイツはお前の彼女なんだっけ?どうりでそんなに熱くなるわけだ。怖すぎて手が震えるぜ。おっと震えすぎて手が勝手に……」
揉んでいた手を止めると人差し指と親指で制服の上から探り当てた瞳の乳首をきゅっと摘まみ上げた。くりくりと指で転がすと先ほどまで無反応だった彼女が虚空を見つめたまま声と身体を小さく震わせた。
「っ……ぁ……んっ……」
自我を失っていてもしっかりと快感を得ているようで、無表情のままにも関わらず顔が上気してきている。彼女は矢田の愛撫で感じているのだ。
「さすがに大きさでは詩織や果歩に劣るが、お前のオンナの胸の触り心地も悪くないぞ。手のひらに収まるくらいのサイズで胸全体の感触を楽しめる。それに感度で言うならコイツが一番かも知れない。ホント、エロい彼女ができて羨ましいぜ、相川。こんないいオンナがお前のものなんだからよ、お裾分けくらいはしてもらってもいいよな?」
「矢田ぁ……!お前ぇ……!」
相川は目を血走らせながら唸る。自分の大切な人が外道の手のひらの上で好き勝手されているのがどうしても許せないのだ。怒りを抑えきれず頭に血が上がっているのは矢田の目からも明らかだった。今にもふとした拍子に殴りかかってきそうなくらいだ。だが彼がそうしないのはこちらが3人女性を人質に取っているからだ。この状況で下手な行動を起こすほど相川は愚かな人間ではないことは矢田もしっかりと認識している。だからこそここまで強気に出ることができるのだ。
「まあそうカッカするなよ。減るもんじゃあるまいしいいだろ胸くらい。むしろ揉まれて大きくなるかもよ?」
言いながら性的興奮で勃ち始めていた瞳の乳首をきゅうっと強めの摘まんだ。
「んあっ……!……っ……♪」
感情なく小さく喘ぐだけだったのが打って変わって蕩けたもになったのが分かった。無意識のうちに瞳が甘い快楽を与えられて悦んでいる。
「くく、そそる声で鳴くよなあ。ヤル時はいつもこの声で誘惑してくれるんだろ?羨ましいったらないぜ。まあいいや……お前が希望を言わねえならまずは悪いニュースから教えてやる。今までいろんなオンナに憑依して思考を変えてきた。詩織や果歩のようにクソ真面目なオンナなら誰にでも股を開く淫乱ビッチに、旦那を愛していたオンナはそいつを心から憎い相手にって具合に遊んできた。そしてそれは、“お前の彼女も例外じゃない”」
「なっ……!?」
「気づかなかったのか?セックスの最中に中身が変わっていたことに。まあ無理もないか。記憶を読んで完璧に演じていたし、記憶処理も欠かさなかったからな。それにさっき感度が一番良いって言ったのは別に当てずっぽうじゃなく“実体験”なんだぜ?お前のオンナは快楽に関しては他のふたりとは比較にならないくらいに感じられるように出来上がっている。詩織や果歩が気持ちよくねえわけじゃねえ……コイツが気持ちよすぎるんだ。要するに、可愛い顔をしてコイツのカラダはセックスのために作られたようなものだと言えるほど感じやすいんだよ。今まで取り憑いたオンナのなかでコイツが一番居心地よかったんだ」
「瞳さんの身体に病みつきになり過ぎて私とのレズプレイをお求めになったこともありましたね。あの時は困惑しましたが目の前であんなに乱れる瞳さんを見せつけられて、新たな扉を開いたような気分になりました。それに……すごく気持ちよかった……♡ 女同士ってあんなに……ああ、思い出すだけで濡れてきちゃいました……」
詩織はスカートの上からアソコに両手を添えながら、うっとりとした表情で付け加えた。よく見たら彼女の太ももから粘度の高い液体が伝ってきており、真下の床が少し湿っているのが分かる。過去の情事を思い出しただけで下着の許容範囲を越える愛液を分泌しているのだ。それだけ彼女は性にどっぷり浸かってしまっているのだ。そしてそれだけ矢田の思考改変能力が強力だということを示していた。
「おいおい、ここでオナニーを始めるつもりか詩織。まあ止めねえが喘ぐ時はちゃんと俺に聞こえるようにな。お前のよがる声で俺を楽しませろ」
「はぁい♪外に響き渡るくらい大きく喘ぎますね……♪ん、んんっ……あっ、んっ……あっ、ああっ……くっ、んっ……あ、あぁん……ひぁあっっ!」
ひとりでオナニーを始めた詩織。スカートをたくし上げパンツのなかに手を入れてアソコを弄り出す。その異常な行動を止めたくなったが相川にはそれ以上に気になることができた。
「待てよ……もし瞳に何度も乗り移ったことがあるなら……」
矢田は言った幽体離脱によって人の身体を乗っ取るだけでなく、洗脳を行うこともできると。その気になれば奴隷を作り上げることもできるのは詩織と西森で証明済みだ。
ならば……
「瞳の心は……」
そこから怖くてとても言えなかった。自分の考えが正しければ自分は再び独りになったことを意味する。それだけはどうしても耐えられなかった。
「それがお前にとって良いニュースだ相川。確かに俺はコイツに何度も乗り移った。そして洗脳も行ってきた。おかげで一度は従順にもなった。だけどな……お前に対する感情や記憶を弄ろうとした途端、それまでに行った洗脳が一気に解けちまうんだ。こんなことは初めてだし、薬をくれた先輩からもそんな話は聞いてねえ。おそらくだが…..コイツのお前に対する愛情が強すぎて、俺がお前に関する思考に触れるだけで拒絶されちまうんだ。大したもんだよホントに……詩織や果歩の時でさえこれほど強く拒まれることはなかった。お前の幼馴染は心の底からお前を愛してるんだ。お前のことに関しては、お前以外の奴が触れることは絶対に許さないんだ。俺なんかもってのほかだ。今コイツが俺の言いなりになっているのはお前には一切関係ない簡易的な暗示をかけているからだというだけだ」
「じゃ、じゃあ……」
「ああ、コイツの心は元の山吹瞳のままだ」
(今はな……)
「よかった……よかった……!!」
相川は涙を浮かべそうになった。自分の大切な人の心は穢されていなかった。そして何より自分への愛情がそれを防いだのがたまらなく嬉しかった。ふたりの間の愛は本物だったのだ。そして皮肉にも自分を追い込んだ張本人、矢田がそれを証明したのだ。
「おう、喜べ。お前らの愛は俺じゃあ引き裂けなかった。それはもう仕方ねえ……仕方ねえから瞳チャンには一緒に体験してもらうことにした」
「体験……?」
「ああ、俺は人のカラダ乗っ取る時、意識を抑え込んで完全に支配することもできるが、あえて本人の意識を残したまま身体だけ動かすこともできる。その状態でそこらへんオッサンとセックスでもすりゃあ、コイツはショックで引きこもるだろうよ。一回でそうならねえなら折れるまで繰り返すだけだ。薬はもう飲んである。今すぐにでも取り憑いてセックスしに行けるぜ」
自分を追い込むためなら他の人間を壊すことも厭わないのか。矢田のおぞましい考えに相川は鳥肌が立った。もしそんなことになれば瞳の心は耐えられるはずがない。
「た、頼むそれだけはやめてくれ……!!頼む……!!」
だから必死に情けを請う。頭を下げて土下座する。自分のためでなく、愛する人のために。自分はどうなってもいい。瞳だけは助かって欲しかったのだ。
「情けねえなあ。そんなにオッサンが嫌か?ならこういうのはどうだ?」
矢田は瞳から離れ、ベッドで横になる。そして目を瞑ってしまった。
「……?」
ひとりで立ったままにされた瞳は意識がないにも関わらず突然愛撫を中止されて名残惜しそうな顔をしている。
まさかこんな状況で寝たのか?そう考えた瞬間――
「んひいぃっ!」
矢田が横になった隣で全裸のまま意識を失っていた西森が身体を大きく仰け反らせ引き攣った声を上げた。
「うう、うぁっ、あっ……!ひぎぃっ!」
苦しそうに四肢を震わせ腰をカクカクと上下させる。そしてモデルのようなスラッと伸びた長い足を何かに侵されているかのように激しく悶えさせた。だがやがて震えは次第に収まっていき、顔も安らかなものになっていった。いや、よく見るとニヤっと笑みを浮かべていた。
「せ、先生?」
「あがっ、ひっ、ぅぁっ……ぁっ……っ…………ふう……んふふ、乗っ取り完了♪すぅ~はぁ~、相変わらず胸が重いなこのカラダは……」
目を覚ました西森は上半身を起こして大きく深呼吸を行うと嬉しそうに自分の巨乳を両手で持ち上げた。下から揺らしてみるとずっしりとした感覚とともに面白いくらいに柔らかな双丘が波打ち視覚的に楽しませてくれる。男の身体では体験できないことだ。西森は満足そうにくすくす笑うとベッドに手を突き背中を反りながらこちらに向けて自慢の胸を突き出した。彼女のカラダのくびれが一層強調され改めてそのプロポーションの良さが分かる。
「どうだ相川、オンナが乗っ取られる瞬間って最高にエロくなかったか?苦しそうな顔と声、びくびくと震えるカラダ、カラダはどう見ても美女なのに中身が欲望に塗れたまったくの別人になってしまった事実……くひっ、全部が興奮を駆り立ててくれる。そして支配が終わると何事もなかったかのように目覚めて、オンナになったことを……いえ、オンナのカラダを奪ったことを確認するのよ。こんな風にね……!」
再び両手を胸に乗せる。しかし今度は指の間に乳首を挟むように添え、ゆっくりと揉み始めた。指に力を入れるたびに胸の柔肌に沈み込み適度な弾力で押し返してくる。だんだん胸の奥がじんじんと疼き始めるとそれに応えるべく揉みながら指で挟んだ突起をキュッと刺激する。すると背中に電流が駆け抜け身体がぞわっと勝手に震える。敏感なところを刺激された悦びを表現するように胸の頂きにあるそれは更なる存在感を主張し始めた。
「んあっ……!私のおっぱい、気持ちいい……あ、あんっ……さっきイッたばかりだからカラダが敏感で……んはっ!甘い声が勝手に出ちゃうの……ん、んんっ!んはあっ!あっ、乳首も……んふ……ぷっくり勃ってきちゃってすごくえっちだわ……んあっううぅ……あ、いまの……スキ……♡ んひゃあううっ!背中がぞくぞくってふるえてぇ……イイ……♡」
「先生に乗り移ってどうする気だ……!今更取り憑いても意味ないだろ!」
「なぁに?羨ましいの相川君?授業中いつも私の胸とかお尻を見てたものね。もしかして触りたいと思ってた?でも残念でした。私のドスケベボディはもう矢田君専用なの♪この大きなバストもいやらしいお尻、ついでに人格もぜぇんぶ征服されちゃった♪んはあんっ!最高に興奮する……私がオトナの魅力たっぷりのカラダ、矢田君に取られちゃったぁ……なんちゃって♪相川君は山吹さんが知らない人に犯されるのは嫌なんでしょ?だったら私がめちゃくちゃにしてあげてもいいかなって♪だって教師と生徒の禁断のプレイってすっごくドキドキしない?私は想像するだけでムラムラしてめちゃくちゃオナニーしたくなるんだけど、にひひ」
西森の両手を使って身体中をぺたぺたと触り女として完成しきっている肉体を堪能する矢田。明らかに異常な言動を取っているにも関わらず口調や仕草が普段の彼女を真似ているせいで本人が言っているのだと錯覚してしまいそうになる。
「せ、先生の真似をするな……先生は絶対にそんなことは言わないししない……」
「だからいいんじゃないの。普段の私が絶対に言わないこと、しないことをさせることができるから楽しいのよ。ああ、この肉体が思い通りになってるんだって実感できてすっごく興奮するのよ?んふっ……またアソコが疼いてきちゃった……それにね…...私ってこう見えて性欲が強くて週に5回はオナニーしちゃうのよ?教師って仕事も大変でね。帰ったらいつもストレスの溜まった自分を慰めてたの……♪昼間はあんなに厳格な私が、家では発情してあんあん喘いでたなんて信じられないわよね。どんなに取り繕っても結局は私も雌なんだなって……あ、幻滅しちゃった?ごめんね。人には偉そうな態度を取るくせに本性は淫乱なメス豚でごめんね……ぐふ、ぐふふ……♪ああすごい……言ってるだけでゾクゾクするわ……ねえ、我慢できなくなってきちゃった。先生とか生徒とかもうどうでもいいから山吹さんを犯していい?レイプしていい?めちゃくちゃにしちゃっていい?♡もう無理、無理なの……♡」
はあはあと発情したように息を荒げながら立ち上った西森は矢田の意思によって突き動かされ獲物を見つめるような眼光で瞳へと迫り、その横に立つと一糸まとわぬカラダを押し付けながら両腕を彼女にまとわりつけた。だが瞳は依然と自由意志をはく奪されたせいで全く反応を示さない。このままでは本当に矢田が先生の身体を使って取り返しのつかないことをしてしまう。
「お願いだ……やめてくれ……俺が悪かった……もうお前には逆らわないから……俺はどうなってもいいから……これ以上他の誰かが不幸になるようなことはしないでくれ……」
だから必死に懇願する。自分が蒔いた種のせいでこれ以上誰かが傷つくようなことがあってはならない。そのためなら自分のすべてを明け渡すことも厭わない。だからせめて自分の大切な人たちは救って欲しかった。
だがその想いを他ならぬ被害者の一人である詩織が先ほどまで没頭していた自慰を中断し、ためらいもなく一蹴した。
「んはあんっ!あら、ずいぶんな言われようね。私たちが『不幸』だなんて……それはあなたが決める事じゃないでしょ?私も先生も自分が変えられたことは自覚してる。元の自分なら友人のあなたや山吹さんにこんなことは絶対にしなかった。矢田君に手を貸すどころか必死にあなたたちを守ろうとしたでしょうね。私にとって本当に大切な友達だったから。でももうどうでもよくなっちゃったの……いえ、”どうでもよくされちゃったの”。今の私たちにとってご主人様に仕えることこそが最上の喜び、生きる意味なの。だから私は喜んであなたを裏切る。笑顔で立ち上がれなくなるまで追い詰めるわ。あなたを不幸にすることでご主人様が喜ぶのなら、それが私、私達にとっての『幸福』になんですもの。だから相川君、私たちの幸せの邪魔しているのはあなたなのよ。不幸にしようとしているのはあなた。もう元には戻れない。戻りたくない。あなたの救いはもういらない。だから、もう諦めてくれないかしら。黙って壊れてくれればいいのよ」
彼女は冷徹な笑みを浮かべながら言った。その表情に相川は心が冷えていくのを感じた。
「あ、秋山……俺はただ……」
「あはははっ!『元』友達相手に残酷ね秋山さん。今のあなたすっごく好みよ。主以外には躊躇なく嫌悪と悪意を向けるほど堕ちた生徒会長!あなたの心を染め上げて良かったわ。ここまで邪悪な子に生まれ変わったんだもの。あとでこのカラダでも抱いてあげるわね」
自分の洗脳の成果に矢田は西森の身体で打ち震えた。正義感と誇りに満ちていた彼女をこれほど真っ黒に反転させることがきたのだと。詩織も主の賛美にガラリと態度を変え嬉しそうに答えた。
「ああ、ありがとうございますご主人様……いえ、『西森先生』……私、あなたのためならどこまで悪い女になります……♪さあ、もういいんじゃないですか?こんな情けない男の願いなんて無視して、山吹さんを絶望の底に落としてしまいましょうよ。ふふふ……」
「んふっ、本当にそそる顔をするようになったわね詩織。そうしてもいいんだけど、相川君があまりにもかわいそうだからせめてもの情けで聞き入れてあげましょう。他の人を巻き込まない……いいわ、『私』はやらない。だから……」
西森は絡みついたまま瞳と顔を突き合わせ、じゅるりと舌なめずりをした。唾液で唇が艶めかしい輝きを放ち瑞々しさが増す。瞳の頭の後ろに手を回すと彼女はそのまま愛おしそうに口づけを交わした。
その瞬間――
「んっ!んむうううっ!!んんんっ!!」
ガラス玉のように虚ろだった瞳の目が見開き身体を小刻みに震わせ始めた。呼吸ができないのか反射的に顔を引こうとするが頭をがっちりと押さえつけられて動くことができない。
「瞳っ!?おい!矢田、何のつもりだ!!」
「んっ!んっ!んんんーーーーっ!!!」
西森の執拗な接吻にまるで何かを拒むように必死に口を離そうとするが叶わず、ついには涙を浮かべ始めた。両腕を引き攣らせ苦しそうに悶えていた彼女だったが、やがて限界を迎え一度だけビクンっ!!と大きく跳ねるとその肩から力が抜け、一筋の涙が零れ落ちると同時に糸が切れた人形のように倒れた――
西森の身体が。
「……」
「瞳……?」
瞳の方はがくりと両腕をぶらつかせうなだれていたが、倒れることなくその場で立ち尽くしていた。だがほんの数秒するとわずかに指が動き、それに続くようにゆっくりと背筋を伸ばす。横を向いて俯いているため肩にかかる程度の髪が邪魔してその表情は窺えない。彼女は両手を持ち上げ何度か閉じたり開いたりを繰り返す。そして確信を持ったようにグッと握りしめると首だけを90度に曲げ相川の方を見た。
意識を取り戻した彼女は涙こそ流していたが、それとは不釣り合いに嬉しくて仕方ないと言いたそうに口角を吊り上げ笑っていた。
「ねえ裕樹。どうしよう。ふふ、ふふふ……このカラダ、気に入られちゃったみたい。裕樹が頑張って守ろうとしてくれた『私』のカラダ……感じやすかったのにセックスで完全に開発されてエッチが大好きになっちゃったカラダ……あっはぁ…….♪奪われちゃった……乗っ取られちゃった♪頭から手足の先、髪の一本一本まで、矢田君とひとつになっちゃったよ。ぐふ、どうしよう、笑いが……抑えられないよ、ぐふふふふ……あぁ~、彼の興奮で私の心臓がドキドキしてる……思い通りに手足が動く……最っ高の気分♡」
自分の身体を抱きしめその可愛らしい顔にはとても似合わないようないやらしい笑みを浮かべる。矢田が西森から彼女の身体に乗り換えたのだ。でなければ彼女がこんな邪悪な笑みをこぼすはずがない。
「矢田っ……!お前、瞳の身体を……」
「そんな顔しないでよ裕樹。あなたが人を巻き込みたくないって言うから私に乗り換えたんじゃない」
「それがどうして瞳に乗り移ることになるんだ!」
「うん、実はね……気分が変わったの。裕樹、私とセックスしよ。ここで。先生と詩織ちゃんの前で。そしたら……終わりにしてあげる」
「なっ……それって……」
「うん、そしたらもうおしまい。矢田君も満足だって。詩織ちゃんたちは元には戻せないけど私はこれ以上傷つかないし断る理由はないよね?それとも、もっとひどい目に遭いたい?私はそれでもいいけど、ふふっ」
ニヤニヤと挑発するような目線で座り込む相川を見下ろしながら自分の太ももを擦る瞳。彼女をこれ以上矢田の思い通りにするわけにはいかない。これで救うことができるのなら……。
「分かった……」
「ふふ……ありがとう裕樹。“いつもみたいに”いっぱい気持ちよくなろうね♪」
相川は瞳を乗っ取った矢田の指示によって全裸の状態でベッドに仰向けになると、瞳は跨るように相川の股間にその可愛らしいお尻を乗せた。
「おっきくしてあげるね」
制服を着たままの彼女は両手を相川の腹に添えるとパンツの上からちょうど割れ目の位置が擦れるように腰を前後させ、ペニスを刺激し始めた。
「んっ、んっ、んっ、このカラダは軽くて動かしやすいね……んはっ……先生みたいにおっぱい大きくないからかな?んんっ……!でもすごい、よっ….パンツの上からでも、感じる……あっ……♡ 今、大きくなったね♡ パンツで擦られて気持ちいいんだ。裕樹は変態さんだね♪でも羨ましくはないかな。だって、私の方が何倍も気持ちいいんだもん♪ あっ!あはぁん♪ 今クリに当たったよ?分かった?ぷくっと盛り上がって敏感なところが潰れて……んあんっ♪ そう、今のっ、そこ……!あんんんっ!あふわっあ……♪」
刺激を受けて肥大化するペニスによって瞳の秘所も刺激を返されゾクゾクと快感が背中を走る。擦れるたびに程よく肉付きの良い太ももとお尻が震え、吐息交じりに熱のこもった嬌声が漏れる。気が付けば下着はカウパーと愛液によってぐっしょり濡れていた。
「はっ、はっ、はっ……はあっ!!あはぁ……♪もうアソコがぐっしょり……このカラダきもちよすぎるよ……♪んんっ……!んああ~っ♡」
「う、うう……瞳……」
目の前にいるのが自分の恋人ではことは分かっている。だが股間に与えられる甘い刺激と耳に届く嬌声が否応なしに興奮を高めていく。
「裕樹、パンツ……脱ぐね……」
膝立ちになると腰ひもに指を通し、ゆっくりと太ももをくぐらせて膝まで降ろすと僅かに毛が生えたアソコが露わになった。ひくひくと震える割れ目からは粘り気を持った液体がとめどなく分泌され、降ろしたパンツからヌラヌラと糸を引いている。
「あは~っ、みて……糸ひいちゃってるよ……私のカラダ、完全にスイッチ入っちゃってる……はぁ……はぁ……アソコがきゅんって疼くの……早く入れたい、ぶちこみたいって私の頭をいっぱいにしてくるの……」
完全にパンツを脱ぎ、蕩け切った顔をしながら告白するとそれだけで身体の熱が高まり心臓の脈動が強くなる。頭のなかは女体を手に入れた男の興奮と性欲で埋め尽くされていた。
「はーっ、はーっ、もうダメ……ふうう゛ーっ……我慢、できない……裕樹、いれるよ。いれちゃうよ……!」
「おい、ひと……」
理性を失いかけた彼女を落ち着かせる前に股間にズドンと衝撃が走った。
「うっ……!」
「あううぅぁぁああああ~~っ!♡♡ あ、ああ~~っ♡ っはぁっ……!はあっ……!はいったぁ♡」
背中を大きく反らせ身体中を震え上がるほどの快楽が脳を直撃する。そのあまりにも強烈な刺激に腰を抜かしてしまいそうになる。
「ひあっ……やあぁ……かふっ……へあぁっ……入れただけでイッちゃった……♪ うっ……くひぃ……足に、力が入らないぃ……」
「う……ううっ……」
「裕樹もイッちゃいそう?だめだよ。私まだ満足してない……ほら、頑張って腰を動かして」
制服のブレザーとブラウスを脱ぐと手慣れた手つきでブラジャーのホックを外す。パチンという音とともに重力でブラジャーがはらりと落ち、彼女の程よい大きさの胸と先ほどまでの興奮によってピンと摘まんで欲しそうに勃起した乳首があらわれた。スカートだけを残して全裸になった彼女はアソコにペニスを入れたまま上半身を倒すと相川に覆いかぶさり胸を擦りつけながら耳元でふうっと息を吹きかけながらつぶやいた。
「私をきもちよく、して…...?んっ、ぁっ......♪」
「っ……!!」
乳首が擦れる快感で瞳が小さく喘いだ。その甘い声が相川の頭のなかで響き渡る。
彼のなかで何かが切れる音がした。瞳の腰をがっちりと掴み、自分の腰を大きく引くと激しくストロークを繰り返し始めた。
「あっ、んっ……あっ、ああっ……くっ、んっ……あ、あぁん……ひぁあっっ!そう……!そう!それでいいの!このカラダを気持ちよくして!裕樹の手で心を開かせて!んあああっ!ひゃあああっ!」
「瞳、瞳っ!!」
「あっっ、ああッ! あっあっ、あっッ、ああっ!イイよ!もう少しっ、もう少しで心に届くっ……!んひいいぃっ♪」
歯を食いしばりながら涎を垂らす瞳は身も心も完全に快楽の虜になっていた。膣を突かれるたびに絶頂し、休む暇もなくそれが重なり続け、より大きな絶頂を生むという無限のサイクルを繰り返す。そのあまりにも強力なエクスタシーの連続に彼女の心の一番奥の壁が崩れ落ちようとした。本来ならばどれほど悦楽を得ても突き崩せない強固な心の防衛ライン。だが愛する相川から許容量を越える悦びを与えられることで肉体が無意識のうちに突破口を作ってしまうのだ。
『彼』にとって唯一の突破口を――
「あんんんっ!あんっっあっううぅ!イクッ!イクゥッ!あっ!あっ!ダメッ!!裕樹ダメッ!!いやぁっ!ゆうきやめっ……♪いやだっ!!ゆうき、ゆうき、ゆうきぃ!!」
手のひら一杯に胸を揉みしだき、乳首で指を挟んで摘まみながら腰を上下させて身悶える彼女は突然拒絶の言葉を発し始めた。それとは対照的に理性はとうに捨て、蕩け切った笑顔を浮かべて髪を激しく揺らす彼女は嫌がるどころか最高の絶頂を得ようとしているように見える。果たしてこれが彼女に取り憑いた矢田の趣味なのか。それとも……
「あ、あっ……ダメ、気持ちいい、あぁ、おかしくなる……おかしくなっちゃうっ、いやぁ♡ ゆうきぃ……いやだよぉ、あっ!ああっ!あああんっ!♡ いっ、イク、イッちゃうっ♡ 私イク、イクぅっ!!♡」
「うっ……!瞳……出るっ!」
直後、腰を、子宮の奥を限界まで突き上げられ熱を持った何かが放たれる。絶大な快楽が身体中を駆け巡り、頭が真っ白になるほどの絶頂とともに彼女の心の障壁が消滅した。
(くくく……今だ!)
「あっあっ、あっッ、ああっ! あああああ~~っ♪ あッあッあアァアアアッ!!♡♡ あ、ああ…….ぁ……ぇ……♡ っ……♡」
アソコから大量の愛液とともに潮を吹き、部屋中に淫らな匂いが立ち込める。瞳は限界を越えた絶頂を迎えたあとも断続的に痙攣を繰り返し、全身を脱力させて「ぁ……♡ぁ……♡」失神してもなお小さく喘いでいた。
「はぁ、はぁ、これで全部終わり……」
「ええ、相川君。あなたのおかげで終わったわ」
事を済ませ安堵していた相川だったが、突如邪悪な笑みを浮かべた詩織が水をさした。いつのまにか目を覚ましていた西森も同じ顔で笑っている。
「俺のおかげってどういう……」
「ああああああっ!!!」
聞く前に瞳が頭を抱えて苦しみだした。危険なくらいに身体が震え、目からは涙が溢れ出す。
「お、おい!瞳どうした!?瞳っ!しっかりしろ!!」
「うがああああっ!!ゆうきぃ!あっあっあっ!ゆう……アッ……♪あっあっああああっ!か、かずや!かずやかずやかずや、かずやあああああっ!!!♡ んひいぃぃっ♪うっああああ゛あ゛っ゛!!♡♡」
彼女のものとは思えない絶叫。だが不思議なことに苦しんでいたはずの瞳が、最後は喜んでいるように聞こえた。自分の名を呼んでいたはずが嬌声とともに矢田のものに書き換わり、まるで二度目の絶頂を迎えたかのように声を上げた。そして一筋の涙を流すとそのまま意識を再び失ったのかガクッとうなだれてしまった。相川は慌てて抱きかかえる。
「瞳!!おい!瞳!!!」
肩を揺さぶって声をかけるも反応がない。だが代わりに別の人物が目覚めた。
「気持ちよかったぜ相川。そのオンナのカラダ本当に最高だな」
「矢田ぁ!!瞳に何をしたぁ!!」
「それは本人に聞いたらいいんじゃないか?くくく……」
「な、なんだと……!?ふざけるのも大概に……」
「うっ……」
瞳とつながったまま矢田を問い詰めようとした相川だったが、抱えていた瞳がうめき声を上げた。意識を取り戻したようだ。
「瞳!!大丈夫か!?」
「うう……ん……」
瞳が顔を上げその目が相川の顔を捉える。状況が掴めないのか自分の身体を見下ろしふたりが繋がっているのに気付いた。その瞬間――
「ひっ!いやああああっ!!!!」
おぞましいものを見たかのように顔を引き攣らせ、逃げるようにベッドから飛び退いた。身体をわなわなと震わせその場に座り込む。
「ど、どうしたんだよ瞳……」
「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!何で私あんたのことなんて好きだったの?ありえない……意味が分からない……どうかしてた……寒気がする……」
軽蔑する相手に投げかけるような言葉を相川にぶつける。瞳は心の底から彼のことを拒絶していた。
「ちょっと待てよ……俺は……」
「こっちに来るな!!あんたのことなんて大っ嫌い!!どっか行って!!私に近寄らないで!!」
「な、なっ……」
急速に血の気が引いていく。相川の頭のなかには嫌な考えがよぎっていた。まさか、まさか……!
「ははははっ!いくらなんでもそれはないだろ。仮にもお前の彼氏だぜ?瞳」
「あ……」
瞳が声をかけられた方を向く。そしてそこにいる人物を捉える。
「か、和也ぁ♡」
その嫌悪に満ちた表情が喜びに変わった。全裸のまま駆け寄り矢田を抱きしめる。
「おいおい、がっつくなよ」
「和也、和也ぁ♡ 私、やっと気付いたの。こんな男よりあなたの方がずっと素敵だって。あなたのことが大好きなんだって!何で今までそんなことも分からなかったのかしら……まるで魔法みたい」
「くく、くはははっ!そうだな!ある意味魔法だな!あはははっ!これでお前も俺のものだ。精いっぱい俺に尽くせよ?」
「はい♪私、和也の彼女……ううん、違う。性奴隷として和也のためだけに生きるね!ああ、なんて幸せなの……♪」
その場で呆然としている相川は涙を流しながら問いかけた。
「まさか……瞳は……」
「そうだ。俺が心を書き換えた。確かに俺の力だけじゃどうにもできなかった。だが、瞳が愛していたお前の手で心を開かせ、開ききった隙にお前への愛を俺に塗り替えれば……矢田君大好き瞳チャンの出来上がりってわけだ」
「はぁい♪山吹瞳は矢田和也を永遠に愛します……♪」
両手を顔に添え幸せそうに瞳が赤くなる。明らかに演技ではない。
「心からお前に感謝するぜ、相川。お前のおかげで瞳は俺のものになった。こんな淫乱でスケベなカラダを持った奴隷ができて俺は幸せだぜ。今すぐにまた乗り移りたいくらいだ」
「和也が望むなら私、いくらでもカラダを差し出すよ。私で一杯気持ちよくなって欲しいな……えへへ」
かつては自分の向けられていた笑顔が、今は矢田へと向けられている。その事実が己を絶望させ、目の前を真っ暗にしていく。もう、何も見えない。
「ああ……ああ…….」
崩れ落ちる相川に矢田は今までとは打って変わって優しく肩をたたいた。
「安心しろ。これで終わりだ。お前にはもう何もしない。俺も鬼じゃねえからこのあとはお前に乗り移って嫌な記憶は消してやるよ。家族もすぐに返す。この3人はもらっていくがそれ以外は元通りにしてやる。だから安心して眠れ」
言われるがままに意識を手放す。彼の精神はとうに限界を迎えていた。彼が最後に見たのは、自分を見下したように笑う矢田と、その後ろで邪悪な笑みを浮かべる3人の美女たちだった。
「じゃあね、裕樹」
いつもと変わらない放課後。相川裕樹はひとりで帰っていた。普段と変わらない帰り道のはずなのに何かが抜け落ちたかのように心にぽっかり穴が開いた気がする。自分の隣に誰かがいたはずだったような……だがそれも気のせいだろう。今まで高校生活で“誰かと一緒に帰ったことはない”のだから。
自分を納得させ家への帰路を辿っていると反対方向から女の子が走ってくる。こっちに向かってきているようだ。だがその顔に覚えはない。不思議に思っていると彼女はスピードを抑えることなくそのまままっすぐ走ってくる。このままではぶつかってしまう。
「おい、あぶな……」
言いかけた瞬間、彼女はぶつかる寸前に霧となって消えてしまった。
(裕樹っ!)
誰かが自分を呼んだ気がした。だが振り返っても誰もいない。
「え、この年になって幻聴と幻覚はまずくないか?ついに俺も狂ったかもな、ははは」
軽く笑い飛ばす相川だったがその目から大量の涙が溢れていた。悲しいことなど何もないはずなのにいつまでたって止まらない。
「ど、どうしちまったんだ俺……何で泣いて……」
悲しくはない。それなのにその涙は、彼が家に着くまで止まることはなかった。
終
可もなく不可もない
ただしもやっとした感じは残らない不思議な終わり方だった