2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

【憑依モノ祭り8日目】全てが”俺”に染まる未来の話

作者:笹座早々


 踏みつけた蔦の山が大きく弾んで、靴底へ反動を送り返す。歩いていると蔓が絡んで邪魔そうで、ミーシャは徒歩での捜索を早々と辞めることにした。
 周囲の建造物へと絡み根を張るべく、一帯の植物はより強く、弾力に富んだ成長を遂げている。それでも、彼女が脚力強化を掛けて再度踏みつければ、それは足からの力で容易に裂けてしまう。一踏みであまりにもあっさり奥まで貫通してしまったせいで、飛び跳ねるはずの体はそのまま膝あたりまで蔦に埋まってしまった。
 彼女は顔をしかめた。周囲へ目を向けると、十数から数十ぐらい階層に分かれた建造物が、巨大化した玩具のブロックのように視線の先までずっと並んでいる。そのほとんどは草と蔓に覆われ、あるいは壁を破るように生える幹や蔦に飲み込まれていた。一部の建造物が根本から倒れ、ドミノの始まりを切り取ったように隣の建造物にもたれかかるか、あるいは道路だったであろう草の道に寝そべっている。

「ご先祖様ってきっと馬鹿だったのね」

 ビル群と呼ばれる旧人類の遺跡を見て、ミーシャは心底そう思った。
 核兵器どころか、たかが脚力強化にすら耐えられないような植物に負ける建造物。そんなものを広大な土地に並べて果たして何がしたかったのか、理解できなかった。

『ビル群についての詳細、送ります?』
「いらない、充電を無駄に減らしたくない」
『そのぐらい自然発電で十分補充されると思いますけど』
「別に大昔のことなんて興味ないわ。夜は太陽光がない分遅いんだから、節約しましょう」
『了解です』

 周囲に、空に、足元に。視線をさまよわせていたミーシャの脳内チップへ、本部オペレーターであるルナの声が届く。
 彼女はすぐその提案に否を返した。
 実際、光源を用意せずに視力強化と暗視のみで周囲を見ているのもエネルギー節約がひとつの理由で、更に最初は徒歩で探索しようと思ったのも同様だった。
 考古学系のデータを適当にダウンロードすれば詳細が分かるかもしれないが、知る必要も特にない。重要度が低く壊しても問題ない遺跡であることは確認が取れている。
 周囲の詳細なマップデータさえあれば、任務達成には十分だ。そんな判断も、彼女の中にはあった。
 足元に絡みつく蔦を蹴飛ばした彼女は、仕方なくナノマシンで頑丈な足場を形成するとそれを踏みつけ、今度こそ旧人類の摩天楼の上へ飛ぶように跳躍した。

 大気圏に膨大な量のナノマシンが散布されたのは、曽曽曽曽曽曽、ミーシャが数えるのも面倒臭くなるぐらい頭に曽が付く祖父母が生きていた頃の話だった。
 そのままならただそこにあるだけのナノマシンは、外部からエネルギーを受け取ることで与えられた命令を実行し、事象を生み出す。なにもない空間に壁を、あるいは光や炎を作り出し、人体の限界を容易く超えるレベルに行動を補助する。
 当初は車よりも大きかったエネルギー生成装置が小型化し、最終的に小さなチップ程度のサイズで人間の脳に埋め込まれるようになったのは、ちょうどミーシャの曽曽祖父母が死んだ頃の話だ。
 一人の意思によってエネルギーが発生し、散布されたナノマシンが人智の結晶たる結果を生み出す。それは人智でありながら、人智を超えて常識を書き換えるに等しい。
 人類は、科学で"魔法"を生み出したのだ。

 空高くへと跳ね上がったミーシャは、そこに生み出した透明な足場の上で、ゆっくりと夜影にそびえ立つ遺跡を見やっていた。
 絹糸のような彼女の長髪が風に吹かれる。夜闇の中で影にほとんどを塗りつぶされたそれは、しかし本来の鮮やかな紅色を全ては失わず、焚火の終わりのような黒紅色を空ではためかせる。
 彼女は目に入りそうなそれを鬱陶しそうにかき上げると、持っていたゴムで適当に括った。

「本当にこんな遺跡に潜伏してるのかしら?」
『この地域で目撃情報がある、とは』
「それもそこそこ前だけどね」

 エネルギーチップを脳に埋め込んだ人間であれば、基本的に誰でもナノマシンを使用することができる。今日日埋め込み手術の失敗率はほぼゼロに等しく、ナノマシンの使用は人の営みに必要不可欠だ。
 だからこそナノマシンに大きな危害を加える行為は重大な犯罪になる。ナノマシン不正使用取締官ミーシャ・ライルズの今回の任務のターゲットも、そんなナノマシン不正使用容疑者の一人であった。
 眼下に広がる遺跡は周囲が森で囲まれており、狩猟さえできれば潜伏には悪くない立地だ。けれど、森の方では感知できる生物の熱源反応が遺跡内からは見受けられない。
 遺跡をぐるりと囲む大きな壁のせいで遺跡内に動物はほぼ立ち入れないため、その差はナノマシンで熱源を探査してみれば一目瞭然だった。たまに見つけても、夜行性の小さな鳥ぐらいだ。

「ハズレならハズレでさっさと帰れていいんだけど」
『早く帰って何するんですか? 確かミーシャ、こないだフられ』
「今やることできた。帰ったらルナをぶん殴る」
『ふ、振られた仕事が、残ってますよね』
「誤魔化すならせめてつっかえないで言いなさい」

 誤魔化しではないです、聞いてますか、と騒ぎ立てる声がやかましくて、ミーシャは脳内通話の音量を半分まで下げる。
 これはとっとと帰ってやらねば。そう思ったミーシャはしかし、最後に残った遺跡の一画を見て、息を詰まらせた。

「あそこ。気になるかも」
『ん? 特に大きな熱源反応はありませんけど』

 ルナの言う通り、そこは無機質な冷たい色だけが表示される、これまでと変わらない一画に過ぎない。
 ミーシャは首を振ってそんな言葉を否定した後、無言で足場を作って走り出した。今見た一画の上空へ。周囲より背の低い建造物が並ぶその区画は、他区画と比べれば異なった作りになっている。
 そんな中で、彼女はひとつの建造物のドアを指さした。

「陽が当たりやすい場所なのに、あのドア周辺だけ道に伸びる蔦が他と比べて短いし細いわ。ちょっと調べる。防御命令維持のサポート、しっかりお願いね」
『了解です』

 それは、何者かによって手が加えられた痕跡だった。
 熱源こそ一切感知することができなかったが、もし今人間がいなかったにしても調べてみる価値はあるはずだ。取締官としていくつかの功績を持つミーシャの嗅覚がそう告げていた。直感に逆らわず、ミーシャはゆっくりと、再び静かな遺跡へ降り立った。
 ドアを開けた先には、植物に侵食されながらも確かに旧文明の残り香があった。とうに立体投影に取って代わられた超旧型の巨大な液晶モニターの後ろから、大きな幹が生えている。床には朽ちた蔦と葉が、土に還れない虚しさを表すように薄く積もっていた。

 周囲を見渡してみれば、ご丁寧に落ち葉がどかされて奥へと道のようになっている。高く筋の通った鼻がひくひくと動く。死臭や、その他の異臭は感じられない。一応足音を立てないように一歩一歩、ミーシャは全神経を研ぎ澄ましながらゆっくり奥へと進んでゆく。
 道なりに進めば、目の前に電子ロックのかけられた扉が現れた。

「熱源反応確認、反響定位、もう少し五感強化。うん、大丈夫だよね、せーのっ」
『そ、そんな乱暴な!』

 その扉を、彼女はキックで吹き飛ばした。電子ロックの解除なんて、時間の無駄だ。
 部屋の中は、あまりにも殺風景だった。
 植物の侵食が及ばなかった部屋なのか、ここまでと違って枯草の類は入口付近にしか落ちていない。向かい側の壁に、今しがた蹴り飛ばした扉がひしゃげてぶつかって、そのまま風を起こしながら倒れる。旧時代的な紙が大量に散らばって、ぱらぱらと床に落ちた。

「え、もしかしてこれ持って帰らなきゃいけない?」
『当然。一応撮影して送信もよろしくお願いしますね』

 旧時代的、とは言うが、書類は一応今の時代も現役だ。物理的なデータを残しておいた方が良いものだって、当然ながら存在する。紙が脆く劣化していない点を見るに、最近この中に何者かがいたというのは確かな情報だ。
 そうなれば、書類で残しておかなければならない情報が何なのかは、重要になりえる。めんどくさ、と呟いて、ミーシャは部屋の状態を撮影して、データを脳内で転送する。
 次に、はらはらと舞い落ちた書類を取るため、床に座り込む。

 そして、そのまま彼女は床にその豊かな尻をぺたんと付けると、壁に寄りかかって大きく股を開いた。

「……あれ?」
『いやちょっと、何してるんですかミーシャ』

 脳内にルナの困惑した声が届く。
 自分でもなんでそんな体勢になったのか分からず、ミーシャは首を傾げた。書類を拾って、纏めないと。前方へと手を伸ばす。床の方へ持って行った手の平を降ろす。
 そして彼女はそのまま、自身のスーツの中へと、もぞもぞと右手を潜り込ませた。

「ん、あんっ♡ って、なんで? あっ」
『あの、そういうのはできれば接続が切れた状態で、後任務外でやっていただけると……んんっ』

 潜り込ませた手が、急に自身の秘所の縁をなぞる。慌てて止めようと左手を右手に伸ばすと、今度は途中あたりで止まって、そのままシャツの第三ボタンをぷちぷちと開く。
 急にミーシャの意思を離れた両手は、暗闇の中で、彼女の二つの性感帯を勝手に弄り始めた。

『ミーシャ。――て――すか? あ、んっ♡』
「いや、その、私何でこんな……ひゃっ♡」

 ぎゅ、と、彼女の豊満な胸の先端が強く摘ままれて、ミーシャは思わず声を出した。
 その快感の波は、手足が動かないという異常事態であることを差し引いても、いや異常事態であるからこそ、ミーシャにとってわけのわからない快感だった。
 ほんの少ししか触れていないはずなのに、既に出来上がった体のような痺れが乳首からもたらされる。くっつけた背中が不意に浮いてしまうぐらいの快感が、勝手に動く親指と人差し指から、こり、こりと続けて送られてきた。
 そのたびに、ミーシャの喉から生娘のような声が上がる。さっきまで一応小声程度のトーンで話していたのに、今のミーシャの口からは自然と最大のボリュームで声が出てしまっていた。

『ミー――。……さい。ちょ――……シャ!』
「ん、はっ♡ え、何、聞こえないわよ!」

 それと反比例するように、脳内のルナからの声が途切れ途切れになってゆく。
 ミーシャの手は、その断片的な音に合わせるように手を動かし始めた。もぞもぞと秘所の輪郭をなぞっていた指が、だんだんと勃ってきた豆をつまむ。それだけでミーシャの身体がびくびくと震える。
 必死で呼び掛けるルナの声の欠片が、わざと合わさるミーシャの喘ぎ声のせいでかき消されてゆく。

『――っ! ……、……! え、あ、ああ――♡ ……』
「んあ、ひゃん! あ、んん、きゃぅっ♡」

 それが危機的な状況であることは、ミーシャ本人も理解していた。
 自分の身体が勝手に動く理由は一切不明だが、どうにか現状の打破を考えなければいけない。快感で思考が飛びそうになる頭をクリアにすべく、ミーシャはナノマシンに二つの命令を下すことにした。
 触覚の鈍化と、思考の鋭敏化だ。
 無音声でのナノマシンへの命令は、いくらか使用に集中していないと行うことができない。捜査官としてある程度危機的な状況でも行動できるよう訓練されているミーシャでも、突然の状況で、しかも連続で送られてくる快感の中でそれを行うのは困難だ。
 喘ぎで途切れる息を無理矢理吸い込む。ミーシャはオナニーを続けながら声を張り上げた。

「しょ、触覚"鋭敏化"っ!」

 大気圏内に大量に存在するナノマシンは、呼吸をすれば当然体内にも巡る。体内ナノマシンへ命令されて肺の中で炎でも出されれば人は即死なので、そうならないよう、体内ナノマシンは本人以外の命令を受け付けないようになっている。
 逆に言えば。

「な、なんで、あ、ひゃあああああっ!」

 ミーシャ本人が命令を行なった以上、彼女の体内にあるナノマシンは忠実に命令を実行する。それが、本人の意思とは真逆の命令であったとしても。
 強制的に敏感になった彼女の肌を、強制的に動かされる彼女の手が攻め上げた。高まった快感に、彼女の下の口からとろりと蜜が溢れ出てくる。まるでそれを確認するかのように右手がもぞもぞ動くと、そのまま水音を立てて、膣内に指が潜り込む。
 壁にもたれかかっているのも大変になって、ミーシャは床にばたんと倒れ込んだ。
 手どころか、足までもぞもぞと勝手に動く。器用に両足が交互に曲げられて、そのまま下半身が下着だけになってゆく。手が動かない以上、彼女にそれを止める手段はない。
 状況を整理する必要があった。
 自分は任務の最中のはずだ、と、ミーシャは痺れるような刺激の中でどうにか考えた。そう、この旧時代の遺跡で、ナノマシン不正利用犯罪者を見つけに来る任務。

「見つ、けて。そう、もうすぐ"俺"がっ、ひゃ、ここにぃ、来るから、んんっ! それまでにし、っかり、あん♡」

 バラバラになっていた思考が一つの塊として纏まっていくような感覚を、ようやくミーシャは覚えた。快感と快感の波の間で、どうにかミーシャは自分が今どうするべきなのかを定めることができた。

「そう、しっかり私は、"俺"と接続して"俺"にならないとっ! ん、にゃ♡」
『――シャ。ミーシャ、聞こえ、ます、か!?』

 ミーシャの中で目標が定まったと同時、ようやくルナとの通話が復活する。
 ふと気が付くと、勝手に体を弄くり回していた手が、ゆったりとした動きになっていた。触覚を鋭敏化しているせいで未だに小刻みな快感を送ってくるが、それでも耐えようと思えばぼんやりとは思考が回せる程度に。

「聞こ、える。方針は、うん、大丈夫っ! あひっ! ルナ、ごめん、指示をお願いっ!」
『分かりました! それでは――』

 ゆるゆると動いていた手が、ようやく止まる。ミーシャの意思にしばらく逆らい続けた手足がどうにか動かせることをミーシャは悟った。
 危機的な状況は脱しつつあると、ミーシャは確信できた。通信がしっかり繋がっていれば、遠隔である程度ルナの側からナノマシンを操作してもらうことができるし、ひとまず彼女の指示に従えば思考力を大きく割かないで済む。ミーシャは彼女の命令に従うべきだと、正気になった頭でなぜかそう思った。

『こっちはミーシャの送ってくれたデータのおかげで一足早く"俺"になった。お前もオナニー再開しつつさっさと"俺"になれ』
「うん! 分かった、ぁあん♡」

 そして、再びぐちゅんと、しかし今度は自分の意思で、行為を再開した。
 絶頂で飛び飛びになる意識の隙間に、『"俺"』の存在が浸透してゆく。しかしミーシャには、そうなるべしという自身で立てた目標と、そうなれというルナからの指示がある。染まっていくことにはもう何の抵抗感もない。
 ナノマシンに脳を掌握してもらって、しっかり"俺"にならなければいけない。
 さっきまで自分が手を動かそうとしていたという事実すら、もう彼女の頭の中から消え失せていた。寝転がったまま大股で足を開く。入口に向かって見せつけるようにしておいた方がいいと、頭の片隅で思ったからだ。

「ミーシャ・ライルズ、後一回絶頂したら多分"俺"になりまぁす♡」
『後三分ぐらいで到着するから早くしろよ。"思考鈍化"』
「はぁーい。あ、んひゃっ」

 遠隔で命令を受けたミーシャは、複雑な思考を放棄した。
 ただ快感に身を任せることこそが全てだ、と感情が切り替わる。それに身を任せて、ミーシャは思いきり自身の胸を揉みしだいた。より鋭く明確に、刺激が全身へと広がる。ぐちゅりという水音が彼女の下半身から響いて、小さな部屋の中で反響した。
 なんとか喋ろうとしていた彼女の声が、あ、う、と意味をどんどん失ってゆく。快楽の隙間に、別物の思考が刻まれる。思考が刻まれるたびに、達成感でミーシャは更に声を張り上げる。
 かき混ぜるように、膣内の指がぐるんと回った。
 腰が浮いて、呼吸が止まる。ミーシャの過去の自慰の中でも一番気持ちいいという確信が彼女の中にあった。ナカをかき混ぜるように指が動いたかと思うと、指がもう一本更に挿入される。
 オナニーの終焉は、すぐだった。

「あ、これもう、イ、イきそうっ。ん、あ、イ、ああっ。私、い、イくっ!」

 ミーシャの全身が痙攣する。

「ん、ひゃ、奪っ、た、ぁ……♡」

 密壺から愛液が蕩け出て、彼女の下着を濡らす。その光景を彼女は、絶頂の余韻冷めやらぬままに、しばらくぼーっとしたまま見ていた。それは、同じ建造物の中をこつこつと歩いてくる足音が聞こえても、変わらない。
 扉が吹き飛ばされた部屋の入口に、誰かがやってくる。ミーシャは上半身を起き上がらせると、足を大きく開いた姿のまま、にやりと笑う。

「……よし。この体もオペレーターの身体も、しっかり"俺"と思考・感覚が共有できてる。完璧だ」

 ミーシャの口からミーシャの声で、そんな言葉が語り掛けられる。

「ナノマシンを介して思考を強制的に奪い取る――大成功だな」

 入口に立った男はそれに対してこくんと頷くと、ミーシャと全く同じ表情で表情をあくどい笑顔に歪めて、そう続けた。
 そして、寝転がって下半身を露出したままのミーシャの身体を見据え、ぺろりと舌なめずりをする。彼女の身体は完全に雌として出来上がっていて、荒い息と相まって湯気でも出そうなくらいに上気していた。
 何も言わず、男はその場に寝そべる。そしてミーシャの身体も何も言わずに起き上がると、男の下半身の服を脱がせて、そこからイチモツを取り出す。

「ん゛、あーあー……それじゃ、準備始めます」

 直後に、火照った息を出す彼女の口が、男の分身を包み込んだ。

 ■

「うえ、自分の性器の味なんて知りたくねぇ"味覚シャットアウト"。ついでに"この2人以外から五感を受信しないことにして、自動で生活を続けるように指定"。ま、これでいいか」

 長年不可侵領域であったナノマシンをウイルスによって改竄し、他人の脳に強制介入できるよう体内ナノマシンにバックドアを仕掛け、思考を自分主体で勝手に共有する。男の研究はそういうものだった。
 ナノマシンの改竄、ましてや破壊する危険性すらあるウイルスの作成は企てるだけでも重罪になる。それに加えて、実験のために一般人が協力してくれるわけもないので、人さらい紛いの様々なことにも彼は手を出していた。
 一度捕まれば、どれだけ良くても数年以内に死罪が確定する所業だ。それでも、他人の思考を自分の支配下に置けるという魅力に負けて、男は逃亡生活を続けながら実験を繰り返していた。
 そしてその成果が今、彼の目の前にあった。

「ん、ちゅ、れろ……」

 自身のものを、本来自分を追う立場のはずの取締官が丹念に舐めしゃぶっている。その事実だけで、男のソコは簡単に勃起し始めていた。
 わざとこの遺跡に潜伏しているという情報を長し、汚染済みのナノマシンで溢れた施設に取締官を誘い込む。ナノマシン頼りの操作をしているからこそ、汚染されて、男の命令以外を受け付けないナノマシンに対しては脆い。施設に入って以降は探知命令も防御命令も一切が無視されていたことに、ミーシャは恐らく気付いてすらいなかったであろう。
 そして、一度誘い込んで体内ナノマシンが汚染できる状況を作ってしまえば、後は組織間のデータ共有で勝手に汚染が広がり、国家組織の人間は一人残らず男の思考の下で生きていくことになる。理論が正しければ、そうなっていた。

「ん、ちゅぷっ、じゅる……ぷは。へへ、これで準備万端だな」

 ミーシャの美貌が好色に歪む。強気で勝気ないつもの彼女とは似ても似つかないとろけた笑みが、彼女の本来の意思を無視して作り出される。続けて、すぅ、と彼女の瞳が閉じられると、その口元が更にあくどく歪んだ。
 彼女の持っているあらゆる個人連絡先にウイルスデータの送信が終わったのを、意識を共有している全員が理解した。ミーシャの体が男のモノを勃てるためだけに使われている間に、ほんの片手間で、彼女の知り合い達も男の手に堕ちることが決まったのだ。
 男の頭の中に、新たに奪い取った意識がいくつも流入してくる。見たことすらない他人の人生を奪い取った興奮は、性的快感と合わさって、彼の怒張を更に滾らせた。

 男はミーシャの身体をひとつ頷かせると、その身に纏っていた服を全て脱がせる。腰をくねらせ、手で太ももをなぞるように触らせて、彼女の体を見つめながら彼女の敏感になった肌の感覚を共に感じていた。

「さて。名誉ある犠牲取締官第一号として、私の身体を捧げさせていただきまーす♡」
『犠牲オペレーター第一号として、再度オナニーで性感サポートさせていただきます♡』

 続けて、最初に奪い取った二人の口で、媚びるような言葉を紡がせる。
 それは男自身が言わせているに過ぎないけれど、語る口調は女性達のものだ。自分の操作で彼女達をいかようにもできるという実感が、一挙手一投足のたびにどんどん増してゆく。
 男は、その場に座り込むだけでよかった。
 そのままミーシャの身体を勝手に動かして、自分の服のボタンをぷちぷちと丁寧に外させた。互いが裸になった所で、自分の貧弱気味な胸板に、彼女のやわらかな乳を押し付けさせる。そのまま彼女に抱き着かせて肌をこすり合わせると、潰れた彼女の乳首から痺れるような快感が二人の身体に共有された。

「それじゃあ、挿入しまぁす。ん、は、あぁ!」

 照準を、二つの身体でうまく合わせる。棒と穴が直線の上に来た、その瞬間一気に彼女の身体に腰を落とさせる。
 完全に火照り上がった彼女の穴から、ずちゅ、と大きな水音が漏れた。

『こちらも始めますね。あ、ん、ひゃあん』
「ひゃ、ん、ふ、んんっ!」
「っ、ぐっ!」

 頭の中と部屋の中で、同時に嬌声が響き渡る。
 ミーシャの腕が男をかき抱く力を強めた。筋肉に力を込めないとすぐまた絶頂してしまうのが、今のたった一突きで分かったからだ。
 けれども、体に力を込めれば同時に、男性器への締め付けも強くなる。さっきより密着した状態で二突き目を行うと、一突き目より強烈な快感が男を襲った。

「ん、ひゃんっ!」
「くっ、は、ははは!」

 自分の手足の一つと同じように女の身体を勝手に動かせる。快感に体を震わせながら、男は思わず笑い声を上げた。
 この快楽一つだけ取っても、ウイルスを開発した意味は大いにあると思うことができた。研究の息抜きに何度かセックスをしたことはあっても、女側の快感を受け取るのは初めてだ。

「ん、あっ、"膣内蠢動"っ、んぐっ♡」
「ぐあ、こ、これはすご、い……!」
「あ、ああっ、ん、あんっ!」
『あ、ちょっと、そんな快感っ! あ、ひゃあっ!』

 女の口でナノマシンに命令させると、結合部がまるで生き物のようにうねうねと動き始める。膣壁と肉棒が不規則にこすれて、結合してる二人の思考でもっても分からない不意の気持ちよさが、何度も訪れる。
 ミーシャの、そして通話越しのルナの口からも勝手に嬌声が漏れる。快楽に喘ぐ声は、男の口ではなんとなく我慢しているけれど、辱めている女の身体の方には我慢させていない。
 ほんの数分のうちに、結合部は二人の性器から溢れる液でぐっちょりと濡れていた。

 それは遠くで同時にオナニーをしているルナも、そして思考介入のウイルスデータを送り付けられた二人の知り合いも全く一緒だった。自分になった別の相手からの五感受信をシャットアウトした男は、しかし自分からの五感送信はシャットアウトしていない。

『あ、んん、は、ダメだ、た、垂れるっ』

 自身の担当を終え帰路についていたミーシャの同僚の女性が、快感のせいでぽたぽたと愛液マーキングを振りまきながら、舗装された道を歩いている。

『ん、ふ、ふぅ、ふぅ、ふ、ん、はぁっ』
『あ、……、くぅっ』

 ルナの周囲にいた何人ものオペレーターが、ルナのオナニーに中てられながら、送られてくる快感に抗い切れず自身も次々と同様の行為を始めている。ルナの視線を通して見ると、立体投影コンピュータの前に座って、確かに男女構わず仕事を放り出して一人遊びに耽っていた。
 生まれ変わって"俺"のものになった人間達の思考が、次々に男へと伝わってくる。数十人、数百人。ミーシャと男の一人遊びに等しい性交の影響は、ねずみ講式に増えてゆく。その彼彼女ら全員が、一方的な快感を受けて絶頂へと近付いていた。
 全員がウイルスに汚染されて、全部が男のもの。意識を強く込めればその相手を完全に奪うこともできるし、命令を下して人形のように遂行させることだってできる。
 それは、男の研究が、完全に成就した瞬間だった。

 こみ上がる達成感を、男は今は目の前にいるミーシャの身体にぶつけ切ることに決めた。
 ミーシャ一人に任せていたセックスで自分からも腰を動かす。より深く女性器の奥に突き刺さると、喘ぐミーシャの声が今度は逆にストップした。そして、自然と身体が後ろにのけぞる。

「あ、は――ひゅっ……」

 彼女の身体がそのまま倒れてしまうを、男も止めることができなかった。腹の奥から脳へ電撃のように走る痺れが強烈な快感だと気付くのに、数秒掛かった。
 どさりとミーシャの身体が仰向けになって、ようやく意識が戻ってくる。
 男とミーシャ、二人の視線がぶつかり合う。荒ぶった呼吸の感覚までぴったりのまま、見開いたような目が、交差する。そして――二つの身体は同時に「最高だ」と呟く。

 ぐちゅんと、再び勢いよく肉槍が突き刺さる。

「んあ、ひゃああああっ!」
「んぐ、ああああっ!」
『ふああああっ!?』

 そして、男自身の身体でも、声を抑えるのをやめた。
 ウイルスにナノマシンを汚染された人々は、呼吸を繰り返すうちに汚染されたナノマシンを体外へすら広げていく。もう歯止めは効かない。
 欲望を満たすのに我慢をする必要はない。もう、全てが思うままになることは決まり切っている。
 男とミーシャの動きがシンクロして、ピストンがどんどん激しくなっていく。頭の中で増え続ける声が、同じ快感を叩きつけられて悶える。彼は、自分の中の高まりが、その声によってもどんどんボルテージを上げていくことに気付いていた。奪い取って支配するという感情こそが自分を動かしていることに。
 高まった感情が、獣欲になって、ミーシャの身体へと襲い掛かる。

「あ、い、良いよっ! 私は"俺"だもん、好きに使って!」

 ミーシャ自身の口から、許可のサインを言わせる。
 ピストンのたびに大きく揺れる胸を、腰を手で掴んでいる男の代わりにミーシャ自身に揉ませる。頭の中で、ミーシャの近くにいた仕事仲間に、ミーシャの乳首を弄らせる。男の思うままに全部が動いて、快感を押し上げてくる。
 全部が重なってなお数秒でも耐えられたのは、奇跡的だった。

「ぐあ、あ、だ、出すぞ!」
「くあ、ひゃ、だ、出してぇっ♡ あ、ああーーーーぁっ!!」

 最後にひとつ、腰を強く打ち付ける。
 未だナノマシンで蠢くミーシャの膣内に、白濁が勢いよく吐き出された。
 それに引き続いて男の脳内で、あらゆる自分以外の"俺"の嬌声が響き渡る。
 その声すら、脳髄に響く刺激となって――続けて男は、残りを振り絞るように、精液をミーシャの身体へと出し切った。

 竿を引き抜いた膣内から、こぽ、と音を立てて、子種が流れ出てきた。

 ■

「ん、ひゃっ、あ、あっ、あん!」

 ナノマシン犯罪の対策本部に、女性の喘ぎ声が大音量で響いていた。
 ナノマシンが密接に生活と関わっている現代において、それを利用した犯罪への対応は必須だ。機密が多い分セキュリティも万全であり、なおかつ核兵器を食らっても傷の一つも付かない。一般人が入り込むなんて到底不可能な、一種の城塞といえた。

 そう、言えたのだ、昨日までは。

 今そこには、大勢の女性とたった一人の男だけがいた。女性達は歳もまばらで、まだ成人していないであろう年の少女もいる。唯一の共通点といえば、全員が美女か、あるいは美少女に該当する顔立ちという点だった。
 そんな女性達は全員服を身に着けておらず、またほとんどが棒立ちのままだ。そんな中でたった二人、ミーシャとルナの二人だけが、動いていた。
 そこにいる唯一の男に、性奉仕を行うために。

「あんなに憎かったこの部署も、こうなっちまえばマヌケだな。ただのそういう施設みたいだ」
「あっ、当たり前ですっ、だって、みーんな"俺"になっ、ちゃったんですもん! んんっ!」

 バックの姿勢で突かれながら、男はルナの口にそう喋らせる。
 思考を奪い取った相手自身の口に屈服の言葉を紡がせるのは、何度やっても男に興奮をもたらした。
 一番最初の被害者と言えるルナを攻めつつ、男は自分の肩に乗っている球体を揉みしだく。後ろから、昨日も散々弄った相手の「やん」という声がする。

 全部、自分のものだ。
 男がにんまりと笑うと――それにつられて、並んでいる女性達も同じように笑顔になった。
[ 2020/12/12 18:00 ] 憑依モノ祭り(憑依ラヴァーver.) | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

憑依好きの人

Author:憑依好きの人
●憑依TSF・洗脳・悪堕ち・融合など支配欲が満たされるシチュを中心に創作活動しています。
●English OK
R-18注意です。
18歳未満の方はブラウザバックをお願いします。

当ブログはリンクフリーです。
当ブログに掲載されている文章や画像の無断転載は禁止とさせていただいております。

●憑依ラヴァー関連リンク
twitter: twitter.com/hyoui_lover
pixiv: http://goo.gl/nVzoa3
DLsite: bit.ly/30BXKEg
FANZA: bit.ly/2udCaK5
Fanbox: bit.ly/39qW1G8