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【憑依モノ祭り6日目】別人になる香水(女の幸せ編)

作者:ひのるんっ



 

 ◇


「あぁん……ふぁ、あれ? なんで私、ハダカなの?」
「覚えてない? いつものオナニー見せてもらって見抜きさせてもらったんだよ」
「そうだっけ? んふふ、しっかりイケたのかな?」
「ああ、おかげさまで」

 アンタの身体で、時間いっぱいな。
 嬢は不思議そうな顔をしつつ立ち上がったが、体力を消費しすぎたせいかフラフラしている。

「……とと。なんだが異様に疲れたわ」
「激しいオナニーをありがとう」
「もうっ! じゃ、また機会があればよろしくねー」

 嬢はテキパキと服を整えると、何事もなかったかのように去っていった。
 ……実はその身体で、片手では足りなくなるほどイカせてもらったのだが。

 嬢の背中を見送りつつ、スマホに追加されたコレクションを確認する。
 我ながらいい角度の自撮りだ。
 しばらくオカズには困らないことだろう。
 なんたって愛液が染み込んだショーツも、オプション料金が必要なエロ撮りもタダでトり放題だからな。



 あの香水を手に入れてからというもの、俺の性活はかなり充実していた。
 仕事終わりにホテヘルを呼んでは憑依し、彼女たちのカラダで時間までしっぽりと楽しむ。
 そしてすぐに次の嬢を呼んでは同じことの繰り返しだ。
 オプションはつけなくてもやりたい放題なので、金額がそこまで高くなることもない。

 俺の身体が動くわけでもないので、体力の心配もしなくていい。
 それどころか、俺のことは見抜きだけしてくれる男として評判になっているらしい。

 そんな話を聞いたら、もう他の店なんて選べない。
 レベルの高い嬢も優先して俺を選んでくれるし、来てくれる嬢もニコニコでこちらも気分がいい。
 嬢も助かるし俺も助かる。
 まさにwin-winの関係というやつだ。

 しばらくそんな性活を続けていた頃、香水の残りが半分以下になっていることに気づいた。

「もう残りはこれだけか。あれから露天も出てないしな」

 こんな貴重な香水を手放すのは惜しい。
 しかし、あれから何度も足を運んでいるのに、あの老婆がいる露天を見かけることはなかった。
 苦肉の策で一回だけ薄めて使ってみたものの、予想通りというか全く効果はなかった。

「ま、あと数ヶ月は持つだろう」

 逆に言えば、あと数ヶ月しか女体の快楽を味わえない。
 いっそのことずっと女体でいられたらなぁ、と思いつつ、俺の意識はゆっくりと眠りへ落ちていった。


 ◇


「なあお前、なんか薬とか持ってないか?」

 仕事中、今日はどの娘と遊ぼうかと考えていたら、仲の良い同僚に話しかけられた。
 最近はコスプレしての自撮りにも飽きてきた頃だ。
 女体でのひとりエッチだけが楽しみだが、そろそろ変わったことにも挑戦したい。

「おい、聞こえてるのか?」
「悪い悪い。薬? どうかしたのか」
「ちょっと体調が悪くてな」

 こいつには普段から世話になっている。
 確かカバンの中に、今朝買った栄養ドリンクが入っていたはずだ。

「ちょっと待ってろ……あ」

 デスクの電話がプルル、と鳴り出す。
 そういえば俺が抱えている案件が折返しかかってくる手はずだった。

「すまん、電話が終わってからでいいか?」
「ああ。こっちは勝手にやっておくよ」

 同僚はそのまま席を離れていく。
 夜のお楽しみのためにも、いまは資金を稼がないとな。
 だがしかし、俺はこのときの選択を猛烈に後悔する。



 帰宅時、カバンを覗くと今朝買ったはずの栄養ドリンクが残っていた。
 アイツが飲み干したはずだが、なんでまだ残ってるんだ?

「おい、空き瓶をいれるなよ。俺のカバンはゴミ箱じゃねえぞ」
「ん? ちゃんと回収したぞ。ほら」

 彼が見せたのは、ポーションのような小瓶で――。
 俺にとっては、栄養ドリンクのビンより見覚えのあるものだ。

「おい……まさか」

 震える手で、カバンから栄養ドリンクを取り出す。
 蓋もあいていない。
 あきらかに新品だ。
 そして彼の持っている小瓶。
 あれは怪しげな老婆から買った、香水の――。

「てめぇ!!」

 気づいたときには、同僚の胸ぐらを掴んでいた。
 殴り飛ばしたい。
 だが、それは社会人としてダメだ。

「お、おい。なにそんな怒ってるんだ」
「それは……その小瓶はっ!」

 ビンの中身を言うわけにはいかない。
 だが、俺にとっては何よりも大切なモノだったのは間違いない。

「どうして……どうしてソレを飲んだんだ!」
「そ、そんな大事なものだったのか。悪かったよ、間違えて」
「てめぇ、テメェ……ッ!」

 プッシュ式ではなく量が出るフラコンタイプだったのが仇となった。
 自分のミスでもあるが故に、強く怒れないのがもどかしい。

「すまん。ポーションのビンだからてっきり……」

 まだ体調が悪そうな同僚を解放し、立ち去り際に彼の肩を強く掴む。

「次回から、気をつけろ」
「あ、ああ。悪かったな……弁償するから店と値段教えてくれ」
「いいや。もう、手に入らないんだ」
「そうか……それは本当に悪かった」

 同僚は土下座でもしそうな勢いで謝ってきたが、俺にはもう彼の言葉は届かなかった。


 ◇


 次の日は仕事なんて行く気になれなかった。
 仮病で休むのは初めてだ。
 もうあの快感が得られないと思うと、アイツのことはいつまでも許せそうにない。

「ま、元から夢みたいな時間だったしな」

 わずかな可能性を求めて露天の場所に行ったが、そう都合よく出ているはずもなかった。
 気晴らしに男のオナニーをしてみたが、これじゃ物足りなくてモヤモヤする。
 それどころか、俺が憑依していた女の自撮りをオカズにしていたせいで、女体でしか解消できない疼きが余計に溜まっていくようだ。

「忘れるしかないか……」

 あれは奇跡の体験だった。
 そう思わないと、いつまで経っても同僚を許せそうにない。

 自然と俺は、あの日と同じように酒を求めていた。
 ムシャクシャした気分を消し去るためではなく、この身体では解消できない疼きから気をそらすために。

 そしてきっと、明日になれば。
 また変わらない日常が訪れると信じて。


 ◇


「おら、早くしゃぶれ」
「え? ――んぶぶぅ!!」

 気がつくと俺は、口いっぱいに何か固くて巨大なモノを頬張っていた。
 息が苦しい。
 それに、口の中が生暖かい棒で占領されて気持ち悪い。

「もっと舌を使えって」
「ふぇ? ん、んん――ッ!!」

 上からかけられる声に顔をあげようとすると、鼻先にジョリジョリとした感触があった。
 くすぐったい。
 それに加えて、顔をしかめたくなるほど濃厚な男臭さが鼻をつく。

「んぶ、んぶぅ!」

 そして口の中。
 舌で飴玉を転がすように探り、口をすぼめて形状を把握する。
 認めたくはない。
 だが、この状況。
 まさか俺は、男のチンコをしゃぶっているのか!?

「よし、口がすぼまってきたな。いい感じだ」
「ん! んんー! んぅぅうッ!?」

 てめぇ何様のつもりだ!
 声にならない抗議をしながら視線だけ上げる。
 そこには、いやらしい笑みを浮かべ、それでいて見慣れた顔の男が俺を見下していた。

「んん゛ッ!?」

 コイツ、さっきまで怒りをぶつけたくて仕方なかった同僚ではないか?
 だとすると、俺はどうして……。

「どうした、上目遣いで見上げて。もっと激しくシてほしいのか?」
「んっ! んぐっ、んぶぅぅぅッ!!」
「横じゃねえよ、前後に動け。こんな風に――な!」
「んっ!? ん゛んーッ!!」

 後頭部をつかまれ、まるでオナホを扱うかのごとく激しく前後に揺さぶられる。
 俺はどうして男性器なんてしゃぶっている?
 一緒に風俗も行ったことのあるコイツはゲイだったのか?
 ダメだ。
 この状況についていけず、思考がまとまらない。

「ほら、お前も濡れてきたんじゃないか?」
「んぶ!?」

 濡れる。
 それは最近になって経験した感覚だが、男には感じられない感覚。

 でも、女としての生活に慣れてきたからわかる。
 俺はいま、確実に濡れてしまっている。
 けど、どうして?
 疑問に思ったが、そんな思考も口の中に突っ込まれた状況じゃまとまらない。
 それに、口の中が余計に苦しくなった気もする。
 まさかペニスが膨張して――――。

「そろそろだすぞ! 飲み込め!」
「んん、ん゛! んぐぅ、んんーッッ!!」

 逃げ出したい。
 しかし頭はがっしりと掴まれ、振りほどきたくてもビクともしない。
 そしてこれがラストスパートというかのごとく、いっそう頭が激しく揺さぶられる。

「んぶぅ! ん、むぐ、んぐぐッ!!」
「うっ……」
「んんッ!! ん、ん、ん~~~~ッッ!!」

 どろりと熱を持った精液が、勢いよく喉奥めがけて発射される。
 粘ついた液体が喉に絡みつき、満足に呼吸ができない。
 舌触りなんて最悪だし、吐き出したいのに頭を掴まれているせいでそれもできない。

「ん、んー!」
「ほら、ちゃんと嚥下しろ」
「んぐ、ん~~ッ!!」

 首をイヤイヤ振って拒絶したが、あろうことかコイツは俺の鼻をつまんできやがった。
 呼吸ができず、口はペニスに占領されているせいで息ができない。
 この苦しさから解放されたい。
 でもそのためには、コイツが射精したドリンクを飲み込むしかない。
 ……俺に、選択肢はない。

「ん、ごくっ、んぶ、ごくっ!」
「よし、いい娘だ」

 ネバついたそれを、何度かむせ返りながらも飲みこんでいく。
 気持ち悪い。
 だけど、これも肺に空気を取り込むため。
 口に溜まっていた精液を全て飲み干した頃合いで、ようやく口と鼻が解放された。

「けほ、けほっ! はぁ、はぁ……! て、てめぇ!」

 同時に新鮮な空気を吸い込むが、精液のニオイも一緒に吸い込んでしまいむせてしまう。
 くそっ、息を吸うたびに肺の奥まで入り込んできやがる。

「よし、お掃除フェラも頼む。オプションでつけただろう?」
「オプ……ション?」

 聞き慣れたその言葉。
 違和感はそれだけじゃない。
 ようやく解放された身体を、おそるおそる見下ろす。
 そこには巨乳といえるほど突き出た胸に、キュッと引き締まったウエスト。
 そして股に相棒の姿はなく、かわりにひっそりとした茂みが存在するだけだった。

「おれ、また女になってる?」
「何言ってるんだ? ほら」
「うっ……」

 精液が付着したままの男性器を突きつけられ、思わず噛みちぎってやりたい衝動に襲われる。
 どうして憑依できたのか。
 この女は誰なのか。
 目の前にコイツがいるのはどうしてか。

 疑問は尽きないが、落ち着いて思考するためにも目の前のことを終わらせなくては。
 そうしないと、いつまで経っても自由にできない。

「あの、オプション。なかったことにはできないか?」
「何言ってるんだ? それ込みでのフェラ料金だろ」
「うっ……」

 この女の事は知らないが、どうやらやらないといけないらしい。
 しかし、自分から咥えるのには抵抗がある。
 漂ってくる男臭さもそうだが、間近で見るとチンコってこんなにおっきいのか?

「ほら、やってくれ」
「あ、ああ…………うぐ。れろっ、れろろっ」

 また頭を掴まれたらたまらない。
 俺はそそりたつ肉棒に吸い寄せられるように舌を伸ばす。

「はむっ、んふ、れろっ、ちゅるるッ」

 裏筋を刺激するように、唾液を絡ませてきれいに舐め取る。
 ときに咥え、吸い付き、尿道に残った精液を吸い取るように淫靡に。
 フェラをするなんて初めてのことなのに、この身体が勝手に動く。
 もしかしたらこの女は、フェラに慣れてる女なのかもしれない。

 やがて唾液が十分に行き終わった後、口からペニスを吐き出す。
 俺の唾液でテカった男根がなんとも艶めかしい。
 フェラで完全にキレイになるわけではないが、この行為自体が男を興奮させる材料なのはよく知っている。

「ちゅぱ、れろっ、んふ、ちゅるる……ふぅ。これでいいか?」
「ああ。じゃあ次は……」
「ちょ、ちょっと待て!」

 時計を見ると、俺がこの女になってから15分が経過している。
 もし今の状況が香水の効果だとすると、残り15分で元の身体に戻れるはずだ。
 コイツには俺が戻った後にこの女の身体と楽しんでもらいたい。

「しゃ、シャワーを浴びたいの。いいか?」
「さっきも浴びたのにか?」

 見ると、近くにはバスローブが落ちている。
 俺がこの身体になったときは最初から全裸だったので気がつかなかったな。
 だが、男とヤるなんて展開はゴメンだ。

「う、うん。その代わり……この後たっぷり、サービスするから♪」
「そうか。期待して待ってるぞ」

 同僚は背を向け、さっさと行けというように手を動かす。
 チョロい。
 男がサービスって言葉に弱いのは証明できたな。
 しかしこれで、ようやく女の身体を堪能できる。

 バスルームに駆け込むと、まずは全身を洗い流すようにシャワーを浴びる。
 そうして蛇口をひねろうとしたとき、天井から冷たい雫が落ちてきた。

「ひゃん!?」

 水滴が肌をたたきに、思わず声が出てしまった。
 冷たい雫は敏感な肌には厳禁だな。
 今の刺激で、股間も少し濡らしてしまった。
 気を取り直して、シャワーが谷間に吸い込まれる様子と、身体のラインに合わせて流れ落ちる水を堪能する。

「ついでに口もゆすごう……うぇぇえ……」

 まさか俺が精液を飲む羽目になるとは思わなかった。
 いくらうがいしても口に残っている感じがするが、残り10分ほどの辛抱だ。
 これくらいは我慢しよう。
 あらためて風呂の鏡に、いまの俺の姿を映しだしてみる。

「この女、結構な巨乳だな……」

 俺が行く店にはいないタイプの美人さんだ。
 スタイルが良く、大きく突き出た胸はかなりの重量感がある。
 ウエストはキュッとひきしまっているのに、ヒップのラインは後ろに突き出た安産型。
 まさに子を産むためにいるような女性だ。
 指名料もさぞお高いことだろう。

 このままいつまでも眺めていたくなるが、残念なことに時間は限られている。

「残りはじっくりと……あんっ! よし、感度も良好と」

 喘ぎ声が部屋まで聞こえてしまうかもしれないが、アイツが乱入してこなければ問題ない。
 あとはシャワーを胸に当て、ジンジンとする快感のうねりを堪能する。
 当てる強弱を調整できるので、胸の先端に当たる温水が気持ち良い。

「ふわぁぁ……おぉ?」

 視界の先にあったのは、中心に大きな溝がある風呂イスだ。
 どうやらプレイのための風呂イスも完備されてるらしい。
 そのイスに座り、下からそっとシャワーを差し込んでみる。
 女の子のお股には魔物が潜んでいるため、ゆっくりとだ。

「あ、あふぁッ、ああぁあああぁぁぁああぁあッ!!!」

 それでも、ひときわ大きな声がでてイッてしまう。
 ヤバイ。
 シャワオナは試していなかったが、この快感はケタ違いだ。

「あっ、ああっ!!」

 まだイッている最中だと言うのに、お腹のあたりもムズムズとしてきた。
 どうやらこの女は尿意も我慢してたらしい。
 俺が溜めた水分でもないのに、この女の溜めていたオシッコはもはや限界が近い。
 それにイッたおかげで筋肉が弛緩してしまい、もう我慢できそうになかった。

「んっ、このまま、ぁん♡ ここでッ!」

 幸いにもここは風呂場だ。
 汚しても問題はないだろう。

「んふ、ぁ、あぁ……♪」

 決断してからは早かった。
 我慢することは考えず、股に意識を集中させて出すことだけを考える。

「ふわぁあ~~~~♡♡」

 ちょろろろろ、とシャワーとは別の温水が浴室に広がっていく。
 イッた余韻も収まらぬまま、女の子としてはじめての放尿。
 鼻をつくような酸っぱさも、自分から出た女の子の尿と思えば気にならない。

 股間のヒダを刺激しながら溢れてくる水流に、またすぐにイッてしまいそうになる。
 放尿の心地よさは男女変わらないらしいが、イッた直後の女の身体では感じすぎてしまうな。

 ようやくオシッコが収まってきたら、今度は風呂場のウォシュレットで洗い流す。
 キレイにするためにも、股は開いたほうがいいだろう。
 ガニ股気味にした股間に、出しっぱなしだったシャワーの水流を当てる。
 しかし、イッて敏感になったままの女体を舐めていた。

「あっ、あはぁん♡ ぁ、あ♪ あああああ~~んッ!!」
「どうした! 何かあったのか!」

 また盛大に喘いで絶頂したとき、風呂場に飛び込んでくる男が見えた。
 大きく股を広げてシャワオナしてるイキ顔を見られたが、どうせ俺の身体じゃないんだ。
 宣言通りサービスしてやったんだ。
 せいぜいオカズにするといい。
 イキながら遠くなっていく意識で時計を見ると、もう憑依が切れる頃合いの時間だった。


 ◇


「すご……かったな」

 もう少しイッたままの余韻に浸っていたかったが、効果が切れたのなら仕方ない。
 どうして憑依したのかはわからないが、またあの快感を味わえたのは僥倖だった。

「けど、なんでだ?」

 香水はアイツに飲み干され、もう残量はゼロだ。
 唯一の手がかりであるカードを見ると、そこに書いてあった一文が妙にひっかかった。

 ・絶対に飲み込まないでください。

「普通の注意事項かと思ったが、まさか……」

 アイツが香水を飲んだ。
 そして俺が、アイツとヤる前の女に憑依した。
 状況はどうだったか?
 目の前にペニスがあり、フェラする瞬間――。
 恐ろしい予想が浮かんでくる。
 つまり俺は、アイツの匂いを嗅いだ女に憑依しちまうということか?

「くそっ、これがあるからいけないんだよな」

 アイツが香水を飲んだせいで、アイツのニオイを嗅いだ女性に憑依してしまう。
 なら、俺ができる対策としては残されたカードしかない。
 しかし気になるのは、もう一つの注意事項。

 ・このカードは、肌身放さずお持ちください。

 このカードをなくしたら、いったい何が起こるのか。
 いくら想像してもわからないが、考えても仕方ない。
 俺は女体の快楽と決別するかのごとく、そのカードをシュレッターにかけた。

「じゃあな」

 女体の快楽を得られるのは嬉しいが、男にヤられるのだけは勘弁だ。
 そうしてカードがシュレッターに全て飲み込まれたとき、俺の意識はフッと途切れた。


 ◇


「――え?」
「じゃ、舐めてくれ」

 気がつくと、目の前に男の股ぐらがあった。
 いきなりの状況に理解が追いつかない。
 カードは処分したはずだが、どうして真下に男のペニスがあるんだ?

「挿入は厳禁っていうから、シックスナインだろ。風呂場でオナニーするほど欲求不満だったんだな」
「ち、ちがっ!」
「今度は気持ちよくさせてやる」
「あんっ!」

 女性器を舐められ、あげたくもない嬌声がでてしまう。
 その快感で身体から力が抜け、下にいた男に覆いかぶさってしまう。
 おっぱいが潰される感覚を、まさか女の立場で知ることになろうとは。

「俺のモノも舐めてくれよ」

 男のペニスを舐めるのは抵抗がある。
 しかし、さっきの続きだとしたら2回めだ。
 サービスすると言ってしまった手前、イヤイヤもできない。
 そうして葛藤している間にも、男は俺のおまんこを舐めてくる。

「ぁんっ♡ ちょ、まって、あぁん♡♡」
「ほら、動けって」

 下半身から伝わってくる快感に思考が侵食されていく。
 むわっとむせかえるような、濃厚なオスのニオイ。
 それを嗅ぐたび、頭がクラクラとしてくる。

「どうして、ぁ♡ なん、なんぁッ♡♡ あぅぅ!!」

 ダメだ。
 状況を把握したいが、おまんこを舐められると途端に快楽で塗りつぶされてしまう。
 拒否したい。
 だが、おまんこを人質に取られている状況じゃ逃げ出すこともできない。

「あんっ♡ ちょ、はぁん♡ まっ、んぅ♡♡ まって!」
「ほら、胸も使ってシてくれ」

 客から注文が入る。
 さっきの余韻が残ってるため、この身体を動かすのも一苦労だ。
 このままクタクタになって快楽に溺れたい。
 だが、気持ちよくなるためにはこのペニスも気持ちよくさせる必要がある。

「んっ……れろっ、ちゅぷ、ちゅぱ」
「いいぞ、その調子だ」
「あんっ! ちょ、はげし……はあぁん♡」

 俺がペニスを舐めると、お返しにとおまんこを舐められる。
 対等な応酬に思えるが、その快楽は男の比ではない。

 こちらがひと舐めしただけで、男の数倍の快楽に襲われる。
 盛大に喘いでペニスがこぼれてしまうが、こんなの我慢できるわけがない。
 ペニスも気持ちよくさせなければいけない。
 だが、おまんこへの刺激が強すぎて激しく喘いでしまう。

「れろっ、んぁぁ♡♡ ぅ、もう、はぁん♡ ダメぇ……ッ!!」
「おいおい。俺はまだイけないぞ?」
「あぁん♡ お願いぃ……先に、さきにイカせてくれぇ♡♡」

 早くこの疼きから解放されたい。
 もう男だったことも忘れ、気持ちよくなることしか考えれない。
 その一心で、まるで娼婦のように懇願してしまっている。

「ちっ、この淫乱娘が!」

 パァン!

「あぁんッ♡♡」

 丸出しだったケツを叩かれ、モノを咥えようとすぼめた口は大きく喘いでしまう。
 こんなの耐えられるわけがない。

「あふぁ!! あん♡ あん♡ あぁぁん♡♡」

 叩かれるたび、腰がガクガクと言うことをきかない。
 男に叩かれて濡らしてしまうなんて、もう淫乱だということを否定できない。
 いつしか俺はペニスを舐めることも忘れ、もっともっととせがむようにケツを動かしていた。

「どうした。人が変わったように淫乱じゃないか」
「そんなの、ふぁ!? しらな……はぁぁん♡♡」

 動こうとすれば、おまんこの表面をザラザラとした舌が撫で上げる。
 その快感が気持ちよくて、このまま絶頂まで導いて欲しくなる。

 そうして何度腰をくねらせていただろうか。
 あともう少しでイケるというところで、男の舌先はどこか遠くへと離れてしまう。

「ぁ……」
「ほら、俺のも舐めてくれよ」
「無理ぃ……むりぃぃ♡♡」
「そんなんじゃいつまで経ってもイケないぞ?」
「いやぁ…………じゅるっ、れろっ、ちゅぴ、じゅるるっ」

 歯止めなんて効かない。
 もう自分が何をシているのかも忘れ、快感を求めるためだけに目の前の棒を咥える。
 おまんこをぴちゃぴちゃされると喘いでしまうが、口を離すとその気持ち良さも中断されてしまう。

「あむっ、れろっ、んく、ちゅるるるっ」
「いいぞ。こっちもどんどん溢れてくるな。そんなに気持ちいいのか?」
「あん! はぁん♡ ふぇ? ん、あぁぁあん♡♡」

 割れ目の中に舌が侵入してくる。
 股間からとめどなくエッチなお汁が溢れてしまう。
 ヤツの口元は俺の愛液でビチョビチョになっていることだろう。

 時間をかけて、目の前のペニスをゆっくりと舐め回す。
 すぐにでもイキたい。
 でも、この気持ちよさも永遠と味わっていたい。

「ほら、そろそろイケよ。ん、れろっ」
「ふぁ!? ん、あぁぁ! あはぁあぁぁああんッ!!」

 ひときわ強く撫でられる。
 割れ目全体をなぞっていった刺激は、もうヒクヒクと熟した女性器を導くのに十分だったらしい。

「イクうぅぅぅ!!」

 全身に電流が走ったような快楽に襲われ、くたりと脱力して倒れ込んでしまう。
 顔に押し付けられたペニスも、押しつぶされて横に広がったおっぱいも気にならない。
 ただただ、いつまでもこの快楽に浸っていたい。
 そう思って余韻を堪能していたのに、この男はそれでは不満だったらしい。

「んっ、じゃ、俺のモノも吸ってくれ」
「ふぁ、はぁ……はぁん。れろ、ちゅる、じゅるるる」

 何を言われたのかわかんない。
 けど、目の前にあるこの棒を吸わないと。
 それは女としての本能だったのかもしれない。

「じゅる、じゅるるるるっ、んぁ! ひゃぁああん♡♡」

 まだ絶頂の余韻に浸りながら咥えていたところ、ペニスから勢いよく精液が迸る。
 コイツがイクのは2回めだというのに、どろりとした白濁液は俺の顔を染めるように汚していく。

「あはぁ……んっ♡」

 前髪に絡みつき、顔の上から下へと垂れていく精液。
 最初は不快感しかなかったこのニオイも、今ではちょっと心地よい。

「じゃ、掃除も頼むな」
「ふぁい……れろっ、んく、ちゅぱ、はむっ♡」

 このときはまだ、顔射された不快感よりも快楽への渇望が勝っていた。
 綺麗に舐めあげ、賢者タイムに入った男を横目に余韻をあますことなく堪能する。
 そのまましばらく快楽に溺れていたが、ようやく洗面台に走った頃には残り5分を切っていた。



「ちくしょう……いっぱい出しやがって」

 ゴシゴシとこすり、精液を塗りたくるように洗い流す。
 すぐ戻る身体だとしても、この不快感は早く逃れたい。

「にしても、この女。おっぱいもデカいし、結構カワイイな」

 顔に付着した水分を拭き取り、顔の輪郭を確かめるようにこの女体を堪能する。
 アイツにはキスの前にうがいをしてくるといってあるので、邪魔されることもないだろう。

「あと1分。胸揉んでいればすぐだな」

 鏡に映しながら、自身の手によって自由自在に変形するおっぱいを堪能する。
 できればもっとイジりたいが、そんなことをしたらあと数秒で男の身体に戻るのが嫌になってしまう。

 おっぱいをグニグニとしながら、意識が遠くなっていく瞬間を待つ。
 しかし今回はいつまで経ってもその瞬間が訪れない。

「……あれ、戻っていない?」

 制限時間の30分はとうに過ぎている。
 それから数分待っても変わらない。
 どういうことだ?

 部屋に戻ると、相変わらずハダカのままの同僚がベッドにいた。

「遅かったな。じゃ、キスしようぜ」
「ごめん。このままじゃおっぱいが潰れちゃうから……」
「いいだろ。触らせてくれよ」
「服だけ着させて。それで脱がしながら、ね?」

 苦し紛れの言い訳をしたが、同僚も俺の演技で納得したらしい。
 チョロいと思うが、俺も男だったからよくわかる。
 服を脱がしながら行うエッチもよいものだ。
 ブラをつけるのはもう慣れてきた。
 女の衣服についても同様だ。

「おまたせ」
「着てからしたいだなんて、可愛いところもあるじゃないか。じゃ、キスしようぜ」
「えと、ごめんなさい。今日はもう帰らせて」
「あ?」

 焦らしたキスを拒否した結果になるが、男とキスするなんてゴメンだ。
 それよりもどうして戻れていないかが気になる。
 詰め寄ってくる同僚を押し留め、今度は絶対にするという約束をしてお茶を濁す。

「ごめんなさい! 今日の料金はいらないから!」
「おい、ちょっと待てよ!」

 逃げるようにして部屋から飛び出す。
 同僚は追いかけてきそうだったが、さすがに裸の状態では諦めざるを得ないだろう。
 安心しろ。
 お預けのキスは、きっとこの身体の持ち主がしてくれるはずさ。



 ホテルから出ると、俺がよく知っている場所だ。
 ここからならあの路地裏も近い。

「……にしても、なんか視線を感じるな」

 街行く男たちが俺を見ているのを感じる。
 主に、俺の大きく突き出た胸の部分を。
 この女は服の上からでもわかる巨乳だ。
 少し身じろぎするだけでも胸がたわむし、歩くだけでぷるんぷるんと胸が揺れてしまう。
 ブラで支えられてるとはいえ、慣れないヒールの靴で歩いているせいかもしれない。

 男どもの視線に晒されながら、ようやくたどり着いた路地裏。
 俺が男のときにどれだけ探しても見つからなかった老婆は、さも当然のようにそこにいた。

「おい」
「……………………」

 耳が遠いのか、老婆はこっちを見向きもしない。
 俺はさらに近づき、老婆の目の前へと進み出る。

「聞こえてんだろ、老婆てめぇ!! あんっ♡」

 老婆に詰め寄ろうとしたとき、何者かに後ろからおっぱいを鷲掴みされた。
 途端に力が抜けてしまい、そのまま誰かに抱かれるようにしなだれかかってしまう。

「んぁぁ♡ なんだいきな――――あぁん♡♡」
「こんな路地裏に上玉がいるじゃねぇか」
「あっ♡ いまはそれどこじゃ――はぁん♡ ぁ、やめっ――んぅッ♡♡」

 力強い腕でホールドされ、どうやっても振りほどくことができない。
 それどころか胸を揉まれるたび、さっき同僚にイカされた快感が蘇ってくるようだ。

「おい聞け! 俺はおとこ――――」

 くちゅり。

「あぁぁあん♡♡」
「へへっ、どこが男だって? 準備万端じゃないか」

 やばい、襲われる!
 すがるように老婆のいたほうへ視線を向けると、そこは最初から誰もいなかったように閑散としていた。

「え? ……あんっ♡ ちょ、やめっ――はぁぁあん♡♡」
「誰もいない路地裏に一人でくるなんて、期待してたんだろ?」
「ちがっ、さっきまで老婆が……ぁ、ぁ♪ ああぁん♡♡」

 下はクチュクチュといじられ、胸は揉まれ刺激され続ける。
 人気のない路地裏に、助けなんてくるはずがない。
 その証拠に、さっきから大きな声で喘いでいるというのに、人ひとり通りがからない。

「ぁ、ぁ♡  ああぁぁああんっ♡♡」
「どうだ? 俺のテクも中々のモンだろう」

 こいつのテクなんて不快なのに、さんざん愛撫されきった身体は嫌になるほど感じてしまう。
 抵抗しようにも、この女の身体じゃろくな抵抗もできない。
 それどころか、胸と股間を触られた状態では逃げようと動くほど感じてしまう。

「んぁ♡ ダメぇ! きちゃう。イキたく、ぁ♪ ない、のに……ッ!」
「ほら、いけよ。もっと指を激しくしてやるから」
「やめっ、んぁああ♪ あんっ、ぁ、あ、あふあぁあっ♡♡」

 指がナカ深くまで侵入し、同時にブラの下からぷっくりと膨らんでしまった乳首を摘まれる。
 無理やりだとしても、そんなことされたら。
 されて、しまったら……♡

「ぁ、ぁ、あああぁあぁああ~~~~!!!!」

 俺はなすがままにイカされてしまい、そこでフッと意識が途切れた。


 ◇


「――ふぇ?」

 次に意識を取り戻したときも女の身体だった。
 理解できたのは他でもない。
 目の前には、もう何度目かになるアイツのハダカ。
 そして鼻先には、はち切れんほどにそそり立った男性器が鎮座している。

「もうトラウマは大丈夫なのか?」
「トラ、ウマ?」

 一体何のことだ?
 視線を下げれば、巨乳好きには堪らないと思える立派な膨らみが2つ。
 というかこの巨乳、前回と同じ女じゃないか?
 時間を見る。
 仕事終わり、大人の夜の時間だ。
 日付は――――。

「え、もう冬なのか?」
「何言ってるんだ。3ヶ月ぶりだからそれくらいだろう」

 嘘だ。
 俺の記憶ではまだ秋頃だったはず。
 しかしカレンダーの日付は、俺が最後に覚えている日から約3ヶ月後を指している。
 いったいどういうことだ?

「えっと、あの。3ヶ月ぶりにヤるのは間違いないか?」
「そうだが。それがどうしたんだ?」

 最後に俺が襲われかけた日から、もう3ヶ月が経過してるらしい。
 だとしたらその間、どうして俺は自分の身体に戻っていないんだ?

「そろそろいいか?」

 ヤツの臨戦状態だったペニスは萎え気味になっている。
 素早く終わらせるためにも、今回は手淫で我慢してもらおう。

 シュッシュッとリズミカルに刺激し、的確にペニスの気持ち良い箇所を刺激していく。
 握り方は強弱をつけ、カリ部分を指で撫でるのも忘れない。
 ……コイツなら、俺の身体を知っているかもしれない。

「えっと、最近会社で連絡がとれなくなった人とかいないか?」
「いきなりどうした? でも……ひとりだけいるな」

 同僚は俺にペニスを握られながらも、ポツポツと語りだした。
 いわく、会社の同僚がひとり亡くなったとのことだ。
 無断欠勤が続き、上司が訪ねたときには既に……らしい。

「そ、そんな――」
「俺が原因かもしれないと思うと、やるせなくてな。どうした?」

 あまりにもショックで、シコシコとする手が止まってしまった。
 俺のカラダは、もうすでに死んだ。
 ということは、俺の魂が戻る場所もない。

「もしかして、君も関わりがあったのか?」
「あ、ああ…………」

 衝撃の事実を知って、目の前が真っ暗になりそうだ。
 だが、俺はこうして記憶を取り戻した。
 まだ何か打つ手はあるはずだ。

 こうしてはいられない。

「ごめん。今日は久々だし、手だけで勘弁して」
「ああ。少しずつ慣らしていこう。俺も協力する」
「ありがとう…………ちゅ♪」

 俺は無意識にキスをしてしまっていた。
 すぐ我に返ったが、こうしている間にも時間は限られている。
 さっさと手淫を終わらせると、揺れる胸も気にせず路地裏へと走る。



 雪の降りそうなほど寒い日だと言うのに、老婆はそこにいた。

「おい!」
「どうなさいました? お嬢さん」
「俺はお嬢さんじゃねぇ!」

 強く主張すると、それに合わせて胸がぷるんと揺れた。
 チクショウ。

「あんたが過去に売っていた香水を買ったものだ。『別人になる香水』てやつをな」
「おや、お客様でしたか。しかしお嬢さんのような可愛らしいお方に売った記憶はございません」
「だから俺は男だ!」

 自分でもわかっている。
 自己主張がはげしい胸を震わせながら言っても、全く説得力がない。
 老婆にはイチから状況を説明し、あの香水の効果や、別のヤツがあれを飲んで以降おかしくなったことを伝える。

「さようですか。お嬢さんは、その戻れなくなった原因が知りたいとのことで」
「だから俺は……ああもう、お嬢さんでいいから教えてくれ!」

 埒が明かない。
 もう否定することも諦めた頃、ようやく老婆はゆっくりと話しだした。

「お嬢さんは、カードを捨てたとおっしゃいました。あのカードは魂の帰還場所となります」
「魂の帰還場所?」
「ええ。なのでそれを捨てられたとなれば、あなたの魂は永遠とさまようことになるでしょう」
「……は?」

 そんなことカードには記載されていなかった。
 まさにそれは、一番に記載しておくことじゃないのか?

「あの香水は、魂の拠り所を作ることができます。効果中は身体に居座れますが、効果が切れると魂はさまよいます」
「おい、それって……」

 最悪の想像が頭をよぎる。
 同時に意識が遠くなっていくのを感じる。
 やばい、もう効果が切れそうだ。

「はい。もうあなたは、彷徨い続けることしかできません」

 ずっと、このまま。
 それは幽霊になってしまったのと、何が違うのだろう。
 俺の意識は老婆の言葉を反復するように、だんだんと深い深い闇の中へ飲まれていった。


 ◇

 エピローグ


「じゃ、今日も頼むよ」
「……っ、ええ。わかったわ」

 もう慣れ親しんだ、この巨乳女の身体。
 ようやく法則性がわかってきたので、そろそろ仕上げに入ろうと思う。

 どうやら俺は、コイツのペニスの匂いを嗅いだ女性に憑依できるらしい。
 この女はコイツのお気に入りらしく、最初は客とスタッフの関係だったのが今では恋人同士だ。

 恋人になった経緯まではわからないが、エッチのたびに俺はこの女になってしまう。
 俺も気持ちよくなるためにサービスしてやっているので、多少は俺の功績もあるはずだ。

 こいつがフェラを求めるたびに憑依してしまうので、この巨乳女は実質俺のカラダみたいなものだ。
 だって俺には、もう戻る身体なんてないのだから。

 しかし、恋人同士になったからには次の計画に移せる。
 その前に一つだけ確認だ。

「今日は顔射で、お・ね・が・い♪」
「エッチのときは人が変わったようになるな。いいぞ」

 この女に憑依できるのは助かるが、問題は時間だ。
 しかもエッチの最中だけなんて短すぎる。

「んふっ、ちゅぴ、じゅる、ちゅぱ、ぺろっ」

 最初は身体任せだったフェラテクも、いまでは俺の得意分野だ。
 もうすぐ射精する。
 俺は最後に強く吸い付くと、口からペニスを吐き出す。
 これで目論見通りなら……。

「きゃん! ぁ、あはぁぁ♡♡」

 顔に熱い精液をかけられ、待ち望んでいたいソレを顔へと塗りたくる。
 肌に練り込むように、そして鼻にこべりつくように広く。

 少し引き気味だった同僚をよそに、俺はシャワールームへと走る。
 アイツが回復するまでオナニーしてくると言ったので、覗かれることはあっても邪魔はされないはずだ。

「んふぅ! あは♡ あぁん……♡♡」

 3回ほどイッたところで、もうすぐ時間になってしまう。
 俺の予想が正しければ、このまま時間になっても――。
 心のなかでカウントダウンを行い、間違いなく時間が過ぎたことを把握する。

「……戻って、ない。ふふふ」

 仮説が実証された。
 最初に戻れなかったのは、ヤツに顔射されたときだ。
 それ以外では30分で戻ってしまう。
 そして憑依するタイミングは、いつもコイツのペニスが目の前にある状況下だ。

 そこから導かれる結論。
 おそらくは精液の匂いを嗅いでいる間は憑依できる。
 男の精液なんて気持ち悪いと思っていたが、いまは俺の意識を繋ぎ止める生命線だ。
 これがないと、俺は永遠に意識を取り戻せない。
 それにコイツが、香水を飲み込んだせいでこうなっているというなら。
 俺が、これからも生き残る方法は――――。

 シャワールームから戻ると、なぜだか恥ずかしがっている同僚の姿があった。
 俺の喘ぎ声で照れているのか?
 可愛いやつめ。
 そんな彼に、抱きつくようにして後ろからのしかかる。

「ねぇ、今日はセックスしよ?」
「店では厳禁だったろ?」
「うふふ、今は恋人同士だしオッケー」

 フェラをして精液を飲み込んだときは、30分で戻ってしまった。
 だがしかし。
 まだ中出しはしてもらったことがない。
 幸いにも今は恋人関係だ。
 女として、はじめてのセックス。
 俺は今から、生きるために女として抱かれる。

「――――きて?」
「いいんだな?」
「うん。あなたの熱いもの、いっぱいナカに注いで♪」
「じゃ、挿れるぞ」
「あはぁぁぁん♡♡」

 彼のピストンは激しく、子宮がコンコンと何度もノックされる。
 このまま、俺の子宮を……。
 赤ちゃんのお部屋を、精液で埋め尽くしてくれたなら。

「ぁ、ぁ♪ あは♡ いく、イクぅぅぅううぅぅう♡♡♡♡」

 熱いものが体内の奥深くに注ぎ込まれる。
 子宮の、女にしかない器官が満たされる感覚。
 女として抱かれてしまった喜びに、全身が幸せな気分に覆われていく。

 できれば、このまま……。
 もうこの身体を、手放したくない。
 そんな想いからか、俺は男の体にしがみつく。
 胸が潰れるほど強く抱きしめ、逃さないようにと両手両足でホールドする。

「えへ、えへぇ♪ もうわたし、ずっとこのままでいい……」
「ああ。愛してるぞ」
「うん。私も……この身体を、アイシテル」

 もう、逃さない。
 手放したりなんて、したくない。
 俺は生きていることを実感するように、いつまでも。
 ただただ、いつまでも抱きついていた。


 ◇


「ほら、ミーコ。落ち着けって」
「えへへ、ママの胸の中きもちいいー」
「もうっ! ミーコは本当にママのお胸が好きねー」

 このおっぱいはいつまで経っても自慢だ。
 妊娠してさらに巨乳になったというのに、形が崩れることもなくキレイな球体を保っている。

「にしても驚いたわ。あなたと結婚してるなんて」
「むしろ俺は、記憶がないのほうが驚きだ。本当に妊娠中のことは覚えていないのか?」
「ええ……ごめんなさい。でも、あなたのことは好きよ」
「ああ、俺もだよ」

 ふたりはそのまま顔を近づけていく。
 だけど、そうはさせない。

「パパはだーめ。ママ、ちゅ♪」
「もうっ、ミーコったら」
「おいミーコ。パパを嫌いにならないでくれ!」

 おそらく、俺がパパを許すことはないだろう。
 だってコイツは、俺から香水を奪っていった元凶なのだから。
 ……でも。

「女児を妊娠させてくれたのには……感謝しなきゃな」
「なんかいったか?」
「んーん? なんでもー」

 今の俺は、幼稚園も通えないような年齢だ。
 発展途上な身体は残念だが、鏡で見る姿は母親似で可愛らしい顔立ちをしている。
 きっと将来、胸も大きくて美人な子に成長するだろう。

「産んだのは俺だし、大人の身体も魅力的だけど……」

 俺はごまかすように、もう一つのボディにある膨らみへ飛び込む。
 この豊満なおっぱい。
 揉まれるのもいいが、揉みしだいて堪能するのも最高だな。

「おっ、ミーコ。手付きがパパみたいにやらしーぞ?」
「パパみたいって。お前は俺がどう触っているのか知らないだろ?」
「そうね、どうしてかしら? いつも記憶がないのよねー」

 そりゃ、俺が毎晩代わりにエッチしてるからな。
 妊娠中はずっとそのボディに居られたが、子供が産まれてからは夜だけになってしまった。
 それも、前のようにペニスのニオイを嗅いだ30分だけ。

「ねぇあなた。今夜、いいかしら?」
「ああ。ミーコが寝た後ならいいぞ」
「えー、ずるい! わたしママを独り占めしたい!」
「もうっ、ミーコったら」

 もう1回妊娠されると、俺がまた妊婦として産まなければならない。
 その身体にずっと居られるのは魅力的だが、妊婦としての経験なんてもうこりごりだ。

「じゃ、ミーコが寝た後……今夜はよろしくな」
「ええ。今夜こそは忘れないんだから」

 ふふ。
 無駄な努力だけど、頑張ってね。
 この身体が成長するまで、しばらくママの身体を使わせてもらうぞ。
 だから。

「ずるーい! わたしもまぜて!」
「ふふっ、ミーコにはまだ早いわよ?」

 俺は夜のボディを舐め回すように見ながら、女児の身体で無邪気にママへ抱きついた。

[ 2020/12/10 18:00 ] 憑依モノ祭り(憑依ラヴァーver.) | TB(-) | CM(0)
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