僕が彼女と知り合ったのは半年前のこと。鎮守府の工廠で開発部長として働く僕は主に艦娘たちが戦うのに必要な装備の開発や修繕、改良に携わってきた。地味で裏方の仕事だが、深海棲艦から人類を守るために必要な人材としてここにいると思うと自分に誇りが持てた。
そんな気持ちを抱いて毎日ほこりまみれになりながら汗水を流していたある日、彼女は工廠にやってきた。
「あの、すみません。艤装の調子が悪くて……こちらで見てもらうことはできますか?」
ちょうど別の艦娘の艤装の修理に取り掛かっていた僕は背後から声をかけられ振り向いた。
「すみません。今立て込んでまして、少々お時間をいただ……け……」
声の主を見た僕は思わず言葉を失ってしまった。
そこにいたのはまさしく絶世の美少女だったからだ。
セーラー服の彼女は背丈からして駆逐艦娘だろうか。しかしその身長に対してあまりにも見事なプロポーションをしていた。透き通るような白い肌に瑞々しくてやわらかそうな腕。その先の両手には白い手袋をはめており気品を漂わせる。スカートから伸びた長い両足は黒タイツに包まれしなやかな脚線美を描いており、思わず撫でまわしたくなるほどだ。
髪は銀髪のショートヘアー。両目を覆う前髪の片側をヘアピンで留め、左目だけのぞかせている。いわゆる目隠れキャラと言えば分かりやすいだろうか。個人的にかなり好みの髪型だ。
そしてやはり何といっても目を見張るのがその豊満な胸。嫌でも注目を集めてしまうであろうその双丘は同じ駆逐艦どころか、戦艦や空母たちにも引けを取らないほど大きくたわわに実っていた。
こういう子をトランジスタグラマーというのだろう。彼女はそう形容するのに余りあるほどの身体付きをしていた。
「あ、あの……お忙しければ他を当たりましょうか?」
突然の沈黙に彼女は少し戸惑ってしまったようだ。彼女の反応ではっと我に返る。
いかんいかん、僕としたことが客である艦娘に見惚れ過ぎていた。これではまるで思春期の男子じゃないか。
今は仕事中だ。しっかりと職務を果たし彼女に応対せねば。
「あ、いやいや!先約があるので少しお時間をいただいてしまうというだけです!今軽く状態を確認してどれほどかかるか想定を立ててみますね」
「あ、お願いします!」
ぺこりと頭を下げる彼女。こんな可愛い子が相手だと俄然やる気が出るってもんだ。
手渡された艤装の中身を開き、異常の有無を確認する。
故障の原因になりやすい箇所を中心にチェックするとだいたいの問題を把握することができた。
「うん、この程度なら明日の朝までに直しておくことができますよ。今日の出撃はもう終わりですか?であればこちらで預かって準備ができ次第修理に取り掛かります」
「本当ですか!?ありがとうございます!はー良かったぁ……明日に間に合わなかったらどうしようかと思ってたんです!今日はもう出撃はないのでぜひお願いしますっ」
青い目をキラキラと輝かせながら興奮気味に顔を突き出してくる彼女。どうやら切羽詰まっていたらしいが、その端正な顔をカウンター越しにいきなり近づけられて僕の心臓は跳ねあがってしまった。なにせ十数センチ先に彼女の薄ピンク色の唇が、そして少し視線を下げると前かがみになった彼女のセーラー服の隙間からくっきりとした谷間が見えてしまっているのだ。そんな無防備な姿を見せられて僕の心拍数がどんどん上がっていくのが分かった。
だが、僕も大人だ。もっと見てみたいという気持ちを抑え、理性でもって彼女に答える。
「は、はい。分かりました。ではお手数ですが明日の朝にまたこちらにいらしてください」
「あ、分かりました!本当にありがとうございます!ではあまりお邪魔にならないうちに失礼しますね。どうかよろしくお願いします」
礼儀正しくお辞儀すると彼女は僕に背を向けて出口へと向かっていく。
あ、そうだ……聞いておかなければいけない。
「あ、あのっ!お名前は……!」
出口の扉を開けたところで僕の声に振り向くと、彼女は優しい笑顔で答えた。
「駆逐艦、浜風です。浜辺に吹く風で覚えてくださいね」
その笑顔が眩しいほどに輝いて見えたのはたぶん、外から溢れる逆光だけのせいではないだろう。
それから僕等は工廠内外で何度も会話を重ね、親睦を深めていった。そして真面目で気配りできるが少し抜けた彼女に次第に惹かれていく。彼女も心を許すようになり、いつしか僕のことを「カイさん」の愛称で呼ぶようになっていた。彼女曰く「開発のお兄さん」の略称らしい。本名はすでに伝えてあるのだが本人はこの呼び名がしっくりくるらしい。他ならぬ彼女が付けてくれた名前だ。文句などあるわけがない。
その後も熱心な彼女は艤装のことで気になることがあればすぐに僕の所に相談に来てくれた。その時間が僕にとって何よりも楽しいものになっていたのは言うまでもない。
「カイさん、今日は主機のことでご相談が――」
「カイさん、以前新配備された装備のことについて――」
「カイさん――」
「カイさん――――」
気が付けば僕は彼女のことを心の底から愛するようになっていた。
ふとした瞬間に彼女のことを考えてしまう。
彼女が何をしているのか気になってしまう。
次に彼女が来る日が待ち遠しくて仕方ない。
もういっそのこと、僕の方から出向いてしまおうか。
そうやって彼女への想いを募らせていると工廠の入り口が開く音がした。そちらの方に視線を向けると待ちに待った彼女の姿があった。ああ、また至福の時間が訪れる。僕は期待に胸を躍らせながらカウンターの前まで来た彼女に笑顔を向けた。
この気持ち、彼女には伝わっているのだろうか。
「浜風さん、今日は何の用かな?」
僕を見つめる彼女は幸せそうに笑顔を浮かべている。何かいいことがあったのだろうか。少なくとも艤装について話ではないことは分かった。
「カイさんにぜひお伝えしたいことがあって来たんです」
伝えたい事?まさか愛の告白とか?そんなわけはないと分かっていてもどうしても期待してしまう自分がいる。いずれにせよ彼女の幸せは僕の幸せだ。
僕はハナからそんな関係は求めていないのだ。
そのはずなんだ。
「なんだい?君の表情を見るにとってもいいことがあったんだね」
「やっぱり分かりますか……?はい、そうなんです。実は――」
少し顔を赤らめると彼女は僕が聞いたことのないような柔らかい声色で言った。
「私、ケッコンすることになったんです」
遅かれ早かれこうなることは分かっていたはずだ。
彼女は艦娘だ。練度が上がれば更なる能力向上を図ることのできるケッコンカッコカリを行うのも当然だと言えた。
これは人間社会で行われる結婚とは違う。あくまでも形式的なものに過ぎないため実際の結婚の儀より気軽に行うことができる。大本営が推奨しているくらいだ。
だが、この儀式は深い絆で結ばれた提督と艦娘だけが行うことが通例とされている。
それはつまり――彼女が……浜風が提督を心から愛していることを意味する。
彼女は大切な“友人”の僕にそれを伝えに来たそうだ。
そう、彼女の心のなかに僕が入り込む隙などなかったのだ。
そんな関係は求めていないと言っておきながら、いざそうなる可能性が完全に消失したという事実を突きつけられると、僕の心は谷底に突き落とされたように深い闇へと沈んでいった。
そして僕はこの時、初めて自分の中の嫉妬という感情を明確に認識することができた。
今更自分の想いを伝えたところで彼女は振り向いてくれはしない。彼女はその程度で揺らぐ女性ではないことはこれまでの交流ではっきり分かっていた。
ならば――
それならば――
「指輪、僕が作るよ」
「え!カイさんがですか?」
「うん、君という大切な友人のために僕がケッコンカッコカリ用の指輪を作る。ふたりのためにとっておきのものを用意しよう」
僕は開発部長を務めるくらいの人間だ。製造法は心得ている。
「そこまでしてくれるなんて……本当にありがとうございます!カイさんに伝えに来てよかったですっ」
「君と僕の仲じゃないか。これくらいはさせてくれ」
その僕の言葉に浜風の目が潤む。
「本当にありがとう。提督もきっと喜びます」
彼女から別の男の名前が出た瞬間、僕の心のなかで大切な何かが砕け散った音がした。今はもうそれが何だったのかすら分からない。
だがそんなことももうどうでもいい。
「ああ、任せてくれ」
こうして僕はふたりのためのケッコン指輪を作ることになった。
彼女のことはもう諦めた?いや、真逆だ。彼女を奪う決心がついたのだ。
提督からだけじゃない。浜風自身からさえも僕は奪い取るのだ。彼女のすべてを――
「君が噂の『カイさん』だね。いつも浜風を良くしてくれていると聞いているよ。それに指輪の件まで……ありがとう」
机に座っていた男――すなわち提督は椅子から立ちあがると僕に向かって恭しく頭を下げた。
「どうかお顔を上げてください。これが僕の務めです。それに日頃仲良くさせていただいている浜風さんのためにできることはしたいと思い、今回の指輪の製造を買って出ました。いわば僕の意志です。ふたりのためになればそれでいいのです」
そう“ふたり”のためなら――
「そうか、君には本当に感謝せねばならないな。後日別の形で礼をさせてもらおう。だが今は申し訳ないが席をはずしてくれるかな?ここからは大事な儀式の時間だ」
そうだ。ここからだ。
「失礼を承知で申し上げます。どうかこのケッコンカッコカリの瞬間に立ち会わせていただきたく存じます」
僕の言葉に提督が顔を少し歪めた。
「君、この儀式が何を意味するのかは分かるだろう。いささか無粋じゃないか?」
「分かっております。ですが、僕にとっても大切な浜風さんのケッコンカッコカリなのです。どうか僕にもその一度だけの輝かしい瞬間を見届けさせてください」
「そうは言うが……」
「私はいいですよ」
難色を示していた提督に浜風が割って入った。
「カイさんにはいつも相談に乗ってもらって助かってたんです。それに今回の指輪まで作ってくれて……こちらから求めるだけ求めて用が済んだら追い出すのはいくらなんでもひどいとは思いませんか?提督、私からもお願いします。どうか彼をこの場にいさせてあげてください」
それを聞いていた僕は彼女のことを更に愛おしく思った。
そしてこんな素敵な女性をその隣に立っている男に取られるのがなおさら許せなくなった。
渡さない。
絶対に彼女を渡さない……!
例え彼女がこの男と添い遂げることを望んでいたとしても……!
「う、うむ……浜風がそういうなら仕方あるまい……君、彼女に免じて立ち合いを許可しよう。だが今回だけだぞ」
さすがの提督も愛する艦娘にここまで言われてしまっては断るわけにもいかないらしい。渋々僕が残ることを承諾した。
「ありがとうございます。無理を言ってすみません。浜風さんもありがとう」
これでいい。これで――
「いえ、私も嬉しかったです。カイさんが私のことをそこまで思っていてくれたなんて……カイさんみたいな優しい人と知り合えてよかったです」
彼女は僕の顔を真っ直ぐに見据えるととびっきりの笑顔を見せてくれた。
ズキッ
彼女の言葉に心が締め付けられた。
「ならこれ以上の邪魔が入らないうちにケッコンを済ませてしまおうか。心の準備はいいな?浜風」
「はい……」
それを合図にふたりの空気が一気に変わる。ふたりとも緊張の面持ちだが浜風の顔の方が少し顔が赤い。
提督がケースから指輪を取り出す。至ってシンプルな銀色のリングだが僕が一生懸命作り上げたものだ。光を反射してキラキラと輝いている。
浜風は左手の手袋を外すとそのまま提督の前に差し出した。
その左手を提督は優しく持つとゆっくりと彼女の薬指へと近づけていく。
今まさに指輪が彼女の指にはめられようとしている。
あと数センチで「それ」が完了する。
完了してしまう。
ここにきて僕のなかで迷いが生まれていた。決意が揺らぎ、捨てたはずの良心が僕を咎め始めた。
本当にこれでいいのか?
そう考え始めた時、目を潤ませた浜風の口が開いた。
「提督、愛しています。世界中の誰よりも」
(――――――――っ!!)
それは死刑宣告に等しかった。
頭を後ろから思いっきり殴られたかのような衝撃とともに、黒い感情が僕の心を支配する。
あんな顔を僕に見せてくれたことはない。
あんな言葉をかけられたことはない。
それらが僕に向くことは決してない。
彼女は僕を……愛してはくれない……!!
いつしか心のなかにあったはずの迷いは――
完全に消失していた。
僕は黙って見届ける。
指輪は彼女の第一、第二関節を通り過ぎ、少し進んだところですっぽり嵌った。
「提督、ありがとうございま……ひぅっ!?」
嬉しそうに指輪を眺めていた浜風が突然ひきつった声を上げ、ぴんと背中を伸ばした。
頭を抱えるとそのまましゃがみこんでしまう。
「浜風!?どうした!?」
心配そうにそばに寄る提督。僕もその隣に駆け寄り彼女の変化に注視する。だが浜風は身体を震わせながらより一層苦しそうに息を乱していく。
「うあっ!はぁっ!かっ……くっ……うっ、ううっ!」
うめき声が大きくなり、痙攣が激しくなる。そして――
「うあぁっ……ひぐっ!?あっ……うぁ……ああっ!!」
目を見開き、背中を弓なりに反ると「びくんっ!」と身体が大きく跳ねた。
そして糸が切れた人形のようにうなだれてしまう。
「浜風?おい浜風しっかりしろっ!」
彼女の肩を支えて呼びかける提督だがいくら声をかけても反応がない。
「おい、君!至急救護を呼んでくれ!彼女を医務室に……」
不測の事態に提督は僕に指示を出そうとしたが、彼がそれを最後まで言い切ることはなかった。なぜなら――
「その必要はありませんよ、提督」
浜風が肩にかけられた提督の手をどけるとゆっくりと立ち上がったからだ。
「浜風!大丈夫なのか?急に倒れたりして……」
「ふふふ……はい、むしろとってもいい気分です。だってぇ……」
彼女は僕の顔を見るとニヤリと笑い、勢いよく僕の背中に両手を回し身体を押し付けてきた。
「これでようやくご主人様と添い遂げられるんですからぁ♡ ああ……愛してますご主人様。あはっ♪」
甘い声で言った彼女の身体が押し付けられ、ぐにっぐにっと柔らかい胸の感触が僕に直に伝わる。
潤んだ目で見つめてくる彼女に思わず僕の口からも笑みがこぼれた。
「ど、どういうことだ?一体どうしたんだ浜風っ」
彼女の豹変ぶりに提督は理解が追い付かないようだ。そんな彼を浜風は嘲笑の目で見つめた。
「かわいそうな提督。私に何が起こったのか見当もつかないのね。あまりにもかわいそうだから教えてあげます。私のカラダは、この素敵な殿方によって奪われてしまったんです。その証拠にほら……提督がはめてくださった指輪、綺麗さっぱりなくなってるでしょう?あれはご主人様の魂の一部からできていて、艦娘の指に付けるとすぐさま肉体に溶け込んで心とカラダをぜ~んぶ乗っ取る代物なんです♪」
僕に絡みついたまま、嬉しそうに左手を見せつける浜風。薬指にはまっていたはずの指輪は影も形もなくなっていた。
「そんなばかな……そんなことができるはずが…..」
「はぁ~……まだ信じてないんですか~?提督も案外頭の回転が悪いんですね。幻滅しちゃいます。ならばこうするのはどうでしょう?」
左手の手袋をはめなおした浜風はセーラー服のブラウスの裾に手を添えると、ブラジャーごと一気にめくり上げてしまった。彼女の見事なまでに豊満な胸がぶるんと揺れてふたりの面前に晒される。むしゃぶりつきたくほどたわわに実った果実の頂きには、桜色のつぼみが存在を主張しており、僕はそれから目が離せなかった。見せつけている彼女も恥ずかしがるどころか見られていることに興奮している様子だった。
「提督の知ってる私は人前で自分のおっぱい出すようなはしたない女でしたか?人に見られて興奮するような淫乱でしたか?答えてください提督」
邪悪な笑みを浮かべて問いかける浜風に提督は苦々しそうに歯噛みをした。どうやら納得するほかないと理解したようだ。
「くっ……まさかこんなことが……君の目的は一体なんだ!?なぜこんなことをする!?」
その問いに「僕」が答える。
「簡単ですよ。僕は浜風さんが欲しかったんです。愛していたんです。でも彼女は僕ではなく、あなたを愛していた。僕など眼中になかった。僕はそれがどうしても許せなかったんです。だからあなたに取られるくらいなら全部奪うことにしたんです。彼女の身も心も全部。そうすれば彼女は僕を愛してくれる。僕だけを見てくれる。僕たちは幸せになれる!」
「ふふっ……」
僕の言葉に浜風が愉快そうにくすっと笑う。
「何が幸せだ!彼女の意志を捻じ曲げて無理やり自分のものにしているだけじゃないか!くっ……目を覚ませ浜風!そんな卑怯者に負けるんじゃない!君はもっと強い意志を持っているはずだ!」
自分に向かって必死に呼びかける提督に、浜風はただ妖艶な笑みを浮かべるだけだった。
「だめなんです提督。私の心はご主人様とひとつになったんです。これは洗脳とはわけが違うんです。もっと理不尽で、不可逆で、完全な魂の支配なんです。私の綺麗で真っ白な魂は、ご主人様のどす黒い魂とドロドロに混ざりあって、染め上げられて、ぐちゃぐちゃに変えられてしまったんです。もう元に戻ることはありません。今の私はぁ……心の底からご主人様だけを愛する花嫁になったんです♡ ですから提督、私のことを想うなら祝福してください。そしてあわよくば邪魔にならないところに消えてください。はっきり言って目障りです♪」
言い切った浜風はゾクゾクっと身体を震わせた。浜風のなかの僕自身が、彼女が絶対に言わないであろうセリフを言わせていることに興奮が尽きないのであろう。
「そ、そんな……浜風……私はどうすれば……」
突きつけられた現実に、提督が力なく崩れ落ちる。その哀れな姿を見た僕は絶大な優越感に浸っていた。
「ははは、そこまで言ってはさすがにかわいそうだろ浜風。仮にも君を愛し、君が“愛していた”提督だぞ?」
「あ~ん、そんなこといわないでくださいよご主人様。今の私にとってこの男との思い出は消しカスと同じくらいにまったく無価値でどうでもいいものなんです。今すぐ忘れてしまってもいいくらい。ご主人様が傍にいながら何故こんなくだらない男を愛していてのか今となっては分かりません。あなたの方がずっと素敵で魅力に溢れてるのに……♡ ホント、前の私は馬鹿ですね♪ この男とケッコンする前に目が覚めてよかったです」
自分の胸を好色の眼差しで見つめながら過去の自分を否定する浜風。すぐにでも自分の身体に触りたくて仕方ないようだ。
「まあそう言うな。君の魅力を理解し、君を幸せにしようとしていた男だ。最後に思い出くらいは作ってやれ」
「私を幸せにできる殿方なんてご主人様以外にいないのに……馬鹿な男ですね。でもご主人様がそう言うなら仕方ありません。最後に少しだけ……この男に時間を割いあげましょう」
そう言うと、彼女は机の上に腰を下ろし両手を胸の双丘に添えた。
「提督、最後に私のオナニーを見せてあげます。本当ならあなたに私の裸を見せる価値なんてありませんが、ご主人様からの情けです。優しいご主人様にたっぷり感謝してくださいね♪」
彼女はゆっくりと自分の胸を揉み始めた。
「んっ……んふっ……柔らかくて気持ちいい……んんっ……」
大きく円を描くように自分の巨乳を揉みしだく。彼女の指の一本一本が深く沈み込み、胸の形をいやらしく変えていく。
「ふ、ふふっ……提督見てください。私、興奮して乳首が立ってきちゃいました♪ 羨ましいですか?私とケッコンすれば触れると思ってましたか?ざぁんねん♪ このえっちなおおっぱいと乳首は……『私』とご主人様だけのものになりましたぁ♪ どれどれ……んんっ、んひゃんっ!あっ♡ これがえっちの時の私の声なんだ……いやらしくて……僕好みの、声だ……な……んっ!んはぁっ♪ああっ……♪ふあぁっ♪あははっ、喘がせるの楽しくなってきちゃいました♡」
ぴんと立っていた乳首を摘まんだ途端、彼女のなかに入った僕は甘い声を発し始め、その甘美な響きに快楽と興奮が高めていく。
提督はそれをただ眺めていることしかできない。だが――
「んあっ……!あんっ……!あははっ!なぁにいっちょまえに勃たせてるんですか。そんな物欲しそうな顔をしても入れさせてあげませんよ。んあっ♪…
…ここは……私の『旦那様』専用です♪」
セーラー服の襟を口に咥えると、彼女は右手自分の股間に添えた。その右手で既に濡れそぼった秘所を開いたり閉じたりした後、その中に二本指を挿し込んだ。
「んんんんん~っ♡♡」
あまりもの快楽に彼女は両足をプルプルと震わせながらくぐもった声を上げた。
気持ちよさそうに両目を閉じ、全身で快楽を享受する。
「んあ、あっ♪これが私の膣内…...んはっ!……浜風の性感……最っ高っ!♡」
咥えていた襟を離し、ゆっくりと両目を開け提督を見据える浜風だが、その目には彼に対する嘲笑を以外の感情は混じってなかった。全く誰のせいでこうなったんだか。
そうこう思っているうちに彼女は指の出し入れを始める。ぐちゅぐちゅといやらしい水音が室内を響き渡り、それを彼女の喘ぎ声が彩っていく。
「んひゃんっ!あ、あはっ♪ んあぁっ……!うあっ!……♪ はあっ!ああっ♪」
気持ちいい演技をするまでもなく勝手に声が漏れ、提督のみならず僕の興奮を高めていく。彼女とひとつになった僕も浜風としての快楽に酔いしれながら右手の動きを激しくする。
「あっ……あっ……!ああっ……!はぁっ!な、なか……イイ!……気持ちいい……!♡ んはぁん!はぁ……♪はっはっ♪ 彼女のこの快感が僕のもの……僕の……んっ!んうっ!?急に……♡ 何かっ♡ んっ、んんんんんん~っ!♡♡」
女性としての甘美な快楽と、彼女のすべてを手に入れたという男性の興奮が相まって『浜風』は絶頂してしまったようだ。秘所からとめどなく愛液が溢れ、机と床を汚していった。
「んはっ……はぁーっ……はぁーっ……イッちゃいました……♡ んふぅ……♪」
ぐったりとしながらも幸せそうな笑みを浮かべた彼女は僕の見やると、もう我慢できないと言わんばかりにゆっくりと股を開いてアソコを広げてみせた。
「ご主人様ぁ……いえ、『あなた』……私もう我慢できないんです……はやく、早くここに……あなた専用のオマンコにっ!あなたの立派なソレを入れてください……♪」
僕の股間は先ほどまでの光景で今までに見たことがないほどいきり立っており、彼女に懇願されなければ僕の方から襲っていたところだった。これで彼女の了承も得て、彼女に求められて、晴れて「和姦」になるわけだ。
「ああ……提督には良いものを見せてやったわけだし、あとはふたりで楽しもう。愛しているよ、『浜風』」
「んふっ♪ 『私』も愛していますよ、あなた。世界中の誰よりも……私の身も心も永遠にあなたのものです♪」
彼女の両腕が再び僕の背中に回され、僕もそれに応えるように抱きしめる。
時間にして数十秒だろう。だが体感では永遠に思えた数十秒間見つめ合ったあと、僕ら口づけを交わした。
こうして僕らは愛し合う夫婦になった。
響き渡る水音、そして何かを叩きつけるかのような音。僕らは提督室で何時間ものお互いを激しく求め合い、交わっていた。浜風は僕の上に跨り、顔を蕩けさせながら腰を上下させる。僕も負けじと下から突き上げる。
「あっ、あっ、ああっ!あんっ♪あなたっ……あなたっ!もっと……もっと突いてくださいっ!このカラダ、いいのっ……いいの!あっ、あっ、ああああんっ♪」
「あ、ああ……言われなくても……はぁ……はぁっ……浜風の膣内、気持ちよすぎて……っ」
この世のものとは思えない快楽に僕の腰の動き一層激しくなる。彼女に更なる快楽を与えるべく先ほどからいやらしく上下に揺れていた胸を鷲掴みにし、指で乳首を挟んで刺激する。
「あん♪んはあんっ♪おっぱいぃっ!ち、乳首っ!気持ちっい゛ぃっ♪ ああああんっ♪あっ、あっ!はげしっ!んひゃあああっ♡」
嬌声に嬌声が重なり、もはや快楽一色になっている僕らは迫りつつある頂点に身を震わせていた。
「あ゛、あ、あなたっ、奥、おぐッ、ぅ♡♡んお゛ッぉおお……♡♡♡あっ、あ゛っ、あ゛ーー♡い、ッぅぐ♡♡ふぅ゛うう♡♡お゛ッぉおお゛ぉ♡♡♡ん゛、ぅ゛う、うぅう……♡あ……♡♡ く、くる……ぁ……♡………ぁ…...♡」
「くっ……ううっ……!」
一瞬の空白。ふたりの目の前が真っ白になり、その直後に視界が激しく点滅する。
「あっはあ゛あ゛あああああっ!♡ イグゥ……♡ んはああっ、あ゛っ、ああ゛っ……!♡」
「うううっ……」
僕の種子が彼女の膣内に注がれる。彼女はそれを腰をびくんびくんと跳ねさせながら気持ちよさそうに受け入れた。
「んあぁぁ~っ……あっ……ぁ……あなた……大好き……」
彼女は気を失いかけながらも僕への愛を口にする。
これで彼女は僕のものだ。もう誰にも渡さない。誰にも……
あれから数日が経った。めでたく愛し合う仲となった僕と浜風だったが、さすがの提督はショックが大きかったのか精神病を患い、現在は入院中だ。どうやらあの日のことは覚えていないらしい。まあ無理もないだろう。愛する人を目の前で寝取られたんだからな。それに忘れてくれていた方がお互い幸せってもんだ。
浜風はあれから毎日工廠に来てくれている。魂が混ざって僕の思い通りの存在になったのだから当然だろう。夜になればふたりだけの時間を作って楽しんでいるよ。
え?何を楽しんでいるのかって?それは……
「あなた、今夜は何をしましょうか?あなたのためなら私、どんなえっちで恥ずかしいこともしてあげますよ♪」
想像にお任せするよ......というまでもないか。
了