新たな被害者です。
この話を書くにあたってほんの少しだけ2の文言が変えたので一応チェックしてみてもいいかもしれません。本当にほんの少しですけどね。
誤字脱字修正はのちほど......
終業のチャイムが鳴り、放課後の時間。
秋山詩織は荷物を学生鞄のなかに乱暴に詰め込むと、急ぎの用があるのか多くのクラスメイトたちが談笑を交わしたり部活に向かう準備をしたりしているなか、足早に教室から出て行こうとする。だが教室を出る扉に手をかけた瞬間、彼女は肩を不意に掴まれた。歩みを止めて振り返るとそこにはクラスメイトの相川裕樹が。詩織はそれが相川だと確認すると露骨に嫌そうな顔を浮かべた。
「何の用?私これから西森先生のところに行くんだけど。邪魔しないで」
詩織は相手を侮蔑する表情を浮かべたまま、これ以上ないほど冷たい声で言い放った。
相川はその以前の彼女からは想像できない態度に気圧されながらも、しっかりと彼女の目を見る。
「なあ、秋山。先週から変だぞ。何で俺と口をきいてくれないんだ。俺が何かしたなら謝ま……」
「あなたみたいなゴミ虫野郎に話すことはひとつもないわ。その汚い手をどけて。はぁ、時間を無駄にした」
話を最後まで聞かずに自分の肩にかけられた手をハエであるかのように叩き落すと、詩織は廊下へ出て行ってしまった。
「どうしちまったんだよ、秋山……」
一人残された相川は明らかに演技ではなかったその様子に戸惑い、わずかに痛みを発する右手を見つめる事しかできなかった。
数分後、詩織がいたのは生徒指導室の前だった。品行方正な彼女にとってはおよそ縁もゆかりもないような部屋だったが彼女は間違いなくここに呼び出されている。本来の彼女ならそれを心から恥じただろうが今の彼女から悔恨の念は感じられない。むしろ少し楽しそうなくらいだ。
「まさかこの『私』がここに入ることになるとはね……皮肉ったらありゃしない」
扉の上に付いている立て札を眺めながら自嘲的に笑うと、ノックもせずに入っていった。
「失礼します。西村先生、どうされたんですか?こんなところに呼び出して」
「心当たりくらいはあるんじゃないの?秋山さん。そこに座って」
部屋の奥の手前にある椅子とテーブルの奥に座っていた担任の西森果歩が毅然としつつもどこか当惑した表情で言った。詩織は西森に促されるがまま手前の椅子を引き、スカートを抑えながら彼女の正面に座る。そのついでに彼女はバレないように両手で自分のお尻を撫でた。女でしか味わえないスカートの生地とその奥の柔らかな感触に思わず笑みがこぼれる。何度触っても飽きが来ない。
「ふふっ……」
「何がおかしいのかしら」
「いえ、なんでも」
理由もなく笑う生徒に訝しがりつつも西森は本題へと移った。
「あくまでも知らない振りをするつもりのようだからはっきり言うわ。あなたのここ一週間の行動は目に余ります」
先生からの『初めての』説教が始まった。内容はここ最近の学校における態度や行動について。授業中の居眠りから始まり、遅刻や無断欠席、加えて生徒会には出席しない。しても議論にまともに参加しないなど既に羅列されているものは詩織を知る者ならまず想像しないことばかり。しかも問題はそれだけではないようで、西森は続けるが詩織の耳にその言葉は入っていない。彼女はニヤニヤと笑みを浮かべながら西森のことを見つめている。その視線にはねっとりしたものが混じっており、まるで品定めをしているかのようだった。
その間にも西森はペラペラと話し続ける。もしかして嫌なことがあったのか、疲れているのかとか検討はずれな憶測を彼女は披露する。西森も以前は優秀で真面目な生徒だったのにも関わらずある日突然、人が変わったかのように豹変した詩織のことを心配しているようだが文字通り「人が変わってしまった」ことには気づかない。
「もし悩みがあるなら……ってちゃんと聞いてるの?」
途中から意識を別のところへ向けていたことに気づかれたようだ。別にそれでもいい。今の彼女にとってこの部屋でふたりきりになれた時点で「勝ち」が確定しているからだ。
「ごめんなさい。先生の巨乳に見惚れて聞いてませんでした。私もそれくらい大きくなりたいなぁ。どうすればそんなに大きくなるんですか?やっぱり毎日カレシに揉まれているんですか?私も歳の割には大きい自信があるんですけど、先生の方がいろいろと使い道がありそうで羨ましいです」
西森の話に聞く耳を持たぬまま話題を逸らした詩織は胸を下から掬い上げながら交互に自分と西森のふくらみを見比べる。大きさこそは西森には劣るものの、形は整っており高校生としては十分なほどのサイズがある。触れば若者の特権である張り良さと適度な柔らかさが手のひらいっぱいに広がり快感とともに自らの興奮を際限なく高めてくれる。この一週間その感触の虜になりどれだけ自分を慰め倒したか本人にも分からないほどだ。
「先生と私、どっちが気持ちいいんだろう」
「いいかげんにしなさい!」
バン!とテーブルをたたくと同時に怒声が飛んだ。眉間にしわを寄せ端正な顔を歪めている西森の表情には明らかな怒りの感情が表れていた。しかしそこには同時に失望の念も混じっているのが分かった。彼女自身もショックなのだろう。容姿端麗かつ文武両道、しかしそれに驕ることなく真面目で思いやりもあった女子生徒がここまで人を馬鹿にした態度を取るようになってしまった。何が起こればここまで変わってしまうのか。
「秋山さんどうしちゃったの?何があなたをそこまで変えてしまったの?お願いだから教えて。あなたは平気でこんなことをしたり言ったりするような子ではなかったはずよ?力になるから抱え込まないで私に打ち明けてみて?本当はこんなことしたくないんでしょ?」
授業中はあれだけ厳格な西森果歩が自分のことを案じて怒り、悲しみ、救いの手を差し伸べようとしている。本気で生徒を大事に思っている。彼女の真っ直ぐな視線からそれがひしひしと伝わって来た。
でもだからこそ。
彼女が本気になっているからこそ。
それが――
おかしくて仕方なかった。
「ふふ、ふふふ……あははははっ!ばっかじゃねーの?なーにが『本当はこんなことしたくないんでしょ?』だ。分かった気になってるあんたが滑稽すぎて笑いが止まらねえ」
げらげらと腹を抱えながら足をパタパタ上下させる。そのあまりの豹変に西森は呆気に取られてしまう。
「あ、秋山さん……?」
「あん?秋山?それは俺に言ってるのか?それとも”コイツだったやつ”に言ってるのか?いずれにせよ、もう“中身”は別人だけどな。元の口調に合わせるなら……あなたが知っている私はもうどこにもいないんですよ?先生♪……って感じか。どうだ?うまくコイツになれてたか?……って聞くまでもないですよね?だって記憶とカラダは正真正銘秋山詩織なんですから♪」
ころころと表情や声色、仕草を変え不良の男のような粗暴な態度と西森の知る秋山詩織の態度を行ったり来たりする詩織。そのあまりの変わりようはまるで目の前に二重人格者がいるかのようだった。とても演技とは思えないほど完璧に別人になりきれている彼女に西森は目を白黒させる。
「あなたは……誰なの?」
目の前にいるのは間違いなく秋山詩織のはずだ。だが自分の知る彼女とはあまりにもかけ離れすぎている。まるで誰かに憑りつかれたかのようにすら思えた。
彼女はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながらトレードマークのポニーテールを軽く払ってみせた。艶やかな髪が美しい曲線を描きフローラルコンディショナーの香りがほのかに漂った。
「ねえ、先生。最近矢田君がやけにおとなしいと思いませんか?」
「話を逸らすのはやめなさい。今はあなたのことを聞いてるの」
「私に大いに関係あるから言ってるんですよ。彼は数週間前、不良仲間の先輩から薬をもらったんだそうです。それを使えば自分に歯向かった相川裕樹を肉体的にではなく精神的に追い詰める事ができると言われて。その薬は幽体離脱をして他人に乗り移ることができるだけでなく、その人の思考を自分の都合のいいように書き換えてしまうこともできるんですって」
「な、なにを言ってるの?そんなものがあるわけ……」
「それがあるんです。現に彼はたくさんの人に乗り移り、思考を変えて下準備をしてきました。もちろん女性に乗り移ったときはいろいろと楽しんだ上でですよ。彼曰く人によってスタイルや感度が違って病みつきになったそうです。私達女性のカラダって男性と比べものにならないほど気持ちいいですもんね。無理もありません」
彼女は淀みなく矢田の体験を語り続ける。そして時折自分の体験を思い出しているかの如く嬉しそうな笑みを浮かべた。
「下準備が進んできたところで彼は考えました。『相川の心を確実に折るには特に親密な人間を手駒にする必要がある』と。校内での地位が確立されている人間がいいとも言ってましたね……さて、ここで問題です。そんな彼の頭のなかで白羽の矢が立ったのは一体誰でしょうか?」
「ま、まさか…...」
顔から脂汗が噴き出す。ひとつの結論が浮かぶが、それはすなわち彼女の言う幽体離脱というトンデモ現象の存在を肯定することになる。しかし、もし本当にそれがあるなら……矢田和也が他人の身体に乗り移ることができるのなら……目の前にいる女子生徒は……。
「ようやく分かったか。西森チャンよ」
「っ……!!」
学校中の生徒から畏敬の念を払われている西森に対してそんな不遜な呼び方をするのは校内で一人だけ。その生徒の名は――
「あなた……秋山さんの身体を……!」
その回答に詩織はとびきりの笑みを浮かべると、嬉しそうに自分の胸と股間をまさぐり始めた。
「正解でーす♪私、秋山詩織は矢田君にこのスケベなカラダを乗っ取られて文字通り身も心も彼に捧げてしまいましたぁ♪ああんっ♪」
本来の彼女なら絶対に出さないであろう甘ったるい声を上げながら教師の目の前で身体中を撫でまわす。それだけで肉体は興奮で熱を持ち始め、心地のいい快感を脳に享受させる。そして今その脳を支配しているのは彼女自身ではなく邪悪な企みを抱いた矢田和也の精神なのだ。
完全に合点がいった。どうりで性格が激変したわけだ。彼女の身体は別人の心に主導権を奪われ好き勝手に弄ばれているのだ。
「矢田君!今すぐ彼女の身体から出て行きなさい!あなたは彼女の尊厳を踏みにじっているのよ!?人として恥ずかしくないの!?」
椅子から立ち上がり前のめりになって声を張り上げた。
しかし詩織は恍惚とした表情を浮かべたまま答える。
「それなら心配いりませ……んっ……!よ……ぁ……んっ…。『私』の心は矢田君が都合のいいように…..ぁ……書き換えてくれたので……ぁ……んっ……。本当の私も喜…んっ…!でカラダを差し出してぇ……いるというわけ……です…...んぁっ……!」
「な、なんてことを……」
驚愕する西森をよそに、説明している間にもどんどん昂っていく詩織の身体。吐息交じりだった声がだんだんと明確な喘ぎへと変わっていく。
「んふわっ……ぁ……知ってますか?私の右の胸の付け根に小さなほくろがあるんですよ……?ぁあっあぁ……『私』本人も知らなかったみたいで……んっ……!初めて見つけた時は興奮で乳首がビンビンになっちゃって……オナニーが、止まらなくなりました……ぁあっあぁんんっ!朝起きたら……ベッドがぐっしょりでっ♪くふぅっ♪」
制服の上から乳首を摘まんだ彼女の喘ぎ声はどんどん大きくなっていき、昂りきったところで小刻みに震えていた身体が一度ビクッと跳ねた。どうやら軽く絶頂したようだ。
「っあっ……♪ふぅ……やっぱり女の子ってずるいですよね。こんなに気持ちイイんですから。どうりで犯してやる時にあんなに声を出すわけです……はぁ……」
「なにが、目的なの」
黙ってみていることしかできなかった西森は足を震わせながら絞り出すように言った。今彼女が矢田に対してできることなど皆無に等しい。必死に無力感と恐怖を堪えているのが分かる。
「最初に言った通りですよ。あの相川裕樹に地獄を見てもらうんです。そのために私のカラダが奪われて洗脳までされたのです。おかげで私は矢田君に隷従することで頭がいっぱいです。つい昨日も彼の要望でセックスをしたばかりですよ。もう何回目か分かりませんが……ついこの間まで処女だったのに気持ちよくて何度もイッちゃって、その度に彼のことが大好きになって……今じゃ命令ひとつでどんな場所でも股を開く淫乱奴隷になってしまいました。実はヤリすぎて今も腰が痛いんです。以前は気高い精神を持っていた私ももうどんな理不尽な要求でも喜んで受け入れますよ。彼に死ねと言われたら笑いながらこの屋上から飛び降りるでしょうね、にひっ」
衝撃の告白に西森の顔が青ざめる。詩織の心と身体にはとうに取り返しのつかない傷が刻み込まれていたのだ。それなのに詩織はそれを嬉しそうに告白する。彼女のなかに潜む矢田がそうさせているのだ。いや、心も作り替えられた以上彼女自身もそれに満足させられてしまっているのだろう。
「そんな私を使って彼を追い詰めていくわけですけど、やはり生徒の力だけでは不十分なんですよねー。彼にはまだいくつか心の拠り所があるんですけど、あなたたち教師もそのひとつなんです。したがってそれを潰さないといけません。賢い西森先生ならこれがどういう意味か分かりますよね?」
にっこりと気持ち悪いくらいに優しい笑みを浮かべた詩織に対し、西森の身体が震えあがった。
まさか……まさか!
「私の身体をっ……!」
「彼に捧げていただきます♪でも安心してください。用が済んだころにはあなたも癒えることのない傷を抱えていても笑顔でいられるように『変えて』おきますので♪」
そう言って詩織は椅子から立ち上がり西村に近づく。逃れようにも恐怖のあまり腰が抜けてしまいまともに離れることができない。
「いや……嫌っ!来ないで!こっちに来ないでっ!!」
「さあ、そのオトナの魅力たっぷりカラダ……俺がもらい受ける……かん、しゃ……し……ろ……」
その言葉を最後に詩織は意識を失い床に倒れ込んでしまう。
それを見た西森は肺に溜まったありったけの空気を使って大声を上げようとした。しかし……
「だ、誰かあああっ!あっ……かはっ……!?」
声を張り上げようとしたところで息が詰まってしまう。何かが自分の中に侵入するというおぞましい感覚とともに次第に意識が遠のいていく。
「ぁっ……いやっ……だ、れか……ぅぁ……っ……」
胸を抱えてながら苦しんでいた彼女はそのままうつぶせに倒れると、詩織と同じように意識を失ってしまった。
辺りには静寂が訪れ、ふたりが目覚めるまでその沈黙が破られることはなかった。
矢田の目に最初に入ったものは詩織の顔とその天井だった。どうやら膝枕をされているらしい。彼女は矢田が目を覚ましたことを確認すると嬉しそうに笑みを浮かべた。
「目が覚めました?」
「ああ……」
ゆっくりとカラダを起こすと目の前には白いブラウスに包まれた豊満な双丘とタイトスカートから伸びるしなやかな脚。一瞬心臓が強く脈打つもすぐに状況を理解した彼はいやらしい笑みを浮かべた。
“西森果歩の顔“を使って。
「ふふふ……これが今の俺……いや私か……」
今度は両手を使って彼女の成熟した肉体を撫でまわす。大人なだけあって女性らしい肉付きにいい身体をしている一方、プロポーションも非常に良く男が好みそうな線を描いている。
「この胸……両手に収まりきらない……んっはぁ……やわらけぇ……♪」
ブラウスの上からいつも男性教師や男子生徒の注目を集めているであろう巨乳を揉みしだく。ここまでのものはなかなか味わえない。
「あはぁ.…..すっげぇ……めちゃくちゃ気持ちいい……それにこのエロい吐息……ああ、たまらねえ……!んふぅ……」
揉んでいくうちに股間が疼いていくのが分かった。スカートに手を入れ下の具合も確かめたいところだったが、あいにく生徒指導室の使用時間が間もなく終わろうとしていた。この後も別のクラスの担任と生徒がこの部屋を使う予定があるのだ。
「残念ですけどここで打ち止めですね、『西森先生』。続きは帰ってからという事で」
詩織は立ち上がると身だしなみを整え退出する準備をし始めた。今の彼女は間違いなく「自分の意思」で動いている。しかし、西森の身体を奪った矢田を責める様子はない。それどころか……
「おい、呼び名を間違えるな」
「あ、そうでした。ふたりきりの時は……『ご主人様』でしたね。どうか私の非礼をお許しください。ご主人様……」
自分の主に向かって手を揃えて恭しく頭を下げてしまった。これが今の彼女なのだ。
ただただ主人の命令に従い、主人のためだけに生きる奴隷。それが彼女に与えられた第二の人生だ。
「まあいいぜ。その名前で呼ばれると新しいカラダを手に入れた実感が湧くしな。さあ、この部屋を出たら俺たちは先生と生徒だ……分かっていますよね……?『秋山さん』♪」
「はい、分かっていますよ。ご主人様……いえ、『西森先生』♪」
いつも通りの雰囲気を取り戻したふたりは退出後、誰にも怪しまれることなくそれぞれの日常へと戻っていった。
すごく面白かったです。続き気になります!
詩織が手を回して、相川を周囲から孤立させて行く展開を予想してたんですが、
すっかり裏切られました笑